由紀ちゃん四こま
由紀ちゃん四こま
ピアノ弾きの由紀ちゃんは、売れないたこ焼き屋のアルバイトして、とうてもおかしなおっちゃんとテレビ見て、残ったたこ焼き食べて、それからかめ三疋と小鳥と金魚と猫とすずむしとアパート暮らし。じゃりんこ知恵ちゃん、もっきり屋の少女の向こうを張って四こまマンガにする、これは起承転結その原稿。
ネタ提供由紀ちゃん
起承転結すけべ坊主
マンガだれか描いて下さい。別に四こまでなくって もいいんです。
1たこ焼き屋由紀ちゃん一人お店。2おっちゃんのっこり出てぶつくさ。3由紀ちゃん時計見る十時過ぎ。4由紀ちゃん青海苔して売れないたこ焼き食べる。
1由紀ちゃんおっちゃんと二人お店。2おっちゃんいっしょに死のうと云って由紀ちゃんの首しめる。3ようったら大学の先輩間抜け面出す。4襟巻きとかげの真似してるのって由紀ちゃん云う。
1先輩かつてラブを感じたっていうのに。2なんていう豚みたいおっさん、出会い系サイト専門してるってさ。3「なんし来たの。」4「ラーメン食いにゆこいいとこめっけた。」「うんゆこ。」由紀ちゃん青海苔してたこ焼き食べずにすむ。
1友達スナック開いた手伝いです、疲れたびー喉が渇いたいっぱい。2お、飲めるじゃねえかねえちゃん、ハイ、うーこれも下北旅行の軍資金。3ヨロシクあたしがママ開店祝いの乾杯でーす、みんなで一気飲み。4次の日下痢、あたしって肝臓悪いとちゃうか。
1あたしゲゲゲの鬼太郎って云われるの。2スポンサーのすけべ坊主いて目玉親父。3砂かけ婆さの恵美子ちゃん、ねずみ男の弟子に子泣きじじいの学生にって、かってに仇名くっつけて、4下北旅行しようってことになってる。
1恐れ山の夢を見た。2おじいさんはどこって呼ぶ、なつかしいあたしのおじいさん。3地獄沼もやっと霧、由紀ちゃん赤ん坊になってはいずり回っている。4どうしておじいさんのお骨抱えて立ってるのーふうと消えて夢が覚める。
1ここはおじいさんの生まれた家。2お骨を抱えて墓参り、なんでだろうもうお墓入ってるのに。3由紀ちゃんが消える、風景だけになる淋しい。4なんという美しさ、あれは卯の花鳴くほととぎす。
1由紀ちゃん一人お店、おっちゃん来た。2おっちゃん恋に破れて精神病院行ったって、青春辛かったんだ。3もう禿げちゃって五十歳、兄の土地借りてたこ焼き屋、ひとりもので。4かわいそうって思ったら、おっちゃんいっしょ精神病院ゆこって云ったうそ。
1ピンとチョンの二疋の亀が死んだ。2春になっても出て来ない、土掘ったら死んでいた、もう生き物は飼わない、なんていうあたしは罰当たり。3そうじゃない大往生だってすけべ坊主、ちゃんとお浄土へ行ってるんだよう。4由紀ちゃんまっしろいひげ生やして浦島太郎になった夢。
1今度は金魚が病気になった。2さかさになったきり餌食べないよう。うろこがつったって血がにじむ。3それ鮒の松かさ病だってだれか云った。4それさかさま病だってだれかいった。
1スナックのなんだかいやーな客、べっとり死体みたい手で触る。2たいして飲みもしないのにさ。3由紀ちゃんまつかさ病の金魚に変身、うろこたって血が出る。4ギャッといって客ふん伸びるショック死だあ。
1おっちゃんと二人テレビの相撲見る。2由紀ちゃんひいきの高見盛の真似してほっぺたひっぱたく。3おっちゃん相撲通いっぱし蘊蓄、朝青龍は云ってみりゃむかしの日本人だとか。4そう云ってなぜかしぼむ。
1由紀ちゃん投稿用紙おっちゃんに貰って川柳作り。2ねこのみい子餌切れてわめく。3おっちゃんあーうー浪花節みたい電話よこす。4昨夜飲んでおなか変うわあ川柳できないよ。ほっぺたやひいきの鼻水ふくの紙じゃなくってー
1久しぶりにクラシックのチケット貰ってコンサートに行って来た、帰りの電車の中。2イリーナ・メデューエワ可愛いピアニストのソロ、人気のショパンにドビッシーでした。3なんだか昔を思い出すったらそんなんうそ。4ほろ酔いサラリーマンみんな無言でメール打ってる、だれに打ってんだろ。
1カストラーレってむかし映画見た、ミルクのお風呂に薔薇の花が咲く。2中国人も残酷日本人もそうだろうか、人間てそもそも残酷。3田舎行ってお餅食べた、今年の正月はよくお餅食べたなあ。4今年もまた死ぬまで生きるつもりなのでよろしく。
1ねこ家出して帰って来ない、友達と出かける約束どたきゃん。2三軒隣までしか行かない猫なのにどうしたんだろ。3カストラーレってどこちょん切るんだってすけべ坊主聞く、人間ひまだとろくなことしない。4あーああたしもひま。
1文鳥の寿命ってどのくらいなんだろ、七年飼ってたらこのごろ様子が変だ。2籠から出ようともしないし、水浴びしない。3友達のやっているロカビリーのバンド見に行った、なんと客はあたし一人。4仕方がないまた飲んじゃった。
1文鳥が死んだ、もっと遊んでやればよかった。2ぜにあおいの植木鉢買って来て、その中へほうむった。3物云わぬ死、頭下がるばかり。4空耳に鳴き声を聞く。
1ちえタイ行って5つ星ホテル泊まったってさ、2あたしなんか600円宿、いもりに背中ひっかかれた。3お湯は出ないしタイ式トイレ、エアコンなしの扇風機がたがた。4死ぬか生きるかの旅がいい。
1ベトナム旅行いつんなったら行けるんだろ。2売れないイラストレイターの友達お金できない、3あたしもお金たまらない。4五つ星ホテルとタイエステのお金回してよこせ、贅沢。
1おじいさんの家空家なってて父親が時々掃除に行く。25年ぶりに来た。2裏に何代か続いた祖先のお墓がある。3時間てなんだろ、過去から未来へってはたしてそうだろうか。4ここに住んでいたころの、そういつも八つでいたい。
1時間なんてもな脇見運転の科学者とかがでっち上げたもんさって、すけべ坊主。2わしは生まれる前とか、死んだあととかせいぜい赤ん坊。3そうねえって由紀ちゃん、あたし五つんとき七夕さまにマンガ上手になりたいって書いた。マンガ家になりたかったの。4トホホでもって今は三流ピアノ弾きやってる。
1クリスマスは一人きり。2すけべ坊主の新潟は雪降ってるかなあ。3おじいさんの満中除もすんだ。4あたしの彫った聖観音もいっしょに納めて来た。
1早々にバイト止めて貧乏のどん底。2来年から扶養家族外されるって、年金税金重圧。3昨日の忘年会つい飲みすぎて、昼頃になってやっとおかゆさん。4はーい元気しておりまーす。
1親嫁に行けっていってうるさい。2親父石原慎太郎で逆らえない、何云われてもハイって、云いなりにお見合いして相手に悪いけどあとでお断わり。3十一回お見合いして十一回断る。4たこ焼き屋のおっちゃんに気に入られて、客もいないのにアルバイト。
1、今度は真宗のお坊さんとお見合い。2西本願寺前で待ち合わせ、天王寺動物園見てそれからー。2(友達に)SFの筒井康隆の親父さんて動物園の園長だったんですって、4へーえあの人人間の肉食べたんですってね。
1さんしょううおペロッと飲む人って尊敬しちゃうかも。2声楽の人で喉にいいってなめくじ飲む人いた。3その人優勝したんだけど、創価学会でもって、4これもみな信心の賜物って演説するからみんな辟易。
1たこ焼きなんて貧乏たらしいもん食わんていう人と、2一流ホテルでお見合い。一流企業でもって600円安宿泊まる人軽蔑だって。危険だし虫嫌いって、3おほっ高級ワインがぶがぶ飲んで食べようっと。縁がなくたってもとっこだあ。4ゲ割り勘だってさ、ま断る理由できていいか。
1すけべ坊主法事で飲まされ、お布施安いとこほど悪強いとかぼやいて宿酔い。2幸ちゃんからテツのキーホルダー送って来た。3うわあドライブ行こうそれくっつけて、突っ立ったとたんギックリ腰。4あつっつうたら弟子にんまり。
1おっちゃんなんでも拾って来る、拾ったぱっちまで着てる、2ブッシュは偉い人や云ったり、見境いなく殺したあれ、宅間さんて呼んで決して悪い人やないって云う。3ちょっとついてけないとこあるけど。4座ってテレビ見ているだけでバイト代。
1おっちゃんミニ鯉のぼり赤いの拾って来て、いいだろって店に飾る。2由紀ちゃんうっかりかわいいって云ったら。3おっちゃん拾得文化について大演説。4そうだって酔っ払いが云った、落選議員どの鼻の頭赤い鯉のぼり。
1清き一票だぞおれを拾えって別の酔っ払い云った。2役に立つものは拾うべきだって議員。3おれかあちゃんに捨てられてさあって酔っ払い泣き上戸やる、4役に立つよ由紀ちゃんと云って、おっちゃん拾って来た女物のパンツ出す。
1中国語して太極拳やってニイハオと手こうやってやるのしか覚えない。2ベトナム行きたいヒマラヤ行く。3モンゴルの大平原に行って馬に乗ってゲルに宿って満天の星。4うわパソコン打ってるここ氷点下手はじかむなあ。
1もうじき金魚死ぬ、もう生き物は飼わない、かわいそうだあたしはなんて罰当たり。2鳥獣草花空の雲も大往生ってすけべ坊主。そうだみんなお浄土へ行く。3わしに抱かれりゃおまえさんも極楽往生って云う。4坊主大嫌い人間きらいといって、由紀ちゃん小鳥買って来る、生き物かわいいるんるんて、ピイチクオウジョウボウズキライゴヨノオンタカラって小鳥が鳴いた。
1篭の中の鳥から見たらこっち檻の中って坊主。2そう云えばおっちゃんなんでも拾って来てへんてこ演説して、売れないたこ焼きやって檻の中。3あたしはお見合いしてみんなこっちから断ったんだっていって同じ檻の中。4雲は檻の外って思へばなおさらってすけべ坊主。ピーピーオジョウゴクラクオリノナカって小鳥がさえずる。
1由紀ちゃん前川柳の会入っていた、2桂米朝門下の歌之介さんという人の、去年なくなったけど、「二匹目のどぜう」という川柳結社。3タイガースの応援団長いたりして、4アフターの飲み会面白かった。
1その川柳の会で知り合った人と、友達の仲介でお見合いした。2あの人経済学者で本なんか書いてる、3どうして断ったのって目脂ついてた。4惜しいって思ったのあれ一つもう後の祭り。
1書写山へ行ってうどん食べて来た、川柳作ろうって由紀ちゃん。2早口言葉のとんがらし。3出来ないたらいやらしいじっさこっち見てる。「すけべじっさうどんずうたら鼻水目脂」だめえ汚い鶯が鳴く、ホーケキョケ口笛に真似してすっきり。
1「貧乏はひまがあってもなかっても」川柳作った。2今は金持ちほど忙しいんだ、でっぷり太ったやつは貧乏人て客が云った。3おっちゃんはどっちって小声で聞く。貧乏人にもなれない人って客云う、つまり偉いんだ。4なによそれ、おっちゃん聞こえたんかどうか鼻歌してる。
1「なんでやろ仕事で飲むとまずい酒」川柳作った。2「朝帰りぬき足さし足虫の声」虫の声ってなんだって、すけべ坊主云う、鈴虫が鳴いたんですって由紀ちゃん。3ビール飲みすぎておかしい、肝臓悪くしたかもって浮かぬ顔。4なんでやろ肝臓だめでもうまい酒、坊主まぜっかえす、朝帰り抜き足さし足虫の息。
1知的障害児のミュージカル。2障害児11人とあたし達バンド5人、二年かかってる。3一所懸命他と比較したり自分を観察したりしない、まっすぐで素直で楽しい。4ふー疲れたビール飲んでぐっすり。
1人を傷つける、そんなのいやだ、どうしたらいいって由紀ちゃん。2うっふ生きてる限り傷つける、その反対もあるってすけべ坊主。3わし人をどえらい目合わせる迷惑人間だった。4自分で自分許せなかった、それが縛りになってた。
1ある時免れる。死んでも許せないことは同じ。2たといなにあったろうがちらとも触れない摩尼宝珠。3いつか人を傷つけない者になっていた涙。4へえそうなんだって由紀ちゃん不思議にどっか納得。
1この世は儚いって由紀ちゃんとつぜん思う。2儚いを一歩出りゃ無心ですってすけべ坊主。3そうさあ喜怒哀楽200%。4たとい由紀ちゃんに振られたってストーカーしないですむかもって。ふんなんのこと。でも座禅しないとなあ。
1一遍上人が大好きだって由紀ちゃん、2うんあれは禅門以外の最高傑作だ、すけべ坊主云った。3最高傑作ってなによ。4しゃしんしこ。
1しゃしんしこって何。2玉虫の厨子の絵柄んなってる、飢えた虎に身を施すって書く、お釈迦さんが修行中に、虎に身を投げ与えた、それ故この世に早く出生した、衆生済度に当たる、これ仏の真骨頂。3どういうこと。4どういうことって人間の完成なんかじゃないのさ。
1虎に食われて何が残る。2ほーらこのとおり風景。3なんまんだぶつって飢えた虎に食われちまう。4投げ与えるのさ、座禅てそうなんだよってすけべ坊主。
1死んだらどうなるのって由紀ちゃん聞いた。2このとおり、たった今とぜーんぜん変わらない。3普通の人にはわからないんだけどな、生きてるの100%=死ぬってさ、100%大喜び知らないから、浄土だあの世だの不平不満の夢見るのさ。4そうかなあやっぱ座禅かな。
1司法試験今度は受かった、離婚訴訟とか任せとけと友達云った、みんなで発表見に行く。2だめだった。3ようし残念パーティしよみんなで飲もうって。4残念男をばんざーいって胴上げ、ちょっとやり過ぎだよう、あらあたし病院に検査行って来たとこだのに、また飲んじゃったって由紀ちゃん。
1由紀ちゃん友達の田舎行って初体験の田植え。2うはうはどーんなもんです天皇と同じ日本人原体験て蘊蓄、お茶もうまいビール最高って、3翌日腰痛でいざりばあさ。4植えた苗浮き上がる、町の娘さんだであっはちゃんと見てあっからさって云われた。
1おっちゃん拾って来た扇風機据える。2扇風機重たそうだからっておっちゃん囲い取って回転羽むきだし。3こわいけどって由紀ちゃん云ったら、4わし拾ったら生きていた、もう命よみがえって恐くないっておっちゃん云った。
1あたし虫先生知ってる、ピアノ弾いてる店時々来てつけで飲んでく。2網と虫籠もってる、何して生きているのか。3お店のトイレでまむし三枚に下ろしたりカウンターにかぶと虫並べたり、4いのしし毛布一枚で捕まえたり、防御服なしですずめ蜂の巣取るんだって、変な人です。
1中国雑技団見て来た面白かった。2すごいアクションがあってショーもあって。3八歳から十五歳のテントから出て来たら、普通に笑って可愛い子供。4そうですなんかすかっとしたんです。
1由紀ちゃん髪短くしよう断髪だって、いやなこと思い出した。2十七歳断髪して男の子と間違えられた。3ぶっとばしたるったら街角のおねえさん、ボクおいで寄ってかないって云った。4うわーいやだ、ちょっとあんとき筆下ろしして、なーんて変なこと頭どうかしてる。
1そうだ頭だ、すけべ坊主云った、剃っちまってきゃわいいったら永平寺人形。2いやよあたし悪いことなんかしてない。3今流行ってるんじゃないかな上も下もつるんぱ。いやったらしゲンコ。4オホッやっぱ男の子調査、ギーやな日もう伸ばしぱなしする。
1じゃがいもに玉葱あっちこっち貰う、当分肉ジャガとカレー。2カレーだっていろんなのある、インド人毎日カレーだしさって阿呆面の先輩。3おっちゃんじゃがいも玉葱拾ったのくれた、どっかにおう、それに猫フッドも拾ったからって。4先輩に手作りカレーご馳走する、うんまいどっか変わってて芸術的だってあれねこ舌。
1いろんな係り有縁無縁出来て、頭剃るたってそうはいかないって由紀ちゃん。2今日のご縁は明日ない、今の係り一瞬ない、なにさ縁を見るに縁なしってな、真正面向きゃないんだってすけべ坊主。3そんなんわかったようなわかんないような。4そうかい死にゃぱっかり終わり、死ぬのはもったいねえその、パチンいけず。
1今日は雨、明石の友達んとこ行って来る。2明石のたこ焼きは、タコ卵だけで包んでたれつけて食べる。3これ明石焼きって云うんだけど、地元の人卵焼きって云う。4そんじゃ普通の卵焼きなんて云うんだろ。
1由紀ちゃん断髪止めたらゲゲゲの鬼太郎みたいになった。2ようしわし目玉親父ってすけべ坊主云う。3とうてつ坊やねずみ男、26歳だけど半分禿げてる。4恵美子ちゃん砂かけ婆さの若いころ、ようしみんなで旅行こう下北旅行、すけべ坊主のみみっちい年金当てにしてってうふふっ。
1ねずみ男のとうてつ坊やデジカメ買った。2目玉親父の車に乗って女中高校生のちゃりんこ姿写す。3だってデジカメの研究って云う、そういうの出歯亀の研究っていうんだ。4男の子にはゼニ出さないシュミないってすけべ坊主。
1砂かけばあさの恵美子ちゃんは佐渡へ行きたい。2坊主は3回も行った、でも魚釣っててどこも見てない、行こうかって半分思う。3かーお来いって烏が鳴いたやっぱ恐れ山。4じゃ下北へって云ってたのに恵美子ちゃんどたきゃん。
1すけべ坊主由紀ちゃん車に乗っけて、あのなあ二人行けなくなった、でもってハネムーンだ死出の旅って云う、2そんなんだめ弟子か奥さん連れて来てって由紀ちゃん、あらったらもうどっか走ってる。3だって鬼太郎には目玉親父って坊主。4そんじゃお碗のお風呂入っててって由紀ちゃん。
1でもなんだか旅は楽しくって、夕飯食い外れてすんでに突っ込んだ寿司屋、意外とうまい。2じっさばっさ営業ののんびり握って、飲ん兵衛どもがよったくって巨人阪神戦見てる。3関西弁の由紀ちゃん大威張りして逆転阪神。4穴子一匹分のっている、鯖うまい、玉おいしかった安かった、でも二人お酒飲めないさあ出発。
1運転変わって由紀ちゃん、突っ走る真夜中。2うわ若い女子と心中だうれちいって目玉坊主。3ギャー変なとこ手出さないでぐら。4やっぱ死ぬの止めた、象潟や雨に西施が合歓の花ってなによそれお題目、いやさねむくなんねえようにって。
1二人交代で夜明けには青森の道の駅「りんご畑」に仮眠。2しょーがねえなあ弟子呼ぼうって坊主云った、お経終わって電車で来りゃ間に合うから。3だって由紀ちゃん弟子のプロポーズに根負けしてイエスっていった、ばーろーめえイエスてのは邪教だあって坊主。4うふふって由紀ちゃん、奥さんこわい弟子もこわいやっぱ善人です。
1青森街道はあかしあの花が満開。2この道はいつか来た道って二人歌う。3ゲゲゲの鬼太郎はぱっちり目が覚めたって、4おわんの風呂が欲しいよって目玉親父。
1野辺地に来たさいはての旅。2春には萩の原生椿を見た、ここは椿の北限。3八百比丘尼が萩からここまで植えて来た、人魚の肉を知らずに食べて。4いや彼女は能登の人だっけか。
1大島で、昨夜寿司屋のお稲荷さんと糊巻の弁当食べる。2はまなすの花盛り、浜百合が咲き、名も知らぬいろんな花が咲く。3水が澄む、海にはおもしろいひとでがいる。4心地よい朝。
1椿があった、冬の嵐に折れ曲がって幾歳、2いや800年。3突然ちーんと鳴ってカーナビがx情報を受信しましたって云った。4それからおかしくなる。付いたり付かなかったり。
1だれの祟りだ、ねずみ男のとうてつ坊やか、うーんあいつの禿げ光線。2由紀ちゃん運転穴ぼこへどんと入れたらとたんに付く。3じゃ弟子の怨念だあ、ちえわしどっこもHしなかったのに。4違います奥さんの一睨み、うーんかもなってまたじきカーナビ役立たず。
1六箇所村行こう温泉もあるっていうぞ、さいはてをゼニにする原発お化け、2人の踏み込めぬ原野たってブルトーザー一発な。3まっすぐな道とけっこうな住宅地と。4霧に覆われた沼があった唯一風景、アイスクリーム売りが来た、でもトイレ汚い。
1 すごい匂いがする、恐れ山へ来た。2由紀ちゃん試行錯誤の末駐車、だって免許取って半年。3若い兄ちゃんBMWの1200ccバイクに乗る。4兄ちゃん得意になって恐れ山のあれが最高峰ってさ、バイク背景に二人写真撮って貰う。
1入山料500円。2剥き出し大地に硫黄の川。3さいの河原の石を積んで、お地蔵さまや観音さまや。4水子供養搭になんとか池に、さいせん箱もいっぱい。
1風車が回っている、さらし風車に由紀ちゃん写真。2烏が止まって逃げない、烏といっしょに写真。3すけべ坊主鼻歌歌って歩く。4空気わりいから長居は無用だってさ。
1薬研という道標へ行く。でっかい温泉境だそこ泊まろうって目玉親父云う。2どうも道は心細い。3巡り回って奥薬研というとこへ出た。4はて混浴温泉て聞いたがなあ。
1いやですって由紀ちゃん。2じゃあって行くうち奥薬研消える。3じき開けるからって未舗装の道。4林道山奥祟りだあって戻るに戻れず。
1北限の猿がいた、小さいからまだ子供と思ったけれど、そうではなく毛並みは白っぽい、三疋。2へえ満更祟りでもないかってカーナビこそともせん。3川内川の上流へ出た。4夢のような清流がダムを作って汚れ、くう日本人に祟ってやるってすけべ坊主。
1昼は過ぎた、食い物屋あったって入って行ったら老人施設。2由紀ちゃん大笑い坊主憮然。3やっとケイタイが通じた、弟子と連絡、大湊駅に六時には着くという。4大湊って名のしょーむねえ檀家いる鬼門だって坊主、ちえ建て前で来いったのに弟子二つ返事でやってきやがる腹はへるしって、うふうそうですわねえって由紀ちゃん。
1めっけたあ道ぐるっとよぎってスナック入る。2ランチタイム過ぎたからオムレツなら出来るって、しゃあないそれ。3ところがコーヒーめったらうまい、はい注文受けてから豆挽くんですって云った。大湊駅前にJRのホテルあるっていう、たいていだいじょうぶでしょう、駄目だったら下北にもあるし旅館もありますって。4由紀ちゃん運転するって、その方向転換ウヒー命あっての、だって心中でしょハイイイ。
1JRホテル満員下北駅のこれもでっかいホテル泊まる。ちえ弟子待ちなけりゃどっか混浴温泉。2、613目玉親父615由紀ちゃん、つまり中に弟子ってそれうーん頭来るってばたんきゅー。3とんと叩かれてドア開けると弟子と由紀ちゃん立ってる。メシですって。4ちえ子泣きじじいめわしは刺身のツマか。
1ジョッキばかうまガブガブ。2貝味噌というの、これは贅沢味噌で海老やら帆立入って卵とじ、でもビール飲み過ぎて腹いっぱい、うーむ残念。3翌朝615叩き614三つ四つ叩く、だめそこ他所の人泊まってるって由紀ちゃん、続き部屋なかったのって。4バイキング朝食は、弟子め野菜サラダ山盛り、子泣き爺じゃなくって馬かおまえは。
1仏ケ浦見て脇野町~蟹田のフェリー乗ろうといって行く。2三年前に弟子またもう一人と来た下北温泉潰れている。3おっかさどこへ行ったか、おまえさま方恐れ山大祭さ来た坊さま方け、わかんねわかんねおらそんで大それたもんでねって、こっちもなんとか弁。4半分なんでも屋してご馳走食い切れんほど出たがなあってなつかしがる、美しい松林。
1これが下北って感じの海沿いの道、霧になったり晴れたり。2おい空家あるでおまえら二人ここへ住むかって、いいわねえって由紀ちゃん。3仏ケ浦は行って帰って来るだけでもどうかっていう、では仕方がないその辺り散歩。4家ごとに薪小屋作って山のように積む、冬はそりゃもうそのって、帆立て三つでピアノ教えてか。
1北限の猿山公園に行く、そうか毛並み白くって小型でってつくづく。2ふーん絶滅寸前の36疋餌付けしたら、たちまち100頭超えてってそりゃ人間自然を管理なんてできっこないさ、てめえがてめえを管理する無駄骨も知らねえでよって目玉親父気炎。4道ぱたに野性の群れが出た、畑もなんも食い荒らしてってば
あさ外国語で云った、そういえば畑みんな柵してあるてえへんだこりゃ。
1津軽半島へ行く1時間フェリー、港にはでっかい帆立てを容れた籠が三つ。2霧の海を行く、へさきを別ける白波が美しい。3いるかがいた、10頭ほど行く。4またいた今度は集団で餌さを取る。
1由紀ちゃんと坊主は船ん中でビールを飲む、弟子運転。2そうじゃねえ海岸行くんだったら、あ間違えましたでもそっち一時間よけいかかる、ちえ未必の故意め、いえそんなことねえです。3なに民謡酒場だって、はい由紀ちゃんが行きたいって。4ちえかってにしろ民謡よりさおねえちゃんと混浴温泉。
1竜飛岬へ、かんぞうとはまなすととりどりの花に咲く遊歩道を下りて礒っぱたへ。2日本三大潮流という、ごうごう白波をたてて流れる。うーんあそこで釣ったら釣れるぞって目玉親父。3そう云えば空手の羽賀が潜ったらちぬの群れだったって、あんなとこ潜るやつ人間じゃねえやフウ。4恋しい二人礒っぱた歩かして目玉親父途中引き返す、気利かしたって登りに不安を感じた。
1味噌垂れのおでんといか焼き食って昼飯、2霧で北海道は見えぬ。3展望台に烏一匹。4せんべえやったら食った烏のひょうきん由美ちゃん。
1十三湖へ行った。2日本のアトランティスだ一夜で海に沈んじまった、黄金と朱の町だ、潜水艦もコンピューターもあったんだ、その跡はどこだ、人間はみなしじみになったんだ。3推定安藤屋敷跡の看板を行ったり来たり。4道っぱたに覗くと魚がいっぱい、なんの魚だ、そういえば釣りしている、ふーん突っ立つ。
1民謡酒場ってみんなで民謡がなる歌声喫茶な。2ちがう津軽三味線の人来る、山上進という人名手です、高橋竹山のお墨付きだってNHKでやってた、たしかにすごいあたしもちょっと三味線弾く。3なんだと山上進長岡講演に乾杯する役やってんだわし。あいつはじめどうってことねえと思ったら、どえれえものになった、頭下がるとこあるで。4そうなのって由紀ちゃん。
1あれ由紀ちゃんそっちお嫁行きたいんかな。2後釜決まった、一滴もお酒飲まないまじめ男、こないだ太田家晩餐会に彼女来ていた、太田奥さんわしにちょっかい出すなって釘さした、ふーん一足違いだなはてなって、よけいことは云わずもさ。3なんで民謡酒場なんだ、十二湖でも夕日の温泉でもどこへでも行けるのに。4だって由紀ちゃんの希望です、ちえ。
1青森ワシントンホテル泊まった、民謡酒場予約しないとだめだってさ。2ただの酒場へ行った、村山っていう末寺の和尚と同じ名だぜ、鬼門かなまたって、3どえらいご馳走出るうまい、にしん食っていわし食ってほや食ってかんぱちのかま食って、刺身食ってうどしどけ食って、なに食ってかに食って、田酒飲んだ。4罰当たったそうの由紀ちゃん翌日下り気味。
1青森から郡山まで高速一気に行って砂かけ婆さの恵美子ちゃんに会おう、だってわし仲間外れ。2二人げらげら笑ってケイタイしてる、恵美子ちゃんOK。3磐悌熱海温泉で一泊、前に泊まったことある。まっ新しの旅館、すけべ坊主無責任に誉めて、軸物お宝鑑定団に出せって云った、どっか行きにくいけど、4三~四時間で行くと思ったら運転三交代五時間半。
1恵美子ちゃん砂かけ婆さと郡山二時半合流、2いっしょ昼飯食おうってこって、そこら捜したらうなぎ屋あった。3うわすげえ上等うなぎどっしり腹いっぱい、西瓜にところてんまで付く。4さあどこへ行こうあぶくま洞って、うーん首傾げたが恵美子ちゃん案内。
1小野町郡山線アップダウンぐるぐる回り、2砂かけ婆さぶっとばす、3毎日通ってるって弟子必死にあとへつけ。4目玉親父腹のうなぎ突っ張るゲエップ。
1へえこりゃすげえや強烈登りつけたら石灰岩の山壁、2雪舟の絵みたいにふわーっと浮かび上がる。3ふーんそうさな戦後に発見されたんだ、音に聞こえた阿武隈洞。4遊園地があった。うさぎとかめの車乗ろうって由紀ちゃん、ただじゃないってじゃ止す。
1梅子さんて砂かけ婆さの友達来るって云った、なかなか来ない。2観覧車乗ろうって由紀ちゃん、よし乗ろうったら一人分負けるって係のおっさん。3そうあんがとって恵美子ちゃんも乗って三人、がたがた横揺れ。4あたし高所恐怖症だったって、恵美子ちゃん外見ないでちじかまる。
1梅子さん来て鍾乳洞見学急峻ぐねぐねへえなかなか。2冒険コース濡れる一般コース行く。3ワインの貯蔵庫を兼ねる、せっかく天然リザーブをさワインろくなのないって由紀ちゃん、しょーねえな地元のヤッパンモルトって坊主。4梅子さんお土産にってワイン買ってくれた。
1梅子さん介護老人二人抱えて草刈りして馬三頭世話して子供の面倒みて田んぼして、わーたまんないよ息抜きしたいって、うははそれわかる梅子さんちの牧場見学。2恐怖の空手亭主と思ってすけべ坊主挨拶したら、物売りのおっちゃんだった。3かわいい真っ白い馬にちっと気紛れルナーな馬に。4馬糞踏みそうになってブルーベリ畑行く、たった二つきり実ってた、目玉親父と由紀ちゃん食べるうまい。
1旅館から電話来た、あら忘れていた今から行きますって砂かけ婆さ。2来た道ラッシュはすんでに過ぎた強烈戻る。そうか反対方向だったか。3うなぎ腹まだつっぱる、温泉入ったらすっきりって思ったら、待ちかまえていた仲居が、すんませんがご飯先にしてくれって。4しょーがねえなあ早く帰りてえんかビール飲んでぽかあ。
1恵美子ちゃんぴったりくっついていい塩梅だったのに。2部屋二つペア二組うふっいいわよって、かちっと音して今日はだめ男女別。3家族風呂入ろうってあれいない。4あの二人ほっといたら手も握れないって翌朝砂かけ婆さ、結婚したらそうも行かんだろうがさ、結婚してもそうだったりしてアハハッ。
1チェックアウトしてからけやきの原生林というの見に行く。2てんぐちょうとくじゃくちょうと、だがじき急激な登り。3たしかにあった300年のけやき十数本、でもって汗ぐっしょり。4しゃあない出戻りしてまた温泉に入る。
1会津ガラス館へ行く。2前に目をつけた雪のようなシャンデリア売れていた、因みに聞いたらこっちは425万円これ25万円、でぶ女にくたらしげに云った。3雪のようなシャンデリアお蔵にぶらさげてお蔵喫茶するんだった。4それで二階に蒲団敷いておく、恵美子ちゃんと由紀ちゃんの頭剃って尼寺喫茶、といって怒られたっけさ。
1砂かけ婆さ渋川問屋というとこ案内した、会津若松七番町の名物店、海産物問屋をそっくり料亭にする。2むかしなつかしみがきにしんに棒鱈に会津牛、由紀ちゃんと二人また冷や酒飲む。3観光通りぶらぶらしてそれから恵美子ちゃんと別れる。4帰途についた、あれ飲んだてのに由紀ちゃん運転してる。
1由紀ちゃん幼い時の恐い夢、親父が由紀ちゃん持ち上げてどぶへ叩き込む。2近所にある汚いどぶ、その下にまたこわい世界がある、3母親がいた、向こうを向いたきり助けてといっても、助けてくれない。4恐い夢って何度でも見る。
1由紀ちゃんほっぺたに痣があった、2すけべ坊主初めて気がついて、どうしたのって聞いた、生まれつきあったのと云う。3そうかその痣のせいだな、両親どうしてもピアノ習わせたかったんだ。4でもいやでいやでたまらなかった。
1あたしって美少年趣味あるのって由紀ちゃん。2へえまだ前髪のってえのいじめたいわけな。ううん一人そっぽ向かれて一人友達と三人で飲んでほっぺたさわった。3メケメケの大将高校生んときの写真どっか出てたすごい美人、でもさあーゆーの結局頭の良さってことかな。4うんそう浪花節シャンソンじゃだめ。
1もう一つの夢はねって由紀ちゃん、18のころ見たの、もう死ぬんだっていって真っ赤な血を吐くの。2ふーんそいでどうした。3死んだと思って度胸ついた、青春ていうよりもたもたしてたから。4そのあとどうだった、わかんない。
1由紀ちゃん20なって真剣にピアノする、ニューヨーク行ってジャズピアノしようと思ったけど止めた。2先生女の人だったけど、ニューヨーク行って向こうのシンガーと結婚した、黒人で薬やってアル中でドメステイックバイオレンス、日本へ逃げ帰って来ていた。3彼追って来てでもって薬とアル中治そうとして失敗。4あの先生今乞食みたい暮らししてる、さっそうとした美人だったけど。
1由紀ちゃんはイエスウーマン何したって面白い面白すぎるてなもんの。2でもって親父のお膳立て十一回のお見合いにはいといって出て、みーんな断る。3一長一短だよってすけべ坊主。4自分のしたいようにしながらさ、本音はどこへ行った。
1由紀ちゃんピアノ弾いて坊主夫妻歌う。2知らない歌でも伴奏する、すげえプロだ、学校んときそんな先生いなかった、今はいるって由紀ちゃん。3聴衆の拍手喝采受けなくたっていいではないか、歌は心だって、こうして歌わせて貰って感激、思い残すことはないってなあ坊主。4上には上がいるのだ、プロとなる連中のものすごいこと由紀ちゃん知ってる。
1弟子と結婚してーうふふあたし余生を送るのって、由紀ちゃん。2そいつをもう一歩、死んじまって生まれ変わるのさって、すけべ坊主。3一晩中坊主もんもん、音楽に食い殺されたのはなにもモーツアルトだけではない、由紀ちゃんの本音は音楽だ、あいつをときほぐして、どうやってときほぐしてー。4明くる日弟子と二人草むしってるの見て、悪夢のような思い忘れる。
1天人が蜘蛛の巣にかかった蝶を救おうとして、ひょっと手を突いた。2それが生まれ出る子の頬に痣となった。3お釈迦さまがお怒りになった、蝶も蜘蛛も同じ命なにをよけいなことを。取り返しのつかぬことをした、その子をよく見そなわせという。4たとい何あろうとすべてが是となるように。