肘折の湯

肘折の湯


年内に村上まで行くのか
ハイウェイは10キロ延びて秋あかね稲刈りすらむ村上あたり
瀬波温泉中村屋
瀬波の海夕の雲井を荒れたちてかもめ舞へるか宿らふいずこ
形も悪し言も行かずは禅師どの仏なるかや本堂を建て

小国街道を行く、関川村はわしの出家したところだ、
能無しの我れもとぶらへ関の川師は托鉢に暮らしつくして

花の越後街道とあって、
見よやこれ花の越後のいにしへゆ月詠み人の松老ひ茂み

ようやくレストランを見つけ飯を食ったらあと山の中、
慈恩寺と我が思へらくは寒河江川橋を越えたる杉山深み

肘折れの強欲坊主が山を越え月を仰ひで温泉に浸る
竜人の棲まへる里ぞよしの川わたらふ雲の行方知らずも
年老ひてきのこ狩りせむ幾人ぞ雲いのまにも月の山なみ
朝市はいわなの川を廻らひに年を最後の舞茸を売り

月山の裏側を行く
廻り来て仰ぎ見なむは月の山残んの雪に秋を長け行く
朴の葉の浮きぬ沈みぬ最上川忘れ難なむしのひ逢ふ瀬を
長け行きばおぼろにけぶる月の山両手を挙げて修菩薩行

鶴岡から村上へ抜けるスーパー林道
三十年山を廻らひ変はらずや朝日村山なむ二つ国郷
熊鷹の住まへると聞こゆ山にしや人の通はぬ笹あひ深み

なんにこれ歌も俳句もバジリスク鯨食ふなに紅衛兵の
来し方をしくしく思ほゆ西川の物悲しくに月の明るさ