歌日記

歌日記


三日月だのにこんなに明るい
七十の夜半の目覚めをあかねさし半らふ月をいやとこのへに

秋の蝶は雅びに飛んで
三日の原舞ふらむてふをかそけくに山たず行くは人を思ひこそ
背うら山二つ浮かぶははぐれ雲彼岸を過ぎて春彼岸まで

蓮池をこさえて三年め、なかなかうまく咲かぬ、
五百生野狐身を脱し蓮す花思んみれば夕映えすらむ
人は去り人は来たれり四天王門蓮すの花を青鷺の行く

ねこじゃらしかやつり草も茂しきに勇名居士なる一周忌せむ
山川の清きを慕ふ行くさにはのびろ花咲く人の死ぬ多き

我れもまたふうらりそける青鷺ぞむさぼり食らふ池の鯉ども
曼珠沙華咲き行く見れば七十のつとに終んぬ我が草むしり

はぐれ雲女の肌を恋ほしきと山川かけて影らひ行くに
うき世さを手枕巻きて眺むれば月に星さへ白雲の行く

竜巻はそけて通ふか曼珠沙華なんにたはむれ秋のきてふも

杉山に植えたる杉の折れ曲がり愚かしき我が宿世の如く
愚かしき世にしやあらむ雪深きみ山に植えし杉の育たず

人みなの取りて嬉しき舞茸を取らむと思ひ山をかひ別け
お悟りと禅師師家はうそぶけど印下するなら孤俊イチロー

ほんとうに見れば見るほど美しい、
十五万寺に招びたや綾子舞空ろ鳴くかやつくつくほうし

蓮は枯れなほも残んのやんまらや能無し我れを底なしの天
入広瀬破間川のみなもとの山をけはしみ底なしの天
我が取るは雨んだれとふ初きのこしめじ松茸いつの浮世ぞ