ドライブ

ドライブ一


 田植えが終わって、月遅れの節句は六月、今町中之島の凧合戦がある、刈谷田川に凧を絡めて引き合って、その年の作を占う。凧の絵を描く名物男が檀家にいた、あいつも老けたな。
田を植えて早に舞ひ行くつばくろや郷別け中を大凧揚がる

 雨が降っても花盛り、
行きかへり日の道にして山王や葵咲くらむ雨降り止まじ

 橋桁をかっこうがねぐらにして鳴き渡る、ずいぶん大型の鳥だ、葦原にはおおよしきりがうるさく。
田を植えて問へるもなしや与板橋芦辺をわたりかっこうの鳴く

 あんにんごは桜の仲間で、房になった白い花を咲かせる、走り梅雨のころに咲く、やませみは大好きな鳥だ、いくらでもいたのに今は滅多に見ない。
あんにんご雨に照り冴え夏をかも破間の瀬をやませみわたる

 中之島は大口れんこんといって、蓮の名産地、れんこんでこさえた蓮ワインがある、五泉に雹が降って、大きな葉っぱの蓮は全滅、はあて知らん顔したとかどうとか、
中之島花は蓮すのい寝やらへ流らふ雲がなんぞ恋ほしき

 わが山門はほっておけば葦原にねむの花、さわさわ鳴る萱の大株、
日に舞へや月に踊れや山門の阿吽の獅子ぞ鳴る萱にして

 蛍の里というのがあっちこっち出来て、降るような蛍だと電話したら、涙ぐむ四児の母。埼玉のふりふる如き蛍なれ涙すなるは子の母にして

 きしょーめ護寺会費ぐらい払ってから文句を云えと云って、
よしえやしおのれ軒辺は何せむに空ろ鳴くかや大面の蛙

 中越の山あいには鷲鷹の類を見る、のすりと、中飛というんだろうかあれ、なにしろ名前がわからない、ちょうげんぼうがいたり、けっこう大きなのや、あれはたしかにとんびじゃないなと。
舞ひ行くは鷹にてあらむ越し人のま杉梢を雪はしの降る

 町軽井は信濃川の対岸にあって、舟を漕いで遊びに行ったという、鉄道もあって、しばらく駅だけ残っていた。
み雪降る与板の橋を過ぎがてに見ずて来にけり夕町軽井

 寺泊赤泊航路が高速船になった、車乗っけて二時間、よく行ったけど今は四0分で人だけ、いわつばめが十一も巣食っていたが。
人云ふと佐渡は四十九里波枕うみねこ鳴くか出船はまだか
人云ふと佐渡は四十九里波枕うみねこ舞ふか雪はしのふる

 米山さんが見えて柏崎、まぶしいようななんだか切ないような冬の旅、
雪霧らひけだしも思ほへ柏崎うしを舞ひ飛ぶうみねこにしや

 冬荒れの海を船が行く、
帰り船しましく荒れて廻らへば松浦ケ崎に夕波淡し

 柏の大きな葉っぱが枯れて、お地蔵さまがあって、誰が手向けたか花、
もがり吹く冬枯れすらむ柏樹の人を呼べるか積丹岬

 俺がぽっかり浮かんでいると、魚どもが寄って来るのさ、そこをどかっと突く、どうだ達人の域ってもんだろうと、空手馬鹿。
テトラポット空手の羽賀の云はむかない寝ても突かむ石鯛に蛸

米山さんは雪化粧、ぴっからしゃんから雷鳴っての歌がある、お寺にも米山薬師の塔が立ち。
きさらぎの新た衣に袖通し人を恋ふるか米山薬師
きさらぎのぬ白衣に袖通ししのび恋ふるか黒姫吾子は

 鯖石川の河口で釣ったら、釣れそうでいてさっぱり釣れやがらん。
米山のぴっからしゃんから晴れ行けば誰を呼ぶらむ鯖石の川も

 雪はまだ降らずに日の雫して
たが恋ふと風の松原廻らひに羽衣ならむ日の雫して

 鵜川神社の大けやきは、中ほどを手当して、ゲゲゲの鬼太郎のねぐらみたいな、
鵜川なむ夕しの宮の大けやき降り降る雪に我れももうでぬ

 鵜川上流綾子舞いの故郷、今に伝承する室町時代の踊りは、一説には、佐渡を追われた出雲の阿国が、ここに行き倒れになって助け起こされて、伝わったという。
あしびきの雪ふり袖の如くして出雲の阿国はいつ問ひ越せね

 女たちに伝承され、冬の間の出稼ぎとて今の今まで伝わる。
木沢なむ山沢ならむしるべ立ち女沢とふ雪振り袖の

 廃屋があったりする村の出外れ、すんでに雪崩に会う、危なかった、ほんの一塊に車など持って行かれる。
春さらば雪崩やうたむ高柳しましく行くか鯖石川波
いついつか春海なもへ差し入れて柏崎なむ雪降り荒らぶ

 昔は冬は陸の孤島だった、暖冬になって行ってみた。
しかすがに雪崩やうたむ大島の降り降る雪に会ひにけるかな
高柳押し別け行けるしるべにぞ仰がむ月に春立ちぬべく

 大河津分水にでっかい手網を抱えて、漁師が鮭を取る、かまえる後ろを上る、ほうそこへ行ったあ、叫んだとて聞こえるはずもなく。
漁師らが鮭を捕るらむ河岸に半日我れはつったちほうけ

 このあたりも山茶花が多くなった、もともと越後は雪は降るが、そうは寒くない、情熱的なその花の色、たとい坊主だとてもさ。
寒烏追ふていずこへ山茶花やつらつら思ふに雪降り荒らぶ

 小千谷に鉢の石仏というものがあって、未緒ちゃんと二人山を分け越えて訪ねて行った。八十キロある未緒ちゃんそっくりの、等身大の石仏が十三、杉の森の中にただずまう。お不動さんから始まるいわゆる十三仏さま、みんな同じお顔。むかしはきっとお寺があったんだ、江戸時代かなあ、お参りして帰って来たら、翌日中越大地震。
越し人の真杉生ふなれ万づ世にふりふる雪を鉢の御仏
あらがねの大地は揺れぬ不動明王守りておわせ十三御仏

 守門の山麓五十嵐川のほとりにある八木神社。神杉と湧き出ずる清水と。
守門なる八木の社の大杉のほどろ降りしく雪ならましを
神からか神さびおはす大杉のほどろ降りしく雪ならましを
守門なる八木の社の隠り水の万ず代かけて清やにあり越せ

 五十嵐川は五十嵐小文治のゆかりに、皇室よりも古いと云われ、那須の与一の親戚、彼は蒙古の弓を引いたという、
幾つ字廻らへも行け五十嵐のしのふる雪のことさへくあれ
氏の社舞ひわたらへや白鳥のしのふる雪のことさへくあれ

 牛の尾という牛ケ首という地名がある、なんのいわれか。
守門を右に廻らへ牛ケ首しのふる雪はいついつ止まね

 守門の山に遮られて毎年大雪、いい山なんだけどもさ。
守門なる八木の社に降り隠もせはざうら舞はむ鳥はも命
守門なる八木の社に降り隠もせ六十を越へて我れはも命
 
 新潟へ来たら雪だと云って、初雪降って喜ぶ子。
思ひがて越しみちのくを吾妹子が待つには待たむ初音雪降る

 きのとの乙法寺は新潟県で一番古いお寺だという、もう少し行くと荒川、
乙宝のきのと田浦を越え行けばしぐれは雪に荒川わたる

 鼠ケ関からは山形県、義経伝説がある。
根津が関手枕巻けるあしたにはうしを花咲く出羽の国さと
いにしへゆ旅を苦しえ根津が関うみねこ鳴かじ潮騒荒れぬ
今をかも旅を苦しえ根津が関かもめ鳴くなる潮騒荒れぬ

 笹川の流れは白砂青松の景勝地であったが、百も花をつけた山百合に泣き砂。
九十九神百合あへ咲けば一言のけだし清やけし流れ笹川

 海辺は塩の花が舞い、鶴岡の辺りは猛吹雪してホワイトアウト、新潟県とはまあだいぶ違う。
武士のこはいくばくか鶴岡のもがり吹ければほとほと死にき
武士のこはいくばくかもがり吹く道の駅なむうどんを食らひ

 最上川をわたって吹雪の酒田へ、先ずは山居倉庫を、
貧しさはおしんの里と聞こえつつ最上川なむ雪にしの降る
降る雪も酒田におはせ早乙女が京の手振りつらつら椿

 本間屋敷見学
ことうつりせめてなりたや殿様の本間屋敷が代々の松がへ
人みなの何をうそぶき求め草本間屋敷が花のしおりも

 帰りに磯っぱたの茶屋で飯を食う、
万ず人いずはたよりは押し寄せて流転三界出羽の花咲く
 
 野積のイタリア料理店バナナウインドでみんなよったくって、得度式のお祝い。
吹き荒れてうみねこ鳴くか野積なむ人の宴もたけなはに行く
波のもはうみねこ鳴くも清やけやしや闇夜暮れなばもがり吹けるに

 暖冬であったのがとつぜん吹き荒れて豪雪。
月影も年は老ひぬれもがり吹くしのふる雪は肩の辺に降る
かき下ろし酒を食らへる子らが辺も月はさぎらひもがり吹けるに

 鷲が止まっていた、雪の降る山門の電柱に、こりゃもう瑞兆だと云って見上げ。
山門は伏して仰がむ鷲なれやいずくわたらへ雪の田原を
 
 弟子と三人で東京へ行くのに、新幹線代端折って車で行く、さあて猛吹雪。
たれとしてうしを寄せなむ柏崎泊てなむいずこ雪はしの降る

 雪の壁のなんとなく見えるハイウェイ、大丈夫か、なこと云ったってしょーがねえ、うわ。
いずくにか舟泊てすらむ堀之内小出が辺りもがり吹けるに

 トンネルだあ助かった、帰りはどうなる、
六日町水無川に閉ざしては妹が言づて聞けずかもあらむ

 トンネルを抜けると嘘のような天気。
あかねさす月夜野過ぎて思ほえや越し国中に雪は降れども

 山茶花が真っ赤に咲いて、いやあれは花ではない、赤い葉っぱの並木道、平和日本のいつまでいったい平和をって、とつぜん思ったるする。
鬼やんま襲へるなしやあきづ島山茶花椿徒らに咲く

 新宿歌舞伎町の人間ほど面白い見物はない
と云って、突っ立って眺めていた、ほんにそいつが面白い、男も女も、こんな町ははて秋葉原しかないか、他には。
楽しみに男女の別もなし歌舞伎町なむ阿呆ぞ我れは

 いや渋谷もけっこう面白い、むかしの面影はたった一つというっより、古色騒然喫茶店ライオン。
尋ね行く百軒棚の吹き抜けにベ-ト-ベンなむライオンは禿げ

 インターネット仲間の新年宴会。
忠犬のはち公ならむ二十一世紀インタ-ネットの化物揃え

ドライブ二

 
 春はあけぼの、降ってばかりいたのがとつぜん晴れる、雪の表面が凍って田んぼから山から渡って行ける、
思ひやる春は野百瀬の村の井の凍み渡りせむ子らが賑はひ

 これは網の目のような道、中越の山中は地滑り地帯、くぐり水ならもしやきっといい水が、
花嫁は山野田を行き仙納を行きよろしくあらん松代清水
夏来ても岩魚を焼けばきのこ粥しるべはなほも松代の宿

 男ひでりじゃなくっておおむかしから嫁なし、
鬼やんま行き帰りつつ大島の芦辺田浦に妻問へるなく

 地滑りに人身御供を建てたんだってさ、そうそう行き倒れは見つからぬ、ふんどしの汚いやつから取っ捕まえてって、ほんとか。
大島の鳴りくらめひて月かかり夏の野分けは明け行きぬべく

 滅多に車の通らぬ道を兎があっちへ行きこっちへ行き、提灯ばかりぶら下がって、昼間のお社。
笛太鼓ぴーひゃらどんとあかねさす月に浮かれて松代うさぎ
笛太鼓ぴーひゃらどんと祭りには我れも人の子風立ちぬべく

 黒姫山は三つあってこれは中越、山を眺めながらに行く道があって、標高は低いが、登ってもみないのに大好きになる、
雲井にか面隠みおはせうばたまの黒姫吾子がよそほひ秋の
 
 上山温泉に行くついで、移って行った上杉の米沢へ、
夏野行く阿賀の川波たゆたひに遠いにしへを思ほゆるかも

 会津磐悌山を巻いて行く初秋
会津にはとよはたすすき穂に出でて去に行く雲が何ぞ恋しき

 上杉鷹山の草木の塚
上杉のさ庭に入らむ初秋や草木の塚し我れはもうでぬ

 道を間違えてせっかくの都を通り過ぎ
上杉の都大路をかしこみて群れ山鳥かわたらひも行け

 亀岡の文殊菩薩
年ふりて文殊の智慧にとぶらはめ夏草茂み十六羅漢

 受験や縁結びの願掛けに、若い人がお参りする
我が世さはつとに終わんぬ亀岡の文殊菩薩に願掛けまをせ

 蔵王は山形県と福島県に股がる、ケーブルにのってお釜へ行く、花畑の向こう、
両つ国蔵王に入らむケ-ブルの花の畑を越えてぞ我が行け

 お釜は真っ青な水をたたえ。
蔵王なるお釜を見しは七十の初秋にして霧らひこもせる

 残暑の厳しい山寺に涼を求めて、なんでか知らん大嫌いななんまんだぶつになった、
若き我が残んの夏もいにしへの南無阿弥陀仏蝉の声を聞く

 でもとにかく超満員の行列
いにしへの人を恋ふらむ風にしや草木も岩も南無阿弥陀仏

 寒河江の慈恩寺は奈良時代から江戸末期までの、諸尊仏像を所蔵する、これがまあ並の代物ではなく、
寒河江なるいにしへさびて広大の慈恩の寺ぞ我ももうでぬ

 慈恩寺という村があって、明治になるまで各戸みなお寺であった、坊というのか。
みちのくの人に我れありや広大の慈恩の郷に時はうつろへ

 上山温泉はなにがし上人というお方の開いた温泉という、
行脚人のおこせしと云ひし上の山幾代をへにて我もとぶらへ

 新潟という大字がある、
新潟の名をもしるさむ上山初秋ならむ湯煙のよき

 荒川峡谷はせっかく景勝の地を、とつぜん降った豪雨に濁流、
玉衣ねりや乙女が荒川のさやさや波の秋立ちぬべく

 このあたりの地名は上越辺と同じだったりする、坂上田村麻呂が屯田兵に村ごとごっそり引き連れたという、
彼をかも家郷あらむ関の川山を廻らへ二つ小国も
 
 彼岸花はとつぜんひゅーいと花序が出て、
曼珠沙華ごんしゃん雨を吾妹子や残んの蝉のうれたくもあれ

 軒下にしか咲かぬ秋海棠、なんで向こうへ伸びて行かない、雑草が生えてさ、
雨うてば人を恋らむ軒にしや秋海棠の花を長らへ

 池をこさえ蓮を植えた、
鬼やんま蓮すの花を清やけしや一二三四秋の風吹く

 草と競争は彼岸を過ぎて急に楽になる、
七十の日んがな廻る草むしり秋になりけり終わんぬはいつ

 錦織さんという人を帯織駅に迎え、
つくつくほうし名残り鳴くなへ帯織や錦織りなせ我が待つ妹は

 いっしょに鵜川上流の無形重要文化財綾子舞いを見に行く。
早稲を刈りいざいざ行かむいにしへの綾子舞ひなむ奉納の日ぞ

 佐渡の見える出雲崎を通って、
綾子舞さーやさやさや振り袖の佐渡は四十九里波枕

 中高生が一生懸命に習い覚えた綾子舞い。
米山のぴっからしゃんから見裂けるは綾子舞ひなむ長振り袖の

 市長だの教育委員だの演説が長すぎてとうとう雨。
いついつか暑さは過ぎて降る雨の米山さんさ稲を刈り干せ
はざかけて早く刈らむは米山のぴっからしゃんから雲まかり出で
 
 羽黒山の真っ黒けなでっかい銅像が立って、
二別れ中之口なむ早稲を刈るあれは何とぞ羽黒山とぞ

 なにしろ見渡すかぎり田圃という、はざ木もなけりゃまっすぐ用水路、
長雨のいつまで行くか河波のしや蒲原の雲井にも聞け

 かやつり草は夏の終わりに、
魂祭り十日を待たむ塚の辺の雨降りながら草生ひながら

 なんせ稲刈り時に長雨、はざの辺で芽が吹くってむかしは云ったが、
早稲を刈りしくしく降れる長雨の道はいずこへ米山薬師

 ちええ一人で温泉に行くんだって、
吾妹子は夕を泊てなむ松之山染め出ずはいつ湯のけむり立つ

 人面村に大面村に、はあて鬼面ってー
今日らもや夏もやひせむ鬼面の花のみずきを人知れずこそ
月かげに音をのみ泣くか鬼面の紅葉しげむを人知れずこそ

 山道は萩のトンネル、すすきの川原、
行く秋の雲い流らへ吾妹子が松之山なむ萩代すすき
群らつ鳥いずこ鳴きあへ吾妹子が松之山なむ萩代すすき
わたり鳥月読みがてに恋しきや松之山なむ萩代すすき

 なんせあっちもこっちも烏、神さまのお使いというよりも、うっふけっこう好きだけど。
いやひこのなんに舞ふらむ谷内烏沖つ辺田井に雲い立つ見ゆ

 みずとりの名前がよくわからない、せいぜい真鴨ときんくろはじろと、白鳥と鷺と。
守門なる山をかそけし郷別けの刈谷河面にわたらふ鳥も
 
 秋山郷は平家の落人部落、名にしおうさすがの紅葉
いざ子供紅葉狩りせむ十日町早にも問へな長雨ぞ降る

 十日町がふんどし町で行けども行けども、じきに清津川をわたり、中津川を遡って、
清津川早にわたらへ吾妹子が隠もせる山を初霜ぞ置く

 笹やぶから出たのは老猿であった、雪が何メートル降るのかこのあたり、
いついつか冬枯れすらむ奥志賀の何を食らはむ老ひたる猿は

 秋山郷は老人組合でごった返し、
切り明けの湯の煙なむしかすがに年は老ひたり紅葉狩りせむ

 奥志賀林道は十月二十六日に閉鎖。
切り明けの紅葉を見しや行き通ひ明日は閉ざさむ奥志賀の道
人はいさ今日を限りに紅葉だえて秋山郷を奥志賀へ行く
秋山の峰いかそけし奥志賀のぶなの平らに雪降るはいつ

 大徳寺に尼さん候補がいて尋ねてきた、弟子と三人で秋山郷へ行く、きのこを取った。
あかねさす紫野なむ大徳寺一休を慕ひに尼になるとふ

 松之山はまた遠い、
倒れ木はぶなの巨木ぞ松之山遠々問へるに舞ひたけとなむ

 末寺の和尚が点滴も外してなを頑張る、
即今を永らへも行け老和尚輸送船とふ生き残りにて

初しぐれ荒れ降り止めば我が行くさシベリアよりは舞へる白鳥

 雪降るはいつ
あは雪を久しく妹が松之山田井のわたりがなんぞ悲しき
下通ふはざうら田辺を吹き荒れて守門がなへを雪はふりしく

 美容師になるという働き者の娘が来て、
菊祭り弥彦神社のおみくじは大吉と出て舞ひ踊る子や

 名月や北国しぐれの季節、
流らふは昼間の月か井の上の紅葉過ぎぬれ荒れ降るばかり
しぐれつつ雲間を泳ぐ三日月や七十我れをさ寝もい寝やれ

 三十三で死んだまろという仇名の、
雷や残ん紅葉の紅にみまかりし弟子がともがら尋ね

 お寺の紅葉は今が一番、
金山の佐渡が島より吹き荒れてこの河なべを入り塩紅葉