ショートショート10
2011年01月01日 07:54 せっちゃん ショートショート・一果明珠
娑婆世界大宋国、福州玄沙山院宗一大師、法緯師備、俗性者謝なり。在家のそのかみ釣魚を愛し、舟を南台江にうかべて、もろもろのつり人にならひけり、不釣自上の金鱗を不待にもありけん。唐の感通のはじめ、たちまちに出塵をねがふ、舟をすてて山にいる、そのとし三十歳になりにけり。浮世のあやふきをさとり、仏道の高貴をしりぬ、つひに雪峰山にのぼりて、真覚大師に参じて昼夜に弁道す。あるとき、あまねく諸方を参徹せんため、嚢をたずさへて出嶺するちなみに、脚指を石に築著して、流血して痛楚するに、忽然として猛省していはく、是身不有、痛自何来。即ち雪峰にかへる。雪峰問ふ那箇か是れ備頭陀。玄沙いはく、終ひに敢えて人を誑かさず。このことばを雪峰ことに愛していはく、たれかこのことばをもたざらん、たれかこのことばを道得せん。雪峰さらにとふ、備頭陀なんぞ遍参せざる。師いはく、達磨不来東土、二祖不往西天。といふに、雪峰ことにほめき。ひごろはつりする人にあれば、もろもろの経書、ゆめにもかつていまだみざりけれども、こころざしのあさからぬをさきとすれば、かたへにこゆる志気あらはれけり。雪峰も衆のなかにすぐれたりとおもひて、門下の角立なりとほめき。衣は布をもちひ、ひとつをかへざりければ、ももつずりにつずれけり。はだへには紙衣をもちいけり、雪峰に参ずるほかは、自余の知識をとぶらはざりけり。まさに師の法を嗣するちからを弁取せりき。つひにみちをえてのち、人に示すにいはく、尽十方世界是れ一箇の明珠、時に僧問ふ、和尚言へること有り、尽十方世界、是れ一箇の明珠と、学人如何が会得せん。師日く、尽十方世界、是れ一か(果に頁)の明珠、汝そもさんか会す。僧日く、尽十方世界、一かの明珠、会を用ひてなににか作す、師日く、知りぬ汝は黒山鬼窟裏に向って活計を作すと。
一か明珠これ仏果なり、必ずやこれを得て下さい、理解とやこう三百代言の消え失せるところ、洞然明白にして歩歩清風起こる、過ぎにし日雪渓老漢歩歩清風起をこの目に見る。
・不釣自上の金燐を不待にもありけん=ほんとう本来のおのれという大魚金燐を釣るを未だ知らず。・是身不有、痛自何来=この身がないのに、痛みどこから来る。
2011年01月02日 07:41 せっちゃん ショートショート・ひぐらし
いやひこの蒲原田井も夏なれや朝な夕なにかなかなの鳴く
ひぐらしが鳴くのは風情がある、みーんみーんよりも油蝉のじーよりもいい感じって、それが朝のまだき四時には鳴く、淋しいを通り越してなーんか身を切るような辛さ。坊ちゃんのばーやの故郷蒲原の寺に来て、冬の猛烈雪と格闘もまーさ、くわーっと鳴くかなかなの、一生もうあかんていう気になったな。門前にゃお寺の土地ふんだくって住まうのがいて、水荒れて田んぼに砂利入るっちゃ怒鳴り込んできて、どぶさらいやらされたり、草刈ればてめえんもんだってんで土手ふんだくる、山門までやって来る、ひでーうわさ流されたりのわっはっは、小村ってのはすざまじいもんがある、よそ者は到底住めない仕組み、うっふどやつも首根っこ押さえちまったが、お寺そっぽ向いたせいか、十一軒ほどのが四軒どっかへ引っ越した。
ぜんぜん同情しねーな。
本家に分家に村にって他なんにもねーで、たぐりゃみんな芋つるで日本国もそんなふーで、政治家どもも似いたかよたかの世間知らず外交ゼロ。
てめえの世界しか知らんの取り扱い不可能。
雪消えにはしょーじょーばかまが咲いて、あっちやこっち彩する、いちりんそうが咲く、すみれさいしんが咲く、えんれいそうが咲く。
人はいさ我が世の春ってさぎふちょうが梅に桜を行く、お墓にはかたくりが咲いて、
いにしへゆ我が言の葉をかたかごのむらさきにほふ春ならましや
地球温暖化でぎふちょうが絶えたと思ったら、去年何頭かいた。
絶えたのは春蝉だった、透明な青い小型の蝉で、しゃくやくの咲くころ眠ったげにみーんみーんと鳴く。
長い間姿を見なかった、そーしたら玄関先の楓に二匹いた、美しい蝉だった。百年もののユッカが咲いて、春蝉がいなくなって、でもってどーやらわしの引退かな。
真葛生ふる山の間にして春蝉の長鳴きつつに日はも過ぎぬれ
春蝉の長鳴きつつに山を越え風の便りもうらみ葛の葉
2011年01月03日 06:42 せっちゃん ショートショート・雪割桜
いやひこの神さびおはす大杉のわたらふ雲の年立ち代る
暮から正月って毎年来てめでたいんだか忙しいんだか、てんやわんやの風邪引かぬようにってのが精一杯。発心寺では三元日終わったら寒行だった、素草鞋履いて雪の辺を歩く、足は馬鹿でほんの一町も行くとしびれちまってどーってことない、鉢の子三つ指で支える指が鉈でぶった切られるように痛い、ほーっと呼ばわって歩く、法という説と鉢をほうと訛って指すという説とある、赤坂小梅という芸者が寒中の海に入って声を鍛えたというが、ほうっと次第に澄んでいい声になる、今は天呑がやってるかな、淨慧も今年から発心寺雲水だった、わっはっはごくろうさま。
寒行托鉢よりお呼ばれがたいへんだ、毎日施主家がついて施餓鬼を上げて大ご馳走する、蛋白質の補給は一年のうちこれっきりって、きれいに平らげてお櫃を空っぽにする、馬の食うほどじゃなくって比丘の食うほどにって、いったん僧堂に帰ってからまた托鉢行脚の姿して行く、とくり一本は出てあったまって顔真っ赤になって、また雪の中へふえーい参ったな。
滝の門のどうめきあへる大杉のわたらふ雲の年立ち代る
小滝という村はたしかに滝がある、滝の上に大杉が生えて雪割り草が咲く、ゆきわりさくらとも、最近は大流行して一鉢三00万円のが出た、いや七00万だとかやっている、可憐な花で園芸種が変り咲く、お寺の山にはない、向かいの大面山に咲く、白から青から紫、赤に波のように変化する。取って来て植えたけど一年で絶えた。
もののふのいにしへ垣のいつしばの紫にほへ雪割桜
大面城址といって、お寺の開基さんの丸太伊豆守の砦跡がある、よくさがさないとわからない、堀あとが残っている、上杉影勝跨従丸太伊豆守。ある日新潟市長のどでかい車が着いて、市長秘書のでっぷりかーちゃんがだ人を伴う、名刺には札幌市長板垣なにがしとある、こりゃ大物だ、市長どの丸太伊豆の子孫であると宣まう、子孫は景勝公と移封されて行って、帰農したそうで一度尋ねて来た。
屋根を銅版に葺き替える、わっはっはへーいってんで三0万ばかり寄付してもらった、二反の白ってなもんの坊主丸儲け。
雪割りの花を愛ほしといつしばのしのひ行きしはたが妻として
2011年01月04日 08:12 せっちゃん ショートショート・ずくなし
ずくなしの花は和名たにうつぎという、卯の花の遠い親類らしい、新潟の県花はゆきつばきだが、ずくなしがいい大好きだほんにさ、五月初旬ピンクの花を開く。
ずくなしの花をくたちに降る雨の昨日も今日も冷えわびわたる
ずくなしっていうのは挿しても水を吸わないから、ずくのないずくなし、この花の咲くころは田植えで、田植え冷えといって急に冷え込む、苗の根付きがいいそーだが、むかしはみんな三時起きして、真っ暗がり燃し火して田を植える、しんまで冷える、
「二日半植えて、三日めにゃどーにも体動かねえ、畳かかえて半日寝ている。」
動けるようになってまた植えたと、施設に入っているじっさが云った、たいていもうあの世へ行っちまった。産後の肥立ちが悪くって、田んぼわきにふん伸びていたら、役立たずはいらんてんで里へ担ぎ込まれた、嫁も婿も代わりはいくらでもいたんだ、里から鸚鵡返しに送り返されて、ふんでも生きていたなあっていうばっさ九三まで生きたか。
あのばっさ面白かったな、奉公に行って覚えたといって英語で歌って聞かせる、生き伸びたらいい世の中になって旅もできる、温泉にも行かれる、だれかれ我が世の春ってことあったな。
おれだって中学行けば東大も入ったんだって、小学校の優等生のひにゃむくれじっさは、役場に入ったせがれと仲違いして、財産持って家追ん出た。お役人というのはへんてこなん多いし、うっふう村八分してたな。かーちゃんはだれとも付き合わんで余所行き着ちゃ出かけてさ。工場ができて騒音公害だってんで騒ぎする、らちあかんのは行政区がちがう、すったもんだお役人OBどの、しゃべりだすとうんざりするほど長い、効き目あったかどーか結局はうやむや。村うちだって豚飼えばハエだらけ、お寺の天井まっくろけとか、こやし山門わきに積んですげーにおいとか、なんたってしょーがねえから我慢がさ。
いついつか我れも越し人ずくなしの花咲くころを思ひがてする
戊辰の役に敗れて、河合継之助が会津に落ちて行く、八十里越えという道があって、今も雪消えずくなしの咲くころには、跡を辿る人がいる。お寺は河合継之助に加担したとかで、官軍に火をつけられて山門の他丸焼けになった。
鉄砲の弾が今も出て来る、親指ほどもある鉛玉。
ほととぎす月に追はれて卯の花の茂み会津に八十里越え
河合継之助は鉄砲傷が悪化して道中に死んだ。
2011年01月05日 08:09 せっちゃん ショートショート・分水
花魁の春たけなはに行きかよひ六十過ぎたるしが大河津
大河津分水はこの辺りきっての花の名所で、それが川風が神経質でなかなか思ったようには咲かない、売り物の花魁道中はこのごろは外れっぱなし、子供連れて行って待っていたら、てきやの屋台がずらっと並ぶ、買ってえあれも買ってえ、とんもろこし600円わたあめ800円りんご編め500円ぐはたけーや破産する、たまらん逃げろってんで帰って来た、今は地域でやっていてそんなことはない、花魁は公募だそーで180センチもあるのがでっかいぽっくり履いてってのはどーもぞっとしねーかな。花魁はあでやかで色っぽい、さすが文化の華ってだれか云っていたな。
花魁の賑はふ郷は過ぎぬれど散り敷く朝に会いにけるかな
大竹貫一という人が私財を投げ出して作ったという大河津分水、七部通り出来上がったころに国がゼニを出した、三年にいっぺんしか米が取れなかった中ノ島、そりゃものすごい洪水だったそーの、家ごと流れて行く人がいるどーしよーもできないなと今も語り継がれる、なにしろ日本一の大河信濃川だ、ちょうどこのへんで曲がって新潟まで行く。
しましくに吹きしのへれば大河津荒らき波もは満ち満つ花の
今改修工事が終わったところかな、良寛の五合庵の前を通って海へ押し出す、古墳がいっぱいあるって云ったら、分水を掘ったぼた山だ、木が生い茂って古墳のようだ、
「朝鮮労働者の死体捨てたから古墳かもな。」
という人もいる、大昔からそんなんかな、世の中ろくでもないことばっかりで、出家する所がない、出家できないのは情けない、社会の崩壊一にこれだな、らごら坊主どもは一番仏に遠い。
大河津花はしましく咲きけむが年はもいかに吹く風寒し
河風の吹きさらす上はまだで、土手下あたり咲いている、修行の雲水も花見ができりゃいーな、良寛さんはどーしていたんだろ。
万代の過ぎ行くものは河にしや両手の辺にも寄せあふ花ぞ
むしろ敷いて飲んで食って酔っ払って花魁道中、ついでに釣りもできねえかな、ここは大物がよー釣れたんだ、なぬ禁漁区だってふーんそうだったんか。
2011年01月06日 08:39 せっちゃん ショートショート・ぼけ
正月そうそう風邪を引いた、年始客の中に風邪引きがいたんだ、酒飲んでくだ巻いて、客二杯亭八杯やってるころは間違っても引かなかったんだ、今年はとくり一本売れねえ、飲んだら乗るなが徹底した。朝夕坐っていりゃめったなことじゃ風邪引かないんだが、かつては風邪引いても坐りゃ治ったし、今は坐ってる間だけは治っている、ふーんぼけが始まったんだきしょーめ。
くされ縁の朝倉がぼけたって年賀状よこした、毎朝坐っているとさ、二月の接心に呼んでやろう、どろちゃん肝いりの新年宴会に呼ぼうか、あいつじっさのくせにおねーちゃんに持てたっけ、今はただの頭陀袋かな。
そーいえば禅師が電話して来て、わしてっちゃんの晋山式受けたっけかなあという、前の予約が入っていてキャンセルだと、かーちゃんが出て、わしに代ると云ったら怒られるから止めとけだと、しょーがないやっちゃ、てっちゃん帰って来て強弁に談判したら、では他のキャンセルしてこっち来るとさ。
こりゃもう認知症だな、海兵で終戦それから東北大に入ったという秀才もぼけだーな。嘘とはったり口先だけの禅師やってるからさ、なにしろ行ってゼニわたして首繋いで来るって、脳味噌筋肉でできてるてっちゃんが云ったわっはっは。
禅師来なけりゃ200万がとこ浮く、そいつをねこばばしてってわしはそのー。でもさこれキャンセルになるとたいへん具合悪いのさ、公式決定もいーところでな。
さーて風邪治して200万持ってとーちょーさ豪遊うはは、あれこっちもだいぶぼけたぞ
風邪はきまって春先に引く、冬の体が変わるんだという、ここ何年来そーだった、なにしろ不愉快さな風邪引きは。
あれは六月だった、みんなで浅草行って人力車乗ろうったら風邪引いた、治そうってんでドライブしたら治ったらしく、
花筏越しの真人があしびきの山たず行けば浦島が子ぞ
花筏がまっしろに咲いて、真人はまっとと読むんだそーな、まっとむじなの穴というのがある、小出からまたぎを呼んでむじな退治した、150から仕留めたが、親分は穴を掘って佐渡へ逃げ延びたという。帰って来たら鼻がつまる、息が通らない、風邪じゃなくって花粉症だった。ひでーことになった、人力車乗ってそのあと同窓会、美人の明美ちゃんが雪女になってやってきた、浴衣とると~ふわーふがふが。
2011年01月07日 08:20 せっちゃん ショートショート・冬の旅
シューベルト冬の旅なむいやひこのもがり吹雪の舞ひ行く烏
シューベルトはしゅうしんがご執心で、歌うのも歌ったが、カンツォーネのマリアデルモナコ聞いて、こりゃとってもだめだってんで、海へ飛び込んでもぐり専門になった。新婚旅行に沖縄へ行って、嫁さんほったらかして、すもぐりの長い槍でこーんなの突いて来て、おまえは立派なうみんちゅだってうみんちゅに云われた。
妹らがり通へる道は牛之尾のもがり吹雪の呼びあへも行け
五十嵐川に牛之尾と牛が首という地名がある、五十嵐小文治は皇室より古い家系だそーで、那須与一の親類だ、那須与一の弓は45度の仰角で射る、世界最強のモンゴル弓であった、それを証明した好事家がいる、てめえを那須の子孫だと云っていたな。
こちらが表日本でもって、小文治は大陸との交易で栄えた。
牛之尾はどん外れ村で今は冬でも通れるのかな。
三つ柳風にぬぐはれ地蔵塚しのびがてせむ春の如くに
三つ柳に粋な消防士がいて、二度めのかーちゃんとの子が小学六年生になったが定年退職だ、うんがんばってる、村のお地蔵さまの額頼まれてへたくそに書いたのを、彫師はもっとへたくそでわっはっは恥の上塗り。
牛首がいにしへ雪を踏み分けて何を求めむ鹿熊川波
鹿熊川は五十嵐川の支流で、ものはためしフライしたらおいかわしか釣れん。わしの青春を思いがけず歌にした、冬の旅は車でぐるっと一周。青春というより凄春だった、シューベルトの壁なんてものじゃなくってさ、なんの獲得物質もねーし、死にたくねーから生き残ったかな。
白鳥の隠れこもして梓弓春をめぐらへ時過ぎにけり
五十嵐川で冬を越す白鳥がいた、わしらんとこは春先わたりの前に来る、二百三百田んぼに集って、ぎゃーすか鳴いてらーな、飛び立つのに田んぼのはしからはしまで駆ける、ちっと格好わりーかな。
小文治の古き京は牛之尾のなんにおのれが時雨わびつつ
五十嵐小文治の五十嵐神社はご立派、他には明暗寺跡というのがあって、維新と同時に火事で焼けた、幕府隠密の拠点であった、その過去帳を持って来た人がいて、渾身口に似て虚空にかかる、東西南北の風を厭とあった。臨在の弟子が開いた一宗だな。滴丁投了滴丁了、ちちんつんりゃんちんつんりゃんと中国読みするってさ、とりちゃん調べておくれ。
2011年01月08日 08:23 せっちゃん ショートショート・伎楽天
松之山渋海の川の百合あへの思ひ起こさば年はふりにき
渋海川というのは信濃川の支流になる、地滑り地帯を行くからたいてい濁っている、松代松の山と云うには松がない杉ばっかりだ、松がないのに松之山とはこれいかにと云ったら、あるよってんでわっはっは四本ばかりさがして来たおっさんがいた。
めでたくも松をなうして松代の長寿無窮を寒茸となむ
山百合も見たことないか、まあどっかにあるだろ。
渋海川に揺られっぱなしのふうっと首をもたげ、思い起こせば年寄ったってさ。
歌をこさえ、仏を継ぐことは日本人の復活、これ以上はないと思って孤軍奮闘はさ、一人粋がるきりでなんにもならねーな。
まいーか一人やるこたやって死ぬべえ。
役目はたしたどくろありって標立てるか。
宋代のたれぞ写せし六祖像どくろ面なるそがなつかしき
どくろが皮かむっているきりの、智慧とはまさにこれ、なつかしいとはまったく他にはなく。
いい川があった、河童橋みたいなむかし小川の、竹切って作っただけの竿でなんか釣っていた、さっぱり釣れねーなと思ったら鮒が釣れた、まぶなきんぶなげんごろーぶなぎんぶなへらぶなふわーっくしょい、釣ってもしょーがないなおっぱなして歩いて行くと家があった。だれも住んでないらしい、ではしばらく家にしよう。
蛇の形になって真っ赤にのみがいたってだれか云ってたな、無人の家に入るには気をつけろってさ、衣擦れの音がした、なんとまあすげー美人、金銀瓔珞なまめかしいったらすけすけルック、ふーっと笑ってさし招く、お床入りかと思ったら天に舞う。
みちのくは飛天になりて鳴り響み見れども飽かぬ月をめぐらへ
伎楽天かな天女さま、そーかわしも天に舞えるんだ、死んだら重さもないし痛くも痒くもないし、男の管巻くのより伎楽天、女のほうがいーや、妙音が聞こえ花が乱れ飛び、そーいえばわしモーツアルトを卒業したんだった、また生まれ変わるまでって、また生まれ変わるんかい。
死ねないのさ、修菩薩行は生まれ変わり死に変わりさ、如来になったら霊山でお休みじゃなくって説教だとさ、うっふっふ。
三界の花のあしたをいやひこのおのれ神さひ雨もよひする
2011年01月09日 08:13 せっちゃん ショートショート・鳥越
年寄るはなんに淋しえ鳥越の椎い葉末と言問ひ寄さめ
鳥越になんでも知っている坊主博士がいて、仏教だけはさっぱり知らんてやつ、どっか僧堂の師家になって行って、坐禅すると人間が駄目になるとかいって、てんぷらゴーグのおためごかし行い清ますやっていた、ほんとうに坊主駄目の代表みたいだったな、年寄って看取る人もなくて死んだ。越後坊主か聞いただけでどーしよーもねーよな、なんなんだろこれ。没義道くそ餓鬼食えなくなったら反省もするんかな。
鳥越に行ったらまんまるー太った元気な女の子が笑う、見てるだけで楽しくなる、山を越えると出雲崎かな、どんざん波の洗う海へ出る、山はけっこう深くって杉の林が続く。
夏来れば椎い葉末の風さへに袖吹き返し笑まふる子らは
蓮華寺という瀟洒な道があって、南北朝時代の砦跡へ行く、巨木の生い茂る林だ、めずらしい木が数あるんだけれど名札見るからに忘れちまう、巨木の間から佐渡が見え荘厳の夕陽が沈む、わしたかの類が舞い飛ぶ。中越地震で蓮華寺道はがっさり落ちて、こけちゃんとみょうえ上人を案内して、崖崩れわたって歩いて行った、西山連峰最高峰という、標高二百何十米かな、東山連峰に東山寺があるってわけ。
山を越ゆ鳥にはあらね乙女らが袖吹き返し荒磯辺に行く
正月風邪引いたらなんか急に老けちまった気分、くそーめ飲みよーが足りなかったか。どーせ年相応に老けるしかねーか、おねーちゃんに三行半食らうまえに、なにしよーかって宝くじは当たらねーし、四国のお遍路さんやって野垂れ死にするよりは、四万十川河口で赤目でも釣ろーか、あいつナイルパーチなんだってな、ちぬやすずきの仲間かな、ちぬ釣り名人であったな遠いむかし。
物部の香椎の宮の乙女らが早苗取る手に言問ひ忘れ
物部神社なんてのがどーしてここにあるんだと思ったら、気比神社だった、ご立派なお宮だ、この歌からぼけが始まったんか、四連の歌に三つも乙女が出るよーじゃぼけもいーとこだ、そーさなぼけ防止には一番に若い子ってことさな。奮闘努力の甲斐あってってやっぱ宝くじー
2011年01月10日 08:35 せっちゃん ショートショート・青いけし
時を超え帰り行くとふヒマラヤの花の谷間の青きけしはも
青い花は月光に白く見えるってむかしばなしに書いたけど、ほんとうはどーなんかな、すみれの青いの白く見えそーにねーな、青いけしって神秘的か、ヒマラヤの花の谷間にはちょうちょいるかな、でっかいアゲハがいたらすんばらしいな、北海道も名寄から向こうはちょうちょ見なかった、サハリンにはおかしなひょうもんがいるみたいだけど、もんしろちょうに見えるのはえぞしろちょうという、本州と同じなのはくじゃくちょうにきべりたてはにー
どこへ行ってみたいって、そりゃどこへ行ったって面白い、所かわれば品変わるで、一週間や十日は夢のように過ごすんだな、でもさ語学さっぱりだし、おねーちゃん口説くのに親指突き出じゃ、娼婦しかひっかからねーや。アメリカ人の交換教師云ってたけど、日本の娘みーんな娼婦かってさ、うっひ人間どもあんまり興味ねーし、世の中うざいばっかりかな。
此の発菩提心、多くは南閻浮の人身に発心すべきなり、今是くの如くの因縁あり、願生此娑婆国土し来たれり、見釈迦牟尼仏を喜ばざらんや。静かに憶ふべし、正法世に流布せざらん時は、身心を正法の為にほう(倣のイでなくてへん)捨せんことを願うとも値うべからず、正法に逢う今日の吾等を願うべし。
ダライラマに会おうとも思わねーな、ありゃえらいめ見てるな、今の世正法を守ることは、あるいは想像を絶して困難だ。ヒマラヤの青いけしみたいに一人花咲いているには、想像を絶してまさに花開けばいい、そーさなああるいは月光に白く。
だれに会おうとも思わないのは、会いながら会わぬということか、よっぽどのことがないかぎりな、右往左往付和雷同もまあさ面白い、どーにもこーにものぶんなぐって、効き目もなけりゃ目障りだ、逃げ出しゃいいって、どーもこーものやつ多いな、わっはっは逃げ出してたらいるとこなくなる、こっちもどーもこーもやるか。
但だ般若を尊重するが故に、日々三時に礼拝し、恭敬して、更に患悩の心を生ぜしむること莫れと。今の見仏聞法は仏祖面々の行持より来たれる慈恩なり、仏祖若し単伝せずば、奈何にしてか今日に至らん、一句の恩尚報謝すべし、一法の恩尚報謝すべし、況や正法眼蔵の大恩これを報謝せざらんや。
いよいよ困難てこったな、良寛はよくやったなあ、わしはぐーたらでなおさら難しくして、まーさなにしろ坐ってらーな、他にはなーんも知らん、小沢じゃねーけど新入り一兵卒だな。
2011年01月13日 08:52 せっちゃん ショートショート・にりんそう
鬼無里村はでっかい猿が電線を伝わってのっそのっそ、二、三十の群れだな。人が鬼みてーだから鬼がいねーんだってさ、悪口云ってる場合じゃねーやそうとうに過疎が進んでる。裾花川の上流にあって、ダムから上の方は有料になる、車一第四百円と思ったら人間一人四百円二人で八百円、さすが鬼の村だあきしょーめってみずばしょうの群生地だ、大森林に湿地があって、みずばしょうといわながいる、いわなは白い鰭でみずばしょうにふさわしいかな。シャトルバスが出ていて、駐車場にはにりんそうが群生する、一つ咲くのがいちりんそう二つ咲くのがにりんそう、なんてえのを俳句だと称して能天気もいたが、一華という一輪草とこの二輪草はそうは似ていない、にりんそうはでたらめで、三つ咲いたり五つ咲いたりわしは初めて見た、けっこう珍しいんだな。
バスを降りて30分ほどは歩く。いもり池があった、結晶のようにいもりの卵塊が40、いや100もあったか、なつかしい早春の風物詩。
忘れられずに秋も行ってみた。みずばしょうだけゼニを取るかと思ったら秋も同じに取る、番人の人件費だな。シャトルバスはなかった、一時間の余も坂道歩く。
裾花には化石が出てくじらか恐竜もいたんだっけか、廃校がそっくり博物館になっていた、化石は見つからず、岩棚に巨大なすずめばちの巣があった、襲われたらえらいこっちゃ。きのことりが四人ばかりいた、舞茸を取っていた、なるほど有料化の特典はきのこか、けっこう沢山出ていたな。
戸隠の真裏にあたって、なんとか山という二つ峰があって、この沢登りつめるとどこへ行くか、雨飾山へ行くか、蝶を追っかけていたころならどこへでも行ったな。あこがれの裾花渓谷だったな、タイムとラベルの一回的なんだな、二度と同じところへは行けないのさ。
岩船に朝日スーパー林道というのができて行ってみたら、むかしのように何十何百の蝶がと群がる、たまに時空もつながる、ぽけえと突っ立って、朝日スーパー林道の巨大いわなも語り草。
たいてい死に絶えた。
人類滅亡して500年もとの地球に帰るってさ、仏説はそんなこと話題にもならねーかな。
ビッグバンの三つ四つポケットにしてうっひ。
2011年01月15日 08:29 せっちゃん ショートショート・わるがき
銀玉鉄砲ってのはいつんごろからあったんけな、こけちゃんだんご虫にしてぼかん大穴、黒岩と宮部といたころビニール玉の白いので戦争ごっこやったな、黒岩が命中率抜群、五メートルはなれて虻を仕留める、歩のこま倒す、手が長いからってもとわるがきだな、そーいえば穴井もアイヌの鳥罠見てなつかしーって云ってたな、わしら使ったんと同じだって、九州も四国もわるがき天下まだやってんだ、てめえのものスケッチして女の子に配ったなんてーのは、相当どーしよーもねーな、学生んときの絵が一枚売れたって云ってたな黒岩、くろいわさんくろいわってさ。
宮部と撃ちあいして、わしがずっこけたら真上から至近弾撃ちやがった、かつかつよけて仕返しだ追っかけたら、逃げたつもりで障子の影に隠れる、障子ごと撃ったら眼鏡に命中、危なかったな、しゃーない二人で二万円か出し合った。あいつ月が三つ四つに見える乱視だ、てーして勉強もしねーのに目が悪い、でも鯉釣りは名人だったな、手賀沼は六月梅雨どきに釣れる、釣れたの買いに来る業者がいたってさ、こっちは六月はばったり、鼻先にえさ垂らしても知らん顔、てめーの生んだ子食ってるんだとさ。
釣りに行くか、はい、来たばっかに信濃川へ連れて行く、そんな針じゃだめだ、どーせ釣れねーんでしょってのが、いきなり来てハリスぷっつん。
しゅうしんは坊主のくせにって怒鳴る、でもって釣っていたら、さまやんと組んでハンドル取って、方向ちがうじゃねーか、いーんでーすってんでシュノーケル出す、しょーがねえきす釣っていたら、しゅーしゅー変な音がする、はーてなったらどばっと顔出して、釣れっかあって釣れるわけねーだろがばーたれ。
さまやんのやつ帰って来いったら、まだ学生だった、単位落っことしそーでだめですといってしゅうしんと小笠原へ行く、そりゃいーかげん楽しいことあったらしく万歳ってわけが、その年落第して一年余分にやる、八方えらい迷惑。
2011年01月16日 08:27 せっちゃん ショートショート・鳥鳥
夕されば雪は降れるにこの鳥やうれたく鳴きて蒲原に過ぐ
雪が降って年の暮れ、ふーらり電車に乗って新潟に行ったら、さんさんやっぱり雪が降っていて、なーんか知らん電気屋に入ってオーディオ買っていた、田舎持って来たら金やるといって、むかし不細工商人、客より店のほうが威張っていて、ぶすっつら雪の辺橇に乗せて持って来た。今のCDは音拾いすぎてうすっぺら、LPもちいっと拾いすぎのとこあったけど、カラヤンの魔笛買って、ブタペストの弦楽四重奏買って、おおむかしのピアノソナタ買って何しろ聞いていた。
蒲原も雪は降れるにこの鳥や恋ひたみ鳴きて大橋越ゆる
かーちゃんもいねーし雪降りっぱなしの彼岸まで、二月十五日にだんご捲きしたな、お釈迦さまの涅槃会、五色の団子こしらえお菓子を混ぜて、小滝高安寺小栗山の子供を呼ぶ、ばったみたいに跳び付いてありゃあるったけさらう、栴檀は双葉から強欲たかりが面白かったんだが、子供が来なくなる、数もへったしサッカーしてるから行かないとか、しまいまで残ったお寺だったが廃止。
紅の春に迷はむこの鳥やオホーツクより吹き荒れなんに
吹雪で鳥が迷い込む、今助けてやるからなといって、ナムがいた、お寺の黒虎だ、気がついた時にはぱっくり。あるとき喉が鮮紅色の鳥が来た、のどあかといって北海道のわたり鳥だ、大荒れで迷い込んだ。
地吹雪は二月に来る、停車は追突前は見えない、すんげーやホワイトアウトだ。駅から歩くと雪が盛り上がって、水かさの増した川にはまってすんでに死ぬところだった。
きつつきの穿てるあたり降り降りてまふら淋しも軒伝ひ行く
なんせ雪に閉ざされてほとんど四月まで、今はブルが掻いてくれるし、車も四駆になる、軒伝い歩くという毎日、あおげらはきわめて美麗でとんでもないことは、七羽も来てどんかつお寺は穴だらけ。
唐松は堂を破りしきつつきのつがひにあらむ春の燭台
啄ばむは花の浮世かうその鳥たれそ追ふらむ雪は降りつつ
雪消えが遅いとうそという赤い鳥が来て、花をむしって食い散らかす、真っ赤な嘘ってえのはちがう、目白は密を吸い、くちばしの太い雀は花を千切る、はーてなあうそはつぼみを食うんだ。
2011年01月14日 08:27 せっちゃん ショートショート・鳥鳥
柏崎夕波荒れてみずとりのか寄りかく寄り雪降るはいつ
波荒れてみずとりが五、六羽揺られている、雪降るのはいつなんだって、なーんかそんなふーな感じ、みずとりの名は鴨にきんくろはじろに雁にばんにえーと他わからん、白いのが神子って書くんか巫女って書くんか、みこあいさっていうらしい、おめでたいって感じかな、雪降って妙見堰に浮かんでいた。中越地震で巨石が落ちて、かーちゃんと赤ん坊が生き埋めになった所だ。あそこ鯉釣り名所だったんにさ、立ち入り禁止になった。
鯉を釣っていると、いろんなみずとりが来て、甥っ子のかーちゃんが半弓やってたのをもうやらないからってくれた、よーしやっつけてくれようっったら矢鴨事件があって止めた、めっかったら生臭坊主だけじゃすまなくなる。アーチェリーなあいつへた撃つと腕こすってえらい目に会う。
黒岩が軽のジープで河川敷を乗り回す、四五度登るんだぜってほんにさ、石ごろ原平気で乗り回す、助手席のわしはたまったもんでなく。
守門なる刈谷川辺に郭公の鳴きわたらへば時過ぎにけり
万葉にそっくりあるのを地名だけ変えた、本歌取りっていうより物真似、郭公が鳴きわたると鯉がばったり釣れない、時過ぎにけりってのは田植えとか畑とかに関係があるんだな。信濃川には郭公がいて、電線に止まってかっこーかっこーって鳴いている。
束の間もよしやあしやの信濃河暮れ入るさへに行行子かも
おおよしきりもうるさいほどいる。自然の摂理ってなーんなんかな、親の卵蹴落としててめえでっかく育つやつ。
雪の林にしじゅうからが来る、ぴーと口笛吹くと寄ってくる、かわいーけどえさやるなんて邪道だ、取って食うほうが正道だ、白鳥増え過ぎたから鍋にしちまえ、十人前できるぞったら、白鳥の絶対数は変わらない、日本だけ増えてるんだとさ、ふーんこしひかりの落ち穂食ってるからいけるかも。
いやひこの蒲原田井を荒芽吹く烏鳴くさへおぼろなりけり
人はいさ老い行くものを蒲原の青葉に酔ふて鳴くなる烏
おいって云うと振り向くやつ、仲間だって云ったらぴーと糞ひった、はしぶとからすはおっかねー感じ、まじかで対決したらかろうじて勝った。からすめくるみを落として車に欠いてもらう、どんとフロントガラスに当たって魂消たことあったな。めったなこっちゃくたばらんが、轢かれた烏からす同士突っつく、ふーんやっぱ烏だな。
2011年01月17日 07:03 せっちゃん ショートショート・砂かぶり
砂かぶりってーんかな桟敷で相撲見てる人の顔がほーんに陰気臭くって、閉塞日本のどーもこーもだなあ、政治がどーの外交だ不景気どん底ってさあ、武士は食わねど高楊枝、たとい何あったってけろんぱしてたのに、白鵬が頑張って日本人代表やってるのに、海皇が年にもめげずって、ちったあ元気だせ。
もとっこ坊主がわりーんだ、世界中が幸せにならんけりゃ個人の幸福はないと云ったのは宮沢賢治だ、宮沢賢治は大好きだが、そりゃヨーロッパ思想だ、片隅を照らすもの国宝なり、伝教大師はくそ面白くもねーけど、一人光明なら八方を照らすというのが仏だ、世の中どーであれ回りを照らす光明、西欧かぶれのいいことしい、キリスト教だのいう邪教の赴くままに、それを批判することもできない、共産主義がきちがいだと現実に見て対処できないなぜだ。
日本の心を取り戻すこと。
滅びにまっしぐらは、経済や外交や文化や思想の故にではない、そんなものになんの影響も受けない、心は濁りに染まぬ蓮の花、ないものは金剛不壊、もとっからなーんもないを知る、信ずれば救われるの賛美歌なと、入りやすく煽られてみんな仲良く世界平和とは違う、難しいことは難しい、もと取り付く島もない。
ものみなかくの如し。
絶学無為の人を尊貴する、仏仏に単伝というたとい世の中の常識が必要だ、担うべき坊主どもの堕落な、先生と坊主にはろくなもんがいないと、藤原こうたつが云ったが、双方腐ればそりゃ人は滅びる。
仏教のぶの字もない曹洞宗、達磨さんに毒を盛り御開山禅師に後足で泥をかける、よくもまあ罰当たりがゼニカネ車と女っきり、ミンチにして養殖まぐろの餌にしろ。白隠以降仏とは別物の臨済宗、公案だお悟りというきりの自閉症、犬の子一匹救えぬていたらく、仏を大切にする気風があるなら、もういっぺんまっぱじめっからやり直せ。
どーもこーもならん世の中だって、一人開眼すれば百方開く。
一遍上人の宗は絶え、他の宗派はそりゃ仏教とは違う。
2011年01月18日 08:37 せっちゃん ショートショート・金鉱
ちょっと行って来る、こんな日に出かけるのかーちゃん目むいて怒る、たっても海見に行くんだ、仮病のかーちゃんほったらかしに三日もどっかふらついた、信用なくなったえへへ。突堤にどかーん吹き上げて荒波、うねり寄せたり、しぶきがかかったり、わっはっは本気に荒れるとサーファーやってこねーな、なまじっかだと所狭し車停まる、大波の立つ浜とそーでない浜がある、どーしてかって見た目よーもわからん。
吹き荒れる風に乗ってかもめが飛ぶ、えさがあるからか。
釣りしてたらオキアミをさらいに来たな、投げこんだの食って舞い上がる、ぐわー外れない、かもめ凧かな。オキアミと竿ごと持ってったことある、はるか向こうに着水して、どーにもこーにも竿は漂流。
かもめ釣りした、しばらくこらしめようってのを、小学校三年だったかてっちゃんが面白がって、いきなりかもめにキスされた、獰猛な鳥だ。てっちゃんはわたりぼにも挟まれ、蛸にも咬みつかれ、わっはっはいろいろあらーな。
今は本山修行のえらーい坊さまかな、しょーむねえ親父持っててーへんだ。
じっさいい子でいるにはどーしたらいーか、やっぱりホームレスかな、奄美大島飛行機片道七万円だって、寝袋と釣り竿ありゃあって思ったらはぶがいる、玄関にははぶ取りの棒が置いてある。はぶのはまむしの倍あるか。
門前のかーちゃんどもまむしとっつかまえる、焼酎に漬けて五千円、はぶは一万円だっけか、わしはとんでもそんな勇気なし。むっくりというきのこ出て行列して生える、手さしのばしたらびーっと音する、尻尾うちつけて警戒音だ、ひえあぶねーところだったあんがとよって、まつたけが出るって聞いて行ったら、まむしの子が前後左右、毒は同じだって不動金縛り。たぬきに食われて絶えたそーなが去年見た。復活かな。
雪が降ったら山へ行かない、行ってみよーか、佐渡が見えるんだ、お寺から佐渡まで金鉱がつながってるんだぞって、信ずるやつやっぱいねーな。
もっこもっこ雪を歩く、なむねこみたいにさ、あいつ冬は修行していた、晩年は駅のストーブに当たっていた、このねこめざし食わねーとかって駅員が云った、山門を出ると知らん顔で助かったな。
本山修行は本山病になる、仏法のぶもなし無理やりお仕着せ。
2011年01月19日 10:04 せっちゃん しょーとしょーと・グルメ
何がくせえって風呂にも入らねー、パンツ履き替えねーで坐禅に来たトヨには参ったが、あの蒲団使えねえってうーんなことねーとは思う、人間みなくせーけどてめえのくせーのはわかんねーんだな、mixiに入れてくれってえからはいよっていうと、どーもこーもごみあくたいる、でもってのうのうとしてるの恥ずかしくねえかって、恥ずかしいの忘れて次第くせえってやつだな。
みみず車に置き忘れて這い出して腐ってどえれえにおい、ぎやー死ぬったって大掃除にめかいた、と思ったらあおいそめ腐ってこりゃもうにおいなんてもんじゃねえ、強烈毒だ、やっぱり海のもんのほーが数段まさる。
グルメで云えばうはは趣味わりーか、てっちゃん料理の鱈ちり、三日も残ったのへもち焼いて入れて、塩に醤油とどーもあんましうまくねえ、てっちゃん土産のさくらえびのふりかけっての入れたらまーさ乙な味。うめーもの発見はちょっとしたカンと偶然による、腹へって入った長野市のカサミンゴは、ソーセージやお菓子のドイツ料理だが、ぞっこんうまくって二度食って取って食いして、わっはっは三度めにはもーいいって、どんなすんばらしーんんでも間置くさな。
小林はきのこ取りの名人で、車に乗ってってどっか生えてねーかと云ったらここっていう、停めて山へ入ったら天然もののなめこが生える、雑きのこもわんさか。ふんなことってあるわけもねえ、小林はきのこの仲間かも、わしもなめこめっけたことあって、ビニール袋いっぱいにして変だなと思った、なぜこの木寸法に切ってあるんだ、うわ人の植えたもんだ、取ったのはしょーがねえ逃げた。
小林がいつかどーですって見せたの、どくささげだった、食用と間違えやすい、新潟県特産で、食って三日たつと手足の先がなたでぶっ切られるように痛む、激痛は三ヶ月も続くという、ひーえなんとか知識あったから助かった。
小林と二人で留守番して、テレビにフランス料理ってのあった、トン肉に野菜にきのこ入れ、ワインぶっかけてぱーっと燃す、なんだやらスパイス、死んだもんに枯れたもんにバジルのデビルに? おっそろしくうまかった、二回目は食えねえ、三回めは失敗四回以降はなし。
かしぐるみは信州特産、めったに売ってねーのを三年買いあさったら、ホテルにも出る、雷電くるみの里へ行くと、なんだあ一人二袋だと、けちるなっておねーちゃん怒鳴ってもあかん。
グルメってさ単純そのもの、ハムもソーセージもステーキも塩味一つ、そーだ塩味ちゃん結婚するんだった六月十二日。
2011年01月20日 06:52 せっちゃん ショートショート・加茂川
芦辺には月さし出でて何故か河を越ゆらむ雪は降りつつ
古代には冬はたった一日であくる日は春になるという、どっかうなずけるところがある、魂の冬と云って、たましいがとっつくのか去って行くのか、冬とは死んで甦るんかなあ、なんせ大雪の越後とはかんけーねーか、河といえば信濃河、母なる大河というより、流転三界命尽きたら信濃河ってさ、向こうとこっちでは電力会社も宗門の教区も変わる。
枯れ芦に雪は降りしけ夕月の過ぎにし君を思ほゆるかも
年上の弟子であった滝川さんが死んだ、まったくどーしよ-もない師で彼を度すことができなかった、しばらくは気にかけ今はどーなんだか、袖降りあうも多少の縁と、枯れ芦も雪も風情、河も人も月の満ち欠け、獅子座流星群を見ようってさ弟子どもと三人で行く、信濃河は千曲川になって、犀川が合流して松本へ、越後は時雨信州も降っていたか、美穂の松原までのして行って、せっかく流星はちらーりほらーり、ひまだねえ坊主は。
うばたまの黒姫吾子を雲井にか見裂ける月に追はれてぞ来し
黒姫伝説は蛇の化身にもてあそばれてという、水内郡のみのちは蛇だ、農耕に関係があるんだな、よーもわからんけど面隠み、おもなみというセックスのあとを恥じらひに顔を隠す、今のおねーちゃんどもには縁がねーか、黒姫はほんにいい山だ紅葉も若葉もさ。月の光になって追いかけるそりゃこわいな。
加茂川の月に宿借るあしかびのしじにも雪は降りしかむとす
新潟県の加茂川だ信濃河にそそぐ、桐箪笥で有名な加茂市は京都を真似た町名がある、釣っていたら鯉は跳ねるのにさっぱり釣れぬ、まんまるう月が出た、枯れぬ前の芦がうつる、雪になるってそっくり京の加茂川に進呈しよう。日本人に和歌が絶えて久しい、でたらめなんでもありの語呂合わせではなくってさ。
2011年01月21日 07:58 せっちゃん ショートショート・パソコン
パソコンぶっこわれて若しや命のないのと同じと思ったら、電気屋来て文字盤ソケット差し替えたら付いた、うひひどーもさっぱりわからん、二月に明慧上人来るから、メルアド変えてパソコンも変えてもう一花咲かせるか、花咲じっさ業、せったん歌一千じき終わるし、提唱とむかしばなし雲水日記、世に出すことできねーかな、うっふーみみずののたくった書とさって、まあさそろっと一人きりすっか、どーせ死んだと同じ、坐りゃあの世へ行ったっきりみてーな。
挙す、雲門垂語して云く、十五日以前は汝に問はず、十五日以後一句を道ひもち来たれ。自ら代って云く、日々是れ好日。
門こんに足をへし折られて得る日々是好日、見渡すかぎり他に得る人なし、転ばぬ先の杖に汲々として、必ず自分を省みてなにがしとなす、花も鳥もな、それじゃあ生きているとは云えん、死ぬこともできん、へびの生殺しみっともねえったらのた打ち回るが関の山。
雲門問ふ、如何なるか是れ仏。雪峰云く、寝言をいうなかれ。雲門便ち礼拝す。一往三年雪峰一日問ふ、子が見処如何。雲門云く、それがしの見処は、従上の諸聖と一糸毫もことならず。
お釈迦さまも達磨さんもまったく同じ、仏はたった一つ、雲門の禅などいうもの若しあったらとっくのむかしに断絶。形あるものは必ず滅す、ないものは損なわれず傷つかず永劫未来、たった一人でいい、まったくないものになって欲しい、現今を実証する以外になく。
一を去却し、七をねん(てへんに占)得す、上下四維等匹無し、徐ろに行いて踏断す流水の声、縦いままに観て写し出す飛禽の跡。草は茸茸、煙幕幕、空生巌畔花狼藉、弾指して悲しむに堪えたり舜若多。動著すること莫れ、動著せば三十棒。
よく香語に用いるんだなあこれ、やさしく云えば自分というたが外れて、ぜんたいはるかに塵埃を絶して驀進する、おもむろに行いて踏断す流水の声、ほしいままに見て写し出す飛禽の跡、たれかれ云うなら、世界中の歴史も思想も芸術も書も一つ余さずです、しかもなんのお喋りもないんです、悲しむに堪えたり舜若多、虚空神ですとさ、雲門がいるわけねーじゃねーかさあほんだら、臨済宗はそーさなあないってこと知らない。あって商売繁盛だとさ。曹洞宗はわしを最後に絶えるかー
2011年01月22日 06:10 せっちゃん ショートショート・大雪
竹やぶずっしり寝てなんせ大雪かな、けものの足跡がひとすじ、うさぎでなくっててんが鯉を取りに来たんか、おっこうの葉を食べに山鳥の親子が来ていたが、笹が寝てりゃあ笹を食べるんかな、春になりゃうさぎのうんちがどっさり。
屋根の雪下ろしは一段落してからだ、暖気になればがっさりへる、雨が降ったらやたら重たくなる、一屋根象十頭分とか云ったな、たまらんな。
本堂の雪庇を切りに行かんきゃな、凍てつくと引く力が強烈で、軒をへし折るやられたな一冬五十万円だっけか。あいつへた切ると音もなく雪崩れて、足取られ池に叩き込まれた、二回もさ、池の水くぐって命助かった。
だっていうのに東京さ行く、仮病のかーちゃん呆れる、てっちゃんはとうからそっぽ向く。はてなあわしはなんで東京行くんだろ、どろちゃんだのおねーちゃんに会いにって、ツイン取れってーと支店長と相部屋だとさ、くそーおかまの趣味なんかねーんだ。
そーいえばおかまバー面白かったな、もう十年も前になる、メード喫茶はちっとも面白くなかった、つんでれ喫茶に執事喫茶がいいってだれか云ったぞ、スカイタワーは上れない、東京タワーで我慢すっかってお上りさん、韓国行くかな新大久保の。安くって美味しい店あってもうせんに行ったな、つぶれちまった。
ばかは死ななきゃ治らねえ、死んでも治らねーか、だれも喜ばねーのにさ、はた迷惑顰蹙どーしよーたって切符買っちまった。
去年は八号線入ったら大渋滞、長岡駅へ着くのはお昼ごろだってついに諦めた、キャンセル料だ今年は奢れってさ、やだよー切符代ぱーになったんだ、待てよ今年もその懸念大かな、見附から電車で行く。新幹線ストップしたらどーなるんだ、うっさいわしは行くんだったらさ、
江ノ島行って富士山見よう、鵠沼のハワイ料理ってのうんまかった。まぐろがボキでえーとまんじゅうがなんだっけな。
しょーがねーなちったあ大人にならねーと。
命より大切なかしくるみお土産に持って行くからさ。
秀でては花も実もあれ浮世草こはおろかしき空ろ木にして
2011年01月24日 13:49 せっちゃん ショートショート・劣化
慎太郎かだれか日本人は劣化しているって云ったそうなが、スカイツリー口開けて見上げる群衆カメラ抱える連中見てるとつくずく実感かな、若いのも年よりもどっかもう人間の格好していねーな、右往左往根無し草のてめえ判断力ゼロ、なんだろうなあこれ浮き草に影というものありにけり、影という人格もねーなあただの雑っぱ、ふーんよくわかんねーや。
スカイツリーって側へ行くと却って高さがわかんねーかな、川っぱたから見上げたらこりゃおっそろしーやと思ったけんど、浅草寺の境内地じゃ五重塔とおっつかっつな、五重塔のほーがそりゃ貫禄あらーな、賽銭箱あっしさ。新宿の48階ビルからスカイツリーと東京タワーが見えて、正三角形の三つ頂点みてーかな、へーえなーるほどってぐらいのっぽだった。
日本国断末魔のモニュメントかな、経済発展一億総白痴化へのシンボル東京タワーと、一巻の終わり劣化ウラン弾電波頭脳のお顔なしスカイツリーだってさわっはっは、ぞっとまあ笑えねーなあ。
難民移民を大幅に受け入れる、日本人はおしまい、じじばば姥捨て山してどーしよーもねえ粋のいいがきども、過保護しねーでめったやたら育てるのさな、悲しいかな日本語なんぞむかしに滅び去っている、坊主だめじゃ思想も哲学も消えて、やくたいもない議論ばっかし年が年中、そっぽ向いててめえよけりゃいいやってしかねーな。
一人如来仏の道が残っている。
良寛さんさな。
自分が消える利己心なしがてめえよけりゃあってやつ、そりゃ笑える。
わっはっは大笑い。
550メートルなんてけちなこと云わないスカイタワーな、成層圏をぶち抜いてにょき。
めえというなんにもなし=宇宙と同じは宇宙を見ない。
理論的に可能だってこと知ったら、帰りなんいざ田園将に荒廃、元の木阿弥その他不要、浮世終わったら霊山説法。
2011年01月25日 08:19 せっちゃん ショートショート・追ん出され
どろちゃんが酒井抱一にするかカンディンスキーにするかってえから、酒井抱一にするって云った、有楽町だって行くと、出光興産いでみつこさんのビルでもって、前にもなんかで行ったっけ、皇居が見える桜田門だあってことは丸の内か。わしも人生まじにやりゃあつばぐれーつけたっか丸の内、一年先輩でいでみつこさん入ったのいたな、もうさっさとあの世行ってるかな、ない知恵絞って無理すりゃ寿命ちじめる、そこいへ行くとわしや朝倉はどんと長生きすっかな、ゼニさっぱり入らねーのが玉に瑕。
なんだあこりゃ成金趣味、俵屋宗達に本阿弥光悦だ、尾形乾山に光琳にだと、歌あり屏風あり茶碗あり鉢あり、何千万から何憶っての並んでいるぞ、酒井抱一はどーしたんだ、いえ抱一は別会場みたい、するてーとどっかで蝶番狂った。
まあいいか正月だあうはうはいって見ていた。どろちゃんが聞き上手で田舎坊主薀蓄。古今を通じて目利き第一ってーのが光悦で、もと刀剣を扱う本阿弥家だなあ、刀ってーの音楽で云えばモーツアルトさあな、はがねこそは魂云々。そりゃなんたって絵の一番は雪舟さな、悟りの姿そのものを描く、世界中どこ探したってそんなのない、世界遺産の筆頭だ。
そーさ偽物いっち多いのは雪舟で、なぜかって禅寺じゃ雪舟が必需品だったんだ、そうは数がない雪舟一座が描く、伝雪舟ってようく較べると解る、別に見たらわからんかなあ。俵屋宗達も座つまりギルトの生産だなあ、伝宗達はでも伝雪舟よりわかりやすい。風神雷神あんなもん描けるんは宗達以外にない、大胆小心の右代表みたいな男だって三島由紀夫が云ってたが、どうも現代人の批評できるような玉じゃねーな、光悦もどえれえ人間臭い、尾形光琳は物真似だ、どっかにがさつな所がある。それを抱一が凌駕する、たいへんな努力だ。あの申し訳ありませんがお静かにって、係りに怒られちまった。てやんでえ、しゃべらねえ溜息もしねーで鑑賞できっかよ、いつだったかバッハ聞きに行ったらどへた、こんなんゼニ払えっかよぶーすかって睨まれた、三曲めになったら見事な演奏、ふーんそーゆーもんかって納得、でもさお行儀のいい日本人て、てめの心置忘れ、ついに劣化ウラン弾になって、ただのがらくた。ふわーい怒られねーで外へ出るのが先決。
2011年01月26日 08:15 せっちゃん ショートショート・ばーさんミンチ
雪の国道で複数に轢かれてばらばら事件だとさ、となり見附の警察が調査してら、天気晴朗なれどもさみーや、剣呑だしドライブ行かねーで昼寝。この気温だとむかしは二回三回は雪下ろし、やっぱどっかへんてこれんだな、鳥取のに余計降ったみてーだし、山を越えて仙台も大雪だとさ。
ゴムボート持って沖にあるテトラポットで釣ると、きつねめばるが釣れたっけ、ずんぐりむっくりが以外に美味しい、一つ穴に七つも八つもいた。十以上はだめメスは禁止って、中学のてっちゃんが怒ってた、うっふ釣り荒らしてさっぱりんなったか。てっちゃんは野尻湖へ通って、わかさぎ400釣って一番になって新聞に出た、にせ名前出して今年は行かねーかな。
なんかしねーといられんとは厄介なこった、自然破壊の方向に決まってらーな、恐竜は屁の垂れ過ぎて炭酸ガス、メタンオーバーで絶滅かと思ったら、半径15キロの隕石が、ある日ユカタン半島に落っこちたんだとさ、なーるほど。
灼熱の氷彗星って物理学者の書いた本あったけど、地球の裏かわからつまり夜の側から、地球の三分の一のがニアミスする、研鎌の月になって見えたんだそーの、おっとろしい風景かな、大量の水が流れ込んでノアの箱舟だとさ。その証拠があるってところで、飽きてぶん投げた。
人間胡散臭いばっかりの、そろっと派手に月でも衝突しねーか、半径100キロの小惑星とか、オールトの環から天下りってのねーんかな、まんまじゃ人間不幸になるっきりだし、地球にとっちゃどっちでもいーのさ。
ペンタゴンがエイズを発明したっていう生物学者の本は、実に信憑性があったのに、一年足らずで本が消えた、エボラ出血熱の出所もたしかにって感じの、どっちみち列強は、いつんなっても列強だはさ、ウイルス兵器の開発に血道を上げる、武士は相見互いってこってうやむや、日本もちったあらしいのあるかって、みんな仲良く平和にってんでだめ。中国人ばっかりにならねーうちに考えれ、鳥インフルエンザで攻めてきたら、もぐらペストのカウンターパンチ、うははのみ爆弾古いね。サイバー攻撃で世界中の水爆ぶっぱなそーで、核の冬は生命は残るみたい、次世代地球が希望の星ってさ。
たしかに人間用無し。五万年ぐらい前からそーかも知れんなあ。
しゃーない死ぬまでそこらへんで釣り暮らすか。あと二十年は魚いるってさ。
坐るほかなーんもしねーずら。
2011年01月27日 06:54 せっちゃん ショートショート・大面
大面村夕荒れ吹雪止みぬればいずこへ行かむその迷ひ鳥
大面をおおもと読んだのは一人もなかった、だいめんおおつらがいいとこ、おおもとは水の辺から来るんだとさ、上杉謙信のころは県道の向こうはもう海だった、山門前にもみの大木があって、三十年前に田んぼに倒れこんだ、田植え前だし縁起がいいといって、おふくろが田んぼの持ち主を丸め込んだ、それが舟つなぎの木と云われて、ちょっと沖へ行くと舟が丸ごと埋まっていたりする。がつぼと云って泥炭化したかやと雑木が出る。弥彦山と角田山があって、その間今のようになったのは、信濃川と暴れて有名な刈谷田川、五十嵐川が土砂を運んだ。
大面村は古く、五十嵐小文治のころから街道すじで、道は東山寺を越えて見附に行く、天狗が東山寺の屋根普請をしたというむかしばなしがある。学者先生の穴井が戊辰戦争を調べた、へーえそーかって聞いて忘れちまった、わしの知ってるのは河合継之介に縁があるというのと、坊主が官軍に140両取られたってことだ、そのほか併せ持って調べて、丸太伊豆守やそれ以前もさてっちゃんに伝えておくれ。
大面村寄せあふ軒の梅が枝のくしくも雪は消ぬべくあらん
石油が出ていっとき盛った、檀家のなんでも屋が儲けてたのに、石油出なくなって踏み倒されてえらいめにあった、以来大面村は人が悪くなったんだとさ、そーいえばわしも杉植えるってんでやられたな。あいつ罰当たって寝たきりやってるぞ。
人面はたれそ刻まむあは雪のしましく行くか月読み木立
大面引く一ってのが人面ひとつら村で、見附から栃尾へ行く所にある、雪の多いところで、夜中通ったら月が出てたま木の影がうつる、なーんかたぬきが化けて出そうな、ここも調べりゃなんかありそーだ、やっぱり穴井に頼むか、穴井は九州の名前で、てめえん家のことくわしく知っている。
人面は我れも刻まむあは雪の久しく行くか月読み木立
2011年01月28日 08:02 せっちゃん ショートショート・火炎茸
見附市の議員になりし清一郎永眠せるは夏の終はりに
清一郎は酒屋のせがれで市会議員になった、男が若死にする家系でもって、親父も四0で死んだ、つれあいはまだ生きている。酒屋のくせに飲兵衛で、イベント屋でタレント引っ張って来たり、わけのわかんねー経済だの政治御託呼んで見たり、佐渡の太鼓、鼓童ってのか連れてきたり、たまにお寺へ来てわし相手に薀蓄する。
飲みすぎて酒止めてまた飲んでおかしくなった、アルコールが脳に入ったとかで、ないものが見える譫妄状態ってのかな、しっぽの生えた裸女が天井からぶら下がったとか、とっついて来るへんなんもんと格闘したり、なんか物凄い風景で、けろっと治って話して聞かせたが忘れちまった。立候補したら、かーちゃんが議員はいやだといって離婚する、かーちゃんなしの激務が祟ったか、一年たたぬまに葬式になった。
市長と市会議員が並んだ、ばーちゃんのためにわしは説教した、つまり議員も市長も煙に巻いた、清一郎のなけなしにのしつけた、やっぱし檀家で高校の校長がいて、末娘がプラスバンドに入って、その受け持ちが大赤字出したかで、清一郎が槍玉に挙げた、校長わしんとこへ来てどーか炊きつけないでくれっていう、話聞いてるだけなんにさ、娘三人いるうち一人を離婚したかーちゃんが預かる、ばーさんとしてはかーちゃん憎し、わしはやっぱり相槌打つだけ、説教ははばーちゃん大喜びでしばらく元気になった。
一箇だに打ち出しえぬとな思ひそね柿はたははに底無しの天
見附に名木の湯という鉱泉があって、まむしに咬まれや皮膚病に卓効がある、床の間にあった火炎茸というきのこを食って酔っ払いが死んだ、全国版のニュースになった、
見附市を昨日死ぬるは酒にして火炎茸とふ食らへる男
清一郎も生きていりゃ関わったか、裁判沙汰になってもめていた、床の間に飾っちゃわりーったって、そりゃ食うほうがわりーやな。
糸へんにつとめて坊主の代継ぎした大風な男が、今の世はおまえさんの演説とは違うんだと云った、演説の内容なぞかんけーねーんだばかものが、云うには云ったが、何を考えて坊主やってんだしょーがねー。
2011年01月29日 08:08 せっちゃん ショートショート・バジリスク
みにくきは鬼面山の鼻つらのはなのみずきの人知れずこそ
どんなふうに歌を詠もうがそりゃみんなてめえのこと、てめえのみにくさをさらけ出す以外になく。山寺へ行ったら句碑がずらっと並ぶ、
静かさや岩にしみいる蝉の声
芭蕉の傑作だ、てめえをまったく超えて蝉の声っきり、全世界静まり返る、
荒海や佐渡に横たふ天の川
と並び名句中の名句。
あやかって並ぶ句碑は物真似だ、物真似にもならん、あっちむきこっちむきなんだなあこりゃ俳句でも詩でもない。続いて跳び込む蛙なしはついで、現代俳句などいう、蛙もいなけりゃ蝉も鳴かない、おっちでつんぼのひとりよがり、サベツだのいうのに触れなきゃそれでいいってだけ、文字の獄なんてーもんじゃなく、紅衛兵のバジリスク、ものみな死んでしまった、でたらめだな。
えせ俳句碑どもを押し並べ風の通ひにあげは舞ひ行く
暑くって山寺を登って行くのは汗だくだった、下の川にやまめがいた。
詩歌も絵も消え失せて、わけのわかんねーなにやかやと、経済の衰退と喧騒と、相撲の四股名さえ付けられん、そりゃまあお先真っ暗かな。五万年ほどさかのぼってネアンデルタールからやり治すか、埋葬だの宗教だのいらん。紅衛兵のように破壊しつくすか、ポルポト派みたいにがきっぽい殺戮集団か、いずれもはた迷惑だな、つまらねえだけかな、瓦礫の山のほか糞尿も役には立たん。
みにくきは鬼面山の鼻つらの押し照る月の人知れずこそ
良寛はまるっきりの一人が、見上げる月は人類なんてけちなこと云わん、世界宇宙ぜんたいってよりお月さんだ、忘我の月。
良寛の書はみみずののったくったよーでもさ、貴重な宝物なんだ。
五万年もなーんもいらんよ、たった今だれあって可能。
我等が行持に依りて諸仏の行持見成し、諸仏の大道通達するなり、然あれば即ち一日の行持是れ諸仏の種子なり、諸仏の行持なり。謂ゆる諸仏とは釈迦牟尼仏なり、釈迦牟尼仏是れ即心是仏なり、過去現在未来の諸仏、共に仏と成る時は必ず釈迦牟尼仏と成るなり、是れ即心是仏なり、即心是仏というは誰というぞと審細に参究すべし、正に仏恩を報ずるにてあらん。
2011年01月30日 08:09 せっちゃん しょーとしょーと・光明
北海道へ行って男爵芋館へ入って芋ソフトクリームを食って、朝のトイレすまして、はーて次はトラピスト修道院だって、まあさ早朝を見学者の行列、石段の向こうに塔が建って鉄門が閉まる。なに女人禁制だって、そりゃだめだ、幸ちゃんも恵美子ちゃんもおかまだってえことにして、あんれ予約しねーと入れねーんだって、ではフライフィッシングだなあ無事通過。
僧堂はらごら坊主の猿芝居道場になっちまった、祇園精舎はどこへ消えたんだ、日本の文化の根本が失せた、心がないってこったな、一休も良寛もない、ほんらい本当を知ること不可。
こんな不幸はない。滅びの国の良心とはただもう数の多いこと。
ヨーロッパの文化を生み出してきた修道院は脈々と続いている。キリスト教という邪教の、そりゃどこへ持って行きようもないうさんくささ、近似値には近似値の理屈があるってこったが、我田引水。
なにしろ歯がゆい、どーしよーもねーか。
らごら坊主どもに爪弾きされて、出て行けといわれとにかくやって来た。宗門という便利が必要であったか、なにさわしがだらしなく、釣りだのおねーちゃんだのして、良寛行にそっぽ向いたっきり。托鉢でって何度か試みてはたせなかった。得度の師匠は十五年上だがどーやらまだ元気で托鉢暮らしする、不詳の弟子は逃げ出した。
みやべが托鉢に出て、開聞岳から新年の挨拶なーんて電話よこして、なにしろ沖縄まで行くはずが、用事があって呼び戻した。そのごも托鉢に出て、どっかのばーさんにとっつかまって、おまえさもすったらことしてねーで、早く正業に就けって云われて、こりゃだめだってんで止めた。托鉢がそーゆー商売になった。宗門は死んだ。そのみやべんとこで接心を開く、みやべの先輩のしゅうしんのところはもう四回の接心だ。わしんとこで二月、五月、九月、十二月の接心があって、十月はしゅうしん、四月をみやべが開く。
持ち回り僧堂だな、弟子どものほかに頭剃ったのも来る、宗門坊主が来るわけはない、禅宗だってのに坐禅を忌み嫌う、なんだあこりゃ。在家が多い、むだっことはしない、御開山道元禅師のお示しになる以外まったくない、接心の時間割飯台作法の他に規則はない、厳しいことは大法これ、わしがにせもんならそれっきりってこと、一人二人目鼻が付く、伝え行く光明が見えたってこと、そーさなあ早く役目を終わってさ。
2011年01月31日 08:15 せっちゃん ショートショート・雪下ろし
プロに雪下ろし頼んだ、さっそくやって来て五人手間で夕方五時半まで目一杯かかった、一メートル60あった限界でしたと云われた。てっちゃんが二日もありゃおれ下ろすと云って、忙しいことも忙しく彼女とデートで下ろさねーからこーゆーことになる、わしは命惜しいから止め。雪下ろしなんてこの五年間本格にはかった、道具もどっかいっちまったしなんかもーわからん。本堂屋根のなでついた山が今年はむかしと同じになった、次々降ってたかをくくってる間に大雪んなった。入広瀬で四メートル津南で三メートル半だってさ、相当なもんだ。魚沼の人は一冬三十回ってのが相場だった、お寺は村の三倍つもってそれでも三回ってとこ、三回めには雪上げで、軒を越えてどかーん雪の山、まったくたいへんで、鯉なんか死んでも人間さまだってんで、雪を池にぶちまけた。
鯉は元気で雪消えると出て来る、何匹かけものにやられ、骨だけになってるの、血吸われてミイラになってるの、うろこだけ残ったのと、つまり取るけものが三種類いるわけだ。やまどりが子連れ夫婦で長い尾っぽして歩く、雪の辺につきだしたあららぎを食う、そんなん食ったってしょーがねーがな。うさぎの足跡だらけだったのが、たぬきが増えて激減する、本堂屋根のてっぺんまでついていた。月に跳び上がったんかな。
うさぎらの跡を辿りに背裏山天の雲いが浮かび行くらん
雪がぬるむと熊のように大きくなってのっこり続く。たがいちがいにちょんちょん、そろえて二つと、どっちが前でどっちが後ろかってのクイズになる、そろえて二つが前に出る。
落ち椿浮かび廻らへ心字池月は雲間に隠らひ行けど
先住が今はのきわに、雪消えればいいお坪があると云った、あと継げってわけで、なんせ雪ばっかり、とうとうぼけたんかなと思たら、なんせあのときは夢のように美しい庭が現れた。
落ち椿浮かび廻らへ心字池ほどろほどろにその春の雪
雪霧というものがあって、視界ゼロの真っ黒けに霧が立つ、雪がいっぺんに溶けるいや蒸発する、大事件だと思ったら世話人が春になるよと云った、先住が息を引き取った。
山川も海もはてなむ万代にい行きかよひて死なましものを
本堂うらのなで切りとお倉の屋根が残った、いくら取られるかな、さーてそっくりてっちゃんに代継ぎだーな。