ショートショート11

2011年02月03日 08:10 せっちゃん ショートショート・ぼろくず
「心を求むるに不可得。」
「我れ汝を救ひ得たり。」
 慧可大師と達磨の問答は今もまったく同じです、心はたった一つ、心が心を省みる事不可能、単純なこの理屈を知る人がいない、雪舟の慧可断臂図のあるのは東光寺だったか、坐禅もするたって、師家なる人の云うことはらしいようでいて別物の、こりゃ一目瞭然事。よくもまあ恥ずかしげもなくと、世の中厚顔無恥てめえ本尊ばっかり、てめえでてめえを是としながら、どっかで不是を知っている、しかもそれを不問に付す、万ず百方なんでこーなっちまったのか。
 変ななゲージツ家なるものが、達磨の真似して慧可断臂図になりすます、なんにもない達磨大師の驚天動地の空間と、うじむしのうごめく破廉恥と、下世話にもならんな。
 雪舟の真贋を問うには、絵の中に人が入り込むことができるか否か。
 にせものはできない。
 身心脱落ではない、妄想我田引水の世界だ。
 雪舟は心身脱落、信じきれぬほどの達者だ、王法不思議。
 畢生の大作山水長巻に、梅津なんとかいう俳優が入り込むという無謀破廉恥を犯す。そりゃだれあって雪舟の絵には入れる、だが雪舟の絵の中に、妄想もわがままもない、他所人の見る風景などいうものは微塵もない。
 取り付く島もなし。
 自分という元取り付く島もなし。
 人間を用無しにした超絶人間だ、そんなこた云いたくないけど、見性悟るということは魚変じて龍となる、登竜門だ、今の人まずはもってもってのほか、この絵の中に入って、対話できるのはたとい良寛のほかはなく、俳優も物真似坊主も、知識ひんまるめの糞かきべらも、触れるも汚らわしいってさえ知らぬ、なんていう恥晒し。
 山水長巻は雪舟集大成だ、描き進んでけれんみのない、世界宇宙まさにこれ。
 現実にはない現実。
 富永惣一郎という現代画家が、雪舟の空間を理解しようと、雪山をヘリコプターで飛ぶ、いじましい、人間形成のかけらもない、そんなものが通用する世の中だ。梅津なにがしというぼろくず亡者が、漢詩を振り回して行く、してやったりという馬鹿かこいつは。
 雪舟は滅びない、現代がただもう色褪せて消えて行く、人間だれあって一回しか生きない、こんなことでいいのかと問う如何。

2011年02月04日 08:03 せっちゃん ショートショート・八百長
相撲の八百長騒ぎな、八百長ってのむかしっからやってらーさ、へたくそで顰蹙買った大関えーとなんてった、なんしろ証拠ねーからうやむや、でもさ人みんな見たっていう証拠、いやさてめえ八百長やったっていう歴然、てめえの心は嘘ついても始まらんてーのをさ、今の世だれかれ頬冠り、世間お騒がせみっともないお国柄ってわけ。
 八百長ばれりゃおしまい、大相撲は10年~20年閉鎖ってことで、なんとか若しや目鼻がつくか。今回が初めて今まではなかった、見え見えの嘘ついて十両何人か首切って生き残ろうとする、うさんくさ、そんなもん許す国民の阿呆面か。国技だぞ、借金大国のレッテルの上にぺったんこ。
 でも相撲ねーとつまんねーな、テレビだのなんだのよっぽどつまらねーとこへもってきて、ひひっとも笑えねー云う甲斐もなさ。
 この際まずもって、相撲の八百長他人事にあらずってこと、てめえははたしてどーなんかってこと。人をなじることが出来るか。
 坐禅を嫌う禅宗坊主は、八百長なんてもんじゃない豚箱だ、先生はどーなんだ教育してるんか、役人はよったくってなにしてるんだ、政治家は議論ばっかりのなーんだこりゃ、学者というふーん本当に学者やってんのかと、人おのおの反省するによし。
 是という人には耳を傾けよう、不是というからにはやりなおせ。
 人間一個の問題がすべてだ、滅びに向ってまっしぐらは、てめえをてめえで裁量する付和雷同のいい加減、コンセンサスだのみんな仲良く平和だの、数でこなして知識ひんまるめの糞転がし。
 自分というちらともありゃ不可、人間の基本技これ。
 自分の神が自分だっていう身勝手、なーんじゃこれ。日本人は恥の文化というなら、まずもって恥を知れ。
 てめえはどーなんだという問いさへできない、そりゃもう人間じゃない。
 糞坊主どもを見本にさ、人の振り見て我が振り治せ。
 もとちゃーんとあるものに帰るだけ。
 帰りなんいざ田園将に荒れんとす、そりゃーだれが云った語でこーゆーことだっていう、なんにもならねーのを捨てる。
 激震痛恨ただこれ。

2011年02月05日 08:03 せっちゃん ショートショート・門外
菅直人の目指すところは民主主義事始ってこったかな、門閥財閥ゼニカネを廃して一人一人の政治っていうやつ、吉田茂は麻生家の財を湯水のように使って、見事にアメリカを手玉に取って復興の役を果たした、池田隼人は計算し尽くした上の国債を発行し所得倍増を成功させた、岸伸介は安保闘争だのやっかみ反対に会ってもやり遂げることはやり遂げた。社会党浅沼稲次郎なんてーのぶっ殺されてしかるべき、野党ってのはついの今まで育たねーかあほくさ。
 物真似の国債で大平は大衆に迎合の政治をおっぴろげて、宮沢喜一がせっかく収拾つけよーとしたのに、政治屋どもこぞって反対してぶっつぶす、よって今に至る。
 田中角栄は政治で金を儲けてそれを使おう、私腹もこやそーというあっはっは残念ながら瓦解した、後遺症は小沢に至るってやつで、ぜひとも一掃したいわけだ。麻生や鳩山下々はわからん政治家も、田中角栄もごめんこうむるってなあそりゃわかる、民主主義のあけぼのってさやらせてやれ。
 四面楚歌だ外交からなにからどーにもこーにもふんずまりを、やってるんだからしょーがないさ、反対するなら今の逼塞を打開する手段をもってしろ、ルーズベルトのようにニューディール政策をさ。騒がしいだけの知ったかぶりどもがさ。
 宗教だの共産党だのに身売りしない。
 日露戦争に小村寿太郎を焼き討ちした民衆と、消費税と云ったとたん反対とは、さっぱりこりゃ進歩してねーんかな。だからって民度が低いって云ってみたって始まらねーのさ。
 わっはっは坊主の出る幕じゃねーな、なんしろてめえさえよけりゃいい宗教だでな、わしは。
 まんま食えて寝るとこあって、暑さ寒さを適当にしのげりゃそれでいー。
 一月は何日か暁天坐は堪えたな、なんせ年取った、坐れなくなったら断食して死のう、断食だけが坊主に許された方法だ、一日働かざれば一日食うべからず、百丈清規は今も変わらず。
 なんか働いてるかって草むしりだけかな、雪下ろしもプロ頼んだしこりゃもー生きてる資格ねーか。
 代継ぎてっちゃんが決まるまで、仏のあとが来るまで。
 接心をしよう。
 祇園精舎を作ろう、木枯らしは竹に隠れて静まりぬ、どんな風狂も収まる世界、人の入って行く雪舟の山水長巻があるのさ。
 うんそれだけ。

2011年02月06日 06:43 せっちゃん ショートショート・物語
 多摩川が復活した、わしの大好きな阿賀野川も復活しねーかな、ダイナマイト仕掛けて歩くには今のダムとてつもなく頑丈にできてるで、トラック一杯分でも爆破できねーかな、川をむかしの川に戻すのが願いだって云ったら、そんなことしたら洪水だ地震だ、治水はダムによる、今の世の中コンクリートで蓋着せて知らぬ存ぜぬがよいって、ふーんそんなもんかな、土地改良区のお役人だった。団体職員ていうーのかな、もう一匹お役人がいて二人でなんだかだ話す、こりゃだめだ、こいつらまったく国民の癌だな、てめえっちこそどーしよーもねえってことに気がつかねー、飲んで食って万ず文句云ってお互いお役目ごくろーさん、うっふー江戸のむかしも今も同じ。税金の四0%が人件費だってさ、つまり国はお役人のためにあって、その他大勢のどーしよーもねーやつらは云うこと聞けじゃなくって、云うことなんて聞かずもいーから、お役人の為にゼニ出せっていう実も蓋もない。
 モンスターなってあっちこっち出没するか、昨夜のおねーちゃんは未成年だったって垂れ込むか。
 人みな生活がかかってる、かーちゃんこわいのマンマユート団。
 ちーんなんまんだぶ坊主はお経読んでりゃいーとさ。
 イギリスのおねーちゃんぶっ殺した男みてーに、そこら破れ屋のっとって釣りして暮らすか。
 石器時代から岩屋暮らしのまんま民族もいるって、そりゃもーそのまんまってわけにゃいかんだな。アロハオエさらばハワイよって、ハワイの女王が牢獄につながれて歌った歌、いつ聞いても涙が流れる、人類の歴史ってのはこーゆーことしかないのか、ふーんつまらねえどあほめが。
 古代ヒッタイトの二七の王朝が、シェークスピアもいーところの血を血で洗う交代劇だったって、エジプト最大の王ラムセス二世はヒッタイトに負けたのを頬被りして、三十人の后に五百人の子を孕ませて、なんたってまあ我が世の春。
 エジプトの民間物語は無数にある、作者もいた、後世には伝わったのかどーか、みなまた超古代からから流入したってのは、あながち嘘でもないんかな。
 わっはっは人の物語はまんねり変らず。
 新鮮さはアルタミラ洞窟壁画のほうだったり。
 命のやりとりを描く野牛の絵、若しやして雪舟も盤桂禅師をも凌駕して。
 文明だの歴史だのすっぽらかして、まーさ川の復活だけでいーや。

2011年02月07日 08:09 せっちゃん ショートショート・らごら石

「雉子も鳴かずば撃たれまいに。」
 というのは信州しなののむかしばなし、内容はどーだったか忘れた、お寺は山鶏ばっかりが、ある時雉子が迷い込んだ、休猟区であって雉子山鶏を放すんだーな、迷い込んでけーんけん鳴いて行く、悲しいような相方を捜して三日も山を歩く、狐に食われたかしていなくなった。
 守護神はいるのかって聞く女がいた、鳴き虫だったら雉子の神さま、だんまりだったら山鳥のって、三千仏だなどいって仏さまも仰山ある、お布施もあるで仏さまにしたらって、鳥で云えば孔雀明王っての、十三仏はお不動さんとお釈迦さましか知らん、守護仏となりゃ、えーと世の中三百代言はいっぱいいる他所へ頼め。
 撃たれてもけーんと鳴いてってのは本性かな。そりゃ守護神も欲しいってさ。
 達磨さんが法性水を注いで、つまり過去七仏の以前から脈々伝わる智慧の水だな、火炎式土器は水の湧き出すさまを写す、唐草模様しかり、卍もハーケンクロイツもそーなんだってさ、守護神よりゃ、人類始まって以来命のみなもとだーな、達磨さんは、でもってらご石につまずいて、大切な法生水をばらまいた。
 だんごむしにかかる、だんごむしは人間界に生まれ変って坊主になった、校長先生になって尊敬される。だんごむしはことなかれ主義で、どーしよーもねーの卒業させて、新任の声楽の先生が喉をつぶす。みんな仲良く平和にってんで、
「おれは頭がいい、坊主なんか最低だ。」
 とか、剃髪もせずに死んだ。だんごむしに戻る。
 なめくじにかかって坊主のせがれに生まれ、永平寺でぶんなぐられて引篭もりさんになる、法要博士であって、豆腐が好きで痛風になって、人の為にゃ屁もひらぬというんで、やっぱり蛞蝓に戻った。
 みみずにかかって坊主に生まれたが、仁王さんに踏んずけられて天邪鬼になる、死んでみみずからかなへびになる。ばったにかかって坊主になって、薬の飲みすぎてやせ衰えて、死んで蛙になった、太りたかったんだな、けーろと鳴く。のみにかかって、煮えたか湧いたわからねー坊主になる、死んでしらみになった。ただの土饅頭にかかっていっとき坊主のふりして土饅頭。
 もぐらにかかって坐禅をする坊主になった、野狐禅をしておかしくなって死ぬ、生まれ変わって人間になったかというと、化けの皮がはがれてなまずになった。
 せっかく達磨さんでもろくでもないものはどーにもならん。
 らご石を退けておこう。

2011年02月08日 08:15 せっちゃん ショートショート・餅
先先住は餅喉につまらせて死んだ、八六歳だった、わしもそのうちあぶねーかな、虻もいねーば夏も小袖、あっちー餅喉につまらせるのは地獄もえーとこやな、罰当たりすっか。発心寺は檀家が二五0ほどあって、正月には一戸あてお供え餅が上がる、ぐえーぶったまげるほどに並ぶ。三元日過ぎると寒行托鉢だ、ほーほーと呼ばわって雪の小浜市内をねり行く、その間飯台なし、水にひたした餅に押し切りがあって、腹へったねずみは餅引いて行って食えというわけ、三度三度餅って、寒行のあとにお施餓鬼が上がって、何人かはご馳走が食える、一年分の蛋白質を食い溜めって、どーもこれありがたがっているうちに、もー勘弁してくれとなる、だめです雪担さんご指名です、典座が云う、托鉢姿で行って、お櫃空にしてご馳走食って徳利一本飲んで、雪の辺を素草鞋履いて帰る。
 餅のほうがいいかっていうと、しいたけと豚肉買ってうんめー雑煮たって、焼餅たってそーは続かん、カビが生える、こそぎ落として食うたなんしろまんず。
 お盆には一戸当たりそーめんが上がる、八月から九月いっぱいそーめんだ、こっちのほうはけっこう食える、おかげでそーめん大好き人間になった。
 お寺でつく餅もある、二八日雲水は二時起きしてつく、六時には堂頭和尚出て、般若心経とともに寿餅をつく、あっちこっちへ配る。雲水は紅白の折り紙して師匠に送る、すると万札一枚ぐらいにはなるって、わしは一文も送ったことねーやいひひ、やろーども目剥いているぞ。
 うちでも餅はついた、もちつき器になってから三十年、この器械しまいまで壊れなかった、よくできている、餅ついて大根下ろしの辛味餅にあんころもちに、なんたってこいつはうんまかった、そっくり買うよーになってもー食えなくなった。
 お供えの大が二つ小が十四、そのほか切り餅して、なんとか腹へ入ってたのに、お供え送っていたいとこはとこからいらんて云って来た、子供でっかくなっって見向きもしないってさ。
 まだでっかいお供え水餅になってる、切り餅はカビ吹いて駄目になる、わしは毎日食わされ。
 喉へつっかえて死ぬのははーてさ。

2011年02月09日 08:17 せっちゃん ショートショート・戦車
 戦車に乗ってみてーって云ったらクーラーねえんだってさ、蓋着せられたら炎熱地獄、三人じゃなくって五人乗るんだっけか、司令が右の男蹴っ飛ばすと主砲ぶっぱなして、左の男蹴っ飛ばすと機関銃で、待てよそーではなくって、右行け左行けだっけか、ソ連戦車は高さ一メートル二十でなぜかそーなっていて、司令ロシア人なら砲手コーカサスで機関銃がチェチェンのって、多民族国家の入れ子細工が、てんで仲悪くってアフガン戦争敗れたんとさ。どだい大国ってのどーしよーもねー、アメリカのベトナムといいイラク戦といい、無茶苦茶の筋書きもなんにもねーな、軍需産業あぶくぜにってんで、なんしろそれだけ、ロシアはその上にお頭なしってので、ばーらしーには一国を荒廃に曝す、なんたるこっちゃ大国主義のしつけてあほらしーや、次いで中国が名乗りを上げる。
 二十一世紀はどーなる、借金大国八百長日本の三分割っての、坊主はいらねーミンチにしてまぐろの餌、ではその前に自衛隊の戦車盗んでトーチョーさ行くか、警察なんかじゃ歯が立たねーっていうし、交通渋滞もなんの車せんべいにして破壊めったら、傍若無人天馬空を行くって、ちっとがかりエレガンスに欠ける、どかん戦車砲でどこを狙うかって、国会議事堂ぶっつぶしても革命にならねーとさ。自衛隊って革命起こす気ねーんかな、日本の逼塞はヒットラーの出番だ、北朝鮮に水爆の返礼して男を挙げて、中国海軍撃滅、まだ日本の方が実力は上だって、はーてねそりゃ一ヶ月前のこったっけか、先制攻撃パールハーバー、まずもって歯舞色丹を占領、日の丸万歳の手立ては八通りぐれーはあらあな。
 日本戦車はノモンハン事件以来ブリキの棺桶って、それどーなってるんだろ、三菱戦車は世界の最優秀だってのは、今はもーお古い話なんかな。
 戦車は戦闘ヘリの格好の餌食だな、ミサイル引っ張って行こう。
 日本独自の武器ってねーんかな、外交ゼロのお国柄はアメリカの云いなり、いじくりゃブラックボックスが爆発、わっはっは田中角栄もやられたっけか、日本の官僚は能無しのレッテル、太平洋戦争も参謀のいいくら加減でぼろくそで負け、こりゃなんとかなんねーんか。
 さーて戦車に乗って新潟から出発、まずどっかーん万札確保して、美人おねーちゃんをアクセサリーに添えて驀進、めざすはーてどこへ行きゃ褒められるんだ、だれか教えてくれ。

2011年02月10日 07:13 せっちゃん しょーとしょーと・雨降る
夏の日は棗の花に咲き満ちて雨降り我れはここに宿仮る
 ちらちら白いっきりで目立たない、青空に咲いているのに雨が降ったらこんな歌ができた、柿の花も白いだけで流行らない、柿の花の咲くころはけっこー忙しい、春先の大掃除が一段落して、お斎に出すぜんまいを取って、ほだ木を伐ってしいたけを植えてと、めだたないのが好きで歌にして、はーてそいつ忘れてしまった。
蒲原の沖つ興野にはざ木立つ雨降るさへがなんぞわぶしき
 はざ木はたまぎという木で、田んぼわきに並べて植えて、竿をさしわたして刈り取った稲を干す、越後ならではの発明で、なーるほどって感心したら、意外に風に弱く、茂ると伐ってつまりは手間もかかる、岩室温泉に行くはざ木街道に、観光で残ってるだけのまるっきりなくなった。蒲原平野は一町田んぼの行列、五町田んぼもある、マシーンが消えたら、植えるも刈るもうんざりする、早乙女が歌に囃して田植えなんてわけにはいかねーな。
「いやひこのおのれ神さひ白雲の棚引く日すら小雨そほ降る」
 という万葉の歌があって、なんしろ越後は雨の降る風情だな、弥彦のとなりは角田山で、浜には溶岩が流れ込んだ跡、東大の地震研究所もたしかあったな、若しや霧島とタイアップしてどっかーん火山灰、こいつは雪よりも始末悪いや。
三界の花のあしたをいやひこのおのれ神さひ雨もよひする
 万葉を本歌取りして、われながら傑作だってんで投稿したら、見向きもされなかったな、生活かかってるうやむやってんでなけりゃ駄目だとさ、そりゃ出る幕ねーや。
四方より花吹き入れて信濃河寄せあふ波の行方知らずも
 二つ対にして、死んじまった女書家に書いてもらって飾ってある。
 見向きもされん死ぬまでな。
柳生の中なる夕陽つれなくも信濃河の辺春なほ浅き

2011年02月11日 07:06 せっちゃん ショートショート・二月
接心初日は猛吹雪、だれか行いのわりーやつがいるんかな、坐りに来ねーのがわりーんだ、馴れてねーと風邪引くって、引き込んで寝てるのもいる、まてよあれ別病かな。若いころは坐ると風邪治ったんにさ、年寄ると坐ってる間だけ治る、あったかくして寝てるのが一番てのはこのごろようやく知った。
雪降れば何をし見なむかもめ鳥海なも荒れてどんでんの山
 角田浜から佐渡の金北山かな真っ白く見える、海は荒海向こうは佐渡よの、佐渡ヶ島の最高峰はどんでん山だと思って作った歌、ちがうってうるさばっさのとりちゃんに云われた、波荒れてどんでんで合うのにさわっはっは。
 二月には地吹雪が吹いてまっしろけのホワイトアウト、行くも地獄停まるも地獄で、にっちもさっちも行かん、このごろはあんまりひでーの吹かんな。
風吹けば散らへる雪のむたにしてあはあは行かめこれの日長を
 三月彼岸にはお寺の会計報告などあって忙しいが、それまではなーんにもなくってやたら日が過ぎて行く、二月の接心は同窓会みたいに、弟子どもよったくって坐って、ゼニ出し合って寺泊行ってあんこう買って来てあんこう鍋したりした、そーさな二月は葬式でもなきゃひまだった、このごろは接心客も来てなんしろまー毛布ひっかむって坐ってらーな。
 わしの得意技はやきとりと鮨だった、やきとりは二十年来のたれが冷蔵庫に入ったまんま、鮨ねた釣ってきちゃ握ってたけどもとんと握らず、ばくだんてのねたの余りにうにとレタス入れて巻く、けっこー評判よかったけんだどな。
 うははわしゃなんでも遊びにしちまう、弟子ども今でもぶーすか云う、麻雀させられ釣りさせられきのこ取りはきつかった、えーとなんだかんだむにゃむにゃ。
恋ほしくば荒磯わたらへさぎつ鳥風に問へるはその雪のむた
 海辺から50キロはあるがさぎがよくやって来る、雪消え田んぼ突っついたり、青鷺は心字池にのっそり立って鯉の子狙う、五位鷺がよたって助けを求めてきて、残念ながら方策なし、ついさっきも迷い鳥が軒先を行く。
滝の門のまふらまふらに雪は降り押し照る月は堂のしとみも

2011年02月12日 07:04 せっちゃん ショートショート・かさみんご
 国道117号線は十日町を通って栄村から飯山へ入り、18号線は直江津から妙高のふもとを通って長野市に入る、117号は尻切れとんぼで、りんご畑をあっちへ曲がりこっちへ曲がり18号になる、りんごはもぎ取ってただで食ったけど、大人なるとそーは行かねーみたい、まーるで道っぱたにたわわになってるのにさ、晩秋取り残しのまんま木になってるのは逸品だ、ばっさども籠に取り込んでいた、売ってくれって千円札出したら、こりゃぶすりんごだで売り物にならん売らんという、四つくれた、たしかにぶすだけどそのうんまいことは。
 長野市になるところに、カサミンゴというぺんぺん草の生えたおんぼろ屋根がある、ドイツ料理を出す、ソーセージとお菓子がうまい、偶然に入ってそれから何度か行った、ソーセージは何種もあって、サラミの生のがあったり、ハムと同じ大きさのがあったり、こやつ牛か象の腸詰めかな、ハーブやらなんだら入っていて絶品。ヨーロッパ人好みのお菓子はでっかい、へた食うと腹いっぱいになる、おねーちゃんども大喜び。
 正月用にって送ってもらったら、日になっても来ない、どーしたって文句云ったらてっちゃんが受け取って冷蔵庫にしまい込む、えーおっほん謝る。
 接心終わったら行こう、しゅうしんは浜松、新人おねーちゃんが山梨、かめちゃんが愛媛からスノー履いてワゴンで来た、美緒ちゃん調布はどっか駅で降ろして、あと順繰り送り届けろ、いいよってさあっはっは、あいつ今度とっつかまったら免停かな。わしも車出してどっか一泊して、和紙とかしぐるみと買ってドライブふーらりふーら帰ろう。もーじきお寺お払い箱だから、ふーてんの虎さん見習い。
 年金があるでって、消費税20%だインフレとか食えなくなっか、托鉢するには車から鉢の子ってわけにゃ行かん、お経読むのもめんどくせーし、うっひなるよーにしかならーな、脳天遊ぶことっきゃないきりぎりす。
 かしぐるみはもー売ってねーか、野沢温泉にあったけど、駐車場に四百円取られてってのたけーよ、公浴場みてーのあるけど、なんであんなに熱湯なんだ、真っ赤になってべろーり皮剥けるぜ。和紙はさんざくた買って書きそぼくって、さしもの美緒ちゃんに笑われた。

2011年02月13日 07:13 せっちゃん ショートショート・きべりたては
 層雲峡にナビ入れるとどうしてか間違って、人っ子一人いない山中に案内する、ナビ子と仲が悪いのは穴井で、二度やって二度とも違う、一度は日が暮れて真っ暗けで弱った、そー云えば白鳥で有名な瓢湖を入れたら、裏側に案内する、たしかに瓢湖がこれじゃど-もならんなん、表へ行くのに一苦労。層雲峡山のホテルのおっさんに、釣れるとこねーかと聞いたら、ここぞと案内してくれた、いらくさの生えた崖っぷち下りて手足ぴりぴり、でも釣れるんだって急流の川へ入って、四人してなーんか命危ないめして、フライ振ったったらかすっともかすらぬ、ひぐまの骨があった、一頭分完全に残る、されこうべとあばら二本と拾って帰って来た、ナビも人もあてにならん。戦利品を雲水部屋に飾ってと思ったら、穴井のやつ仲間の仏壇屋にくれちまった、きしょーめもったいなー、なんだってんだロリコンのくせして。
 登別温泉にひぐまの牧場とアイヌ小屋とあって、そこで竹笛を買った、竹の筒に絃が張ってあって、モンゴルのえーとなんていった二重音が出る、不思議な楽器だ、穴井が吹いてもかすっともしないのをアイヌ乙女が吹き鳴らす、吹けるようにしてと思ったら、穴井がだれかにやっちまった、アイヌ乙女えらく美だったんにさ。
 ひぐまの牧場は、檻のトンネルに餌をやる仕掛けがあって、のおっとひぐまが出る、そのまーどでっかいことは、金石先生に聞くと、
「逃げたら追ってきます、向って行けばなんとかなる、向こうも人間がこわいんです。」
 って、どーやってこんなのに向かうんだ、一撃で吹っ飛ぶ、白熊が二メートル三0センチ、ひぐまが二メートル二0センチ、突っ立ち上がった剥製がある、なんしろ出会わんこったな。餌を取ったりする中にふてくされて寝てるのがいる、アイヌ神威のそーさなこれが本当だな、人に飼いならされる品じゃねーやさ。
 石狩川で、くじゃくちょうときべりたてはの美しいったら美しいのを見た、九月だ、本州のよりは一段と冴える、手塩川沿いに宗谷岬まで行った、蝶はいなかった、畑もなくなって牧場と原野になる、宗谷岬の丘は真っ黒い牛がいて、夕時かってに牧舎に帰って行く。
 サハリンを見て感激して、終戦の樺太を知っているんだ、稚内の居酒屋で飲んだ、おねーちゃんもよし魚や蟹海がぞっこん、天呑がいっしょだった、叩き上げ大尉どの、ただもんじゃねーな首尾よくお寺持ってさ、穴井が立職にかーちゃん連れてきたといって怒ってた、美緒ちゃんのすてきな満艦飾にもお冠わっはっは。

2011年02月14日 06:43 せっちゃん ショートショート・無心
 無無明亦無無明尽、乃至無老死亦無老死尽。接心提唱は般若心経でした、無明なく無明の尽きることもないとは、これ仏教です、他は宗教とは云わぬ外道ですが、云うことを聞かないのはポアしろといってサリン撒くのは、オームに限らず、コーランか剣かってんで皆殺しにする、旧教はいかんといって大量殺戮のオリバークロムウエルや、旧教がわはバーソロミューの大虐殺だったり、十字軍だ魔女裁判だ、行き過ぎがあった謝りますでけりが、キリスト教そのものが誤りだ、ヨーロッパは無明の文明という、ヨーロッパで生まれた共産主義も、宗教すなわち邪教のカリかチュアだ、軍隊と密告と拷問の理想は金正日という、漫画にしちゃ人騒がせな、ポルポト派みたいに子供に人殺しをさせたりいったいこりゃなんだ。
 一日働かざれば一日食うべからずと旗立てて、鍬を隠されたらそのまんま餓死したという百丈慧海を、たとい共産主義の理想とする、そりゃまったく違う、どこが違うかつぶさに見よ、理想と現実です、思想の酒に酔いしれる、理想とは殺人道具です、現実はただこれ、鯨殺すなの野卑野蛮は、これも一心教のカリカチュアですか、ではなんでそんな馬鹿に気がつかないのだ。
 無明の尽きることもなし、妄想というんでしょう、妄想という自分の発明なんかないんです、妄想=世間ですか、妄想のまんまに生活しながら、歯の中の舌のように、時には咬みつかれようが自由自在、傷つかず損なわれず活発発地です、ではそのように坐禅して下さい、一念起こってそれにとっつけば回互と不回互と回して更にあいわたる、際限もなくやっていたりする、ぽっと出てぽっと消えるところを手付かずです、草を引っこ抜いたら石の上に置けと、枯れるにまかす。そんなまあ手続きはいらんです、あるとき接心に妄想煩瑣、よしこれ退治しようと思えば思うほど出る、四日間というもの真っ黒けになってやっていた、体力の限界ギブアップと、ぱーっと消えてなんにもなくなる、それっこそなんにもないんです、脳死かと思ったらそーではない、一念起こっては消えているんです、それに手を付けない、心は一つです、一つが一つを観察すること不可能を知る、無心これ、無心とは心の無いことです。

2011年02月17日 10:17 せっちゃん ショートショート・長久保
 信州も雪が降ってそれもけっこう降って、三0センチは積もったかな、こっちはスノー履いて雪馴れしてる、どーってことないけど、朝は凍ってウオシャー液が出なかった、不慣れの横滑りに出会ったら一巻の終わりって、次の日はどっかん晴れて、そーだった雪の明日は洗濯だって聞いたっけか、越後は雪のあしたは雪ってわけの、わっはっはこりゃ久しぶり。
 牧の尻の道祖神は藁人形でこさえて、ぬぼーとでっかいとぼけ面、毎年正月十一日に燃やして、新しくこさえる、雪の中を見に行った、美緒ちゃんご対面、ご先祖様にご挨拶だって並んで記念撮影、いけると思ったら、なーんか美緒ちゃんも普通の女の子、牧の尻のご先祖さまは大間抜け。
 カメに怒ってたから、そりゃもーれっきとした女の子だな。カメは頭おかしくなった、頭おかしくなるのいっぱいいる、ほっとけと臨済系のおっさんが云う、でもな、参禅でおかしくなるってのがおかしーのさ、白隠禅師の臨済がおかしーのだ。間違いってことをそろっと知るべきだ、仏教とはなんの関係もない。自閉症人間をこさえるきり、悩タリンいじるとそりゃ狂うっきりないな、どーしよーもねえ。
 丸子町を過ぎて和紙工房のある武石に寄った、透き通った和紙があった、なかなかいい品だ、みみずのったくった字書いたら、一つ二つさまになったかな、100年後に一億円ってのもわっはっはこりゃ億劫。それから故郷長久保の宿へ行く。そーいえば雪も積もったっけな、橇を作ってすべるのに、疎開者のわしはへたくそで、すべりのよいのこさえる英雄がいた、花の木で作るんだって、花の木っての未だにわからん。田んぼでスケートもしたな、姉が転んで頭を打って、家へ帰るまで記憶喪失になって、弟と二人困ったっけ。
 姉の通った、今は高校になっている女学校があった、姉はパラシュートばかり作っていた、信州へ来たら英語も教えていた、たいへんだったって、しょーもない弟抱えてなにしろたいへんだった。タイムマシーンに乗って行って、足長おじさんやれたらと涙。
 物は取り返しがつかないのさ。
 坊主になったらほんとうを伝えるしかない、罰当たりの恩返しこれに過ぎたるはなし。
 厄介になった本陣、
「上の石合」
 を、復活する願いはー叶わぬな。

2011年02月19日 16:12 せっちゃん ショートショート・名なし
 東大寺の襖絵を描いた人はなんて云ったろ、老人ぼけですぐ忘れちまう、満開の桜とと蓮の花の絵だった、
願はくは花のもとにて春死なむそのきさらぎの望月のころ
 と、西行の歌が添えてあった、わしより年下ながいい面構えしている、一枚描くたって何年がかりか、無心にしてというどこまで無心かは知らぬが、名前を付すことなしという、むかし仏師の覚悟がある、なかんずくいい絵だった、今もこんな人がいて日本を支えているのさ、たった一人をよろしくよく保護すべし、他に大法はなし方便もなし。
 お寺の十三仏五尊仏は、葬式法事に施主家へ持って行って飾る、四十年稼がせて貰って洗濯に出した、さっぱりきれいに仕上がって表具屋の云うには、こんな代物は檀家に持って行かない、門外不出にしろという、たしかにすばらしいもので、仏師の名も付けず、凛呼として清々。
 だから代わり買って持ってけってかーちゃんが云う、おれの目の黒いうちは、いや住職の間は持って行く、人の死ににせものなし、わしもにせものじゃいかん、わっはっはかーちゃんそっぽ向く。
 衣も仏具もだらしなくへんてこれん、名前だけは書いたりさ、ふざけてるんだな、坊主が駄目になったらおしまい、無心になす、奉仕するという、真の生き甲斐をだれも忘れた、いいものなぞできっこない。
 大?を打ち出すのに聾唖になったという、その覚悟でこさえた?子が、ますます冴えたいい音を出す、三代四代わしが死んだって大丈夫。
 テレビにうつる人間もそこらへんのおっちゃんばっさも、失禁の涙に嘘百万だら、この国難に当たって議論ばっかり、なんという淋しい世の中。
 住んでいるのはどこだ、雪の中だ。明日は知れず今も知らず、雲や鳥や花や風や、信ずる信じない以前の、人も信ずる信じない以前の、たったひとかけら。
 幸せという言葉を知らない。

2011年02月20日 17:38 せっちゃん ショートショート・ドタキャンスキー
 交通事故に遭って三回も手術した、なんかしらねーけど食み出して来た女がぶっつかった、そりゃ向こうわりーで費用や補償や出るけど、えれーこっちゃ座るも歩くも飯食うも屁たれも、とんでもねーったらいやさもー人間最低の最悪。そりゃおたいへんなこって、ずらずら喋りまくることは二時間、母親のでっぷり太ったんは胆嚢取った、かーちゃんは胃潰瘍の手術した、三人揃って入院してそりゃもーおたいへんでもって、やっとこさ娑婆へ出た云々。なんてーんだろなあ悪因悪果、いやさ前世の因縁って、そんなこた知らんけどもどっかうなずけるから不思議だ。
 田舎のとっちゃんて喋り出したら際限もなく、なぜなんだろーなあほくさ、知識百万だらに、てめえの哲学も借り物で、なんたって世の中どーなってるかもその実は上の空。
 付き合いたくねえ早く帰れって。
 百人が百人めんどーくさ。
 さっさと死んでお布施になれ。
 なつかしい親しいってのない、真面目ってのもねーな、かたくなへんごってのはまだある、言葉の問題かも知らん、こだわりとか生き物とか行きますとかふれあいなんとかかーとか、日本語にはなかったへーんなの、心のひだまで揺さぶられて、借金大国の上に八百長相撲のレッテル貼られて、芯から腐れちまって回復不可能かな。
 デブチンスキー昇格してドタキャンスキー博士は、ナイーブな子供みたいなとこあって、ドタキャンしても人に好かれる、鬱病が大変で死ぬの生きるの、なつかしい日本人ご難の時代って、そんなことは一瞬もしてられん本人が先刻承知。
 一寸の光陰軽んずべからず、もったいないったら情けない、てめえなんかどーでもいー、死ぬほどの価値もないのさ。身を鴻毛の軽きに置けとこれは戦前の教え、人の命は地球よりも重いという戦後の自負が、どーしよ-もない腐れ世の中を生んだ。いーや物差しじゃない、自分を救う大難事業を成功させて下さい。
 心を求むるに不可得る、我れ汝を救い得たり。

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2011年02月21日 18:56 せっちゃん ショートショート・出っ歯のカメ
 いい天気になった、雪の中にも梅が咲くと思ったらまだか、雪かきわけて見に行くのも億劫だ、水戸の梅園には磐越からハイウェイをえんえん、一度行ったなすばらしかった、梅林にやきそばとなんか食ってたら風に吹き飛んだ、花びらん中で拾って食った。河原まで花が咲く、水戸光圀の三角屋敷は、およそ歴史っての興味がねーから、登って降りてけお仕舞い、歴史って覚えるはしから忘れる、受験には苦労した、まだ世界史のほうがよかった、戦争といがみあいの合間に妄想の花咲かせて右往左往のてんご盛り、腹壊してげろ吐きそーなやつ、今にますます過激だーな、馬鹿は死ななきゃなおらねーってさ、人類滅亡がたった一つの救いかな。
 理想的な時代の一つや二つあったかというと、タイの王様が仏陀に会いに行く800年ごろかな、執権北条氏が坐禅をする鎌倉のころかな、ギリシャローマを理想の世界たって、共産党に至るまであっちの理想は人殺しと、独裁金縛りの大騒ぎと革命と、そりゃ戦争だけが掃き掃除たって、なんとまーさ面白くもなんともねーや。
 世の中にそっぽ向いてホームレスがわしの理想は、こー年食っちゃなかなかやってらんねーな、乞食ってのは儲かるって、シャーロックホームズにも出てたな。良寛はあんまり儲かったって話聞かねーな、もっとも筆だ紙だ書籍だ無駄遣い、東大寺の襖絵ってさいったいいくらかかったんだろ、宗門のドル箱豊川稲荷や、海老蔵の成田山だ明治神宮だの、濡れ手で粟の乞食商売だな、ほいさがんばろーわっはっは四百憶ってちょろいもんだ、はてな年金も溜まっとらんぞなぜだ、前生の因縁だ、わしはよっぽど悪いことしたんだ、いやそいつは今生だでな、生まれ変わったらめでたくホームレス、三十で野垂れ死に、今もどえれ-頭わりーけど、カメみたいん哀れにならんとさ、あいつ参禅は物真似としか覚えない、なんでだ、肝心の心をお留守にして物真似らしくの坐禅見性、なんてーことを白隠どもはしたんだ、大応が泣くぜ、一休がなんという、道元禅師が床下三尺掘る、ほんに仏をお祭り騒ぎにしやがって。坊主という格好付けの、筆のすさびに掛け軸書いたり、京都は儲かる、金銀もって大財閥が脱税で挙げられた、はーてなそんなことあるんか。

2011年02月22日 20:15 せっちゃん ショートショート・白鳥
六十なる芦辺を枯れて信濃川呼び交はしつつ白鳥わたる
 六十はむそじと読ませて白鳥はおおとり、芦辺のたまりに鯉がいて一匹二匹釣っていたら、とつぜんふわーっと明るくなって、くわあ羽音がして何十羽もの白鳥が行く。
 六十になっていーこたなんにもねえ、年金貰ってそれからが青春だって、きしょーめさろくでもねーことばかり、七十四になったら坐るっきゃねーってことがわっはっは少うしわかったか、でもまあこの冬は寒かった、骨身に堪えるってなふーの、ちっとぬるんだら風邪引いた、去年の夏は暑さで伸びたし、暑さ寒さのねー国行っておねーちゃんと遊ぼうか、蓮の台なんてのはめんどーだ、天女さまってあれあるんかな、どーなんだろ問題だ、檀家の若い娘が死んで、死に化粧したら天女さまってなーるほどこんなんだって思った、たんねー病気ばっかのがさ、こりゃ美しいったら凛然、娑婆の妄想なんか触れもせず。
 ちえ、ニュージーランドの罰当たりが大地震だとさ、野蛮なシーゴジラどもがさ。
白鳥の越しの田浦をま悲しみ枯れしくなへに雪は降りつつ
 我れは歌えども破れかぶれ、青春は美はしどっ汚しが、とつぜんに終わりを告げる、幽霊になって、いやさ透明人間にもなれずの、おっちでつんぼのケロイドまみれ、ずいぶん長い間そんなんだったなわしは、はーてさついの絶唱白鳥の歌。
 みんな忘れちまった、姉が施設に入って脳天パアだってさ、弟はアルツハイマーで死んだ、こりゃたった一人が娑婆の世と縁切りは、清々そりゃげっつばたのまーさいつまで。
たが子らかそにみまかりし冬枯れの柏樹がもと地蔵菩薩も
 いい天気になってドライブした、海っぱたはすっかり雪が消えた、へんごなおっさんがリック担いで雪割り桜の盗掘に行く、カメラ覗き込んでいるじっさどもや、なんかしねーと自然に接することができねー、貧しさはゼニがかかるってわけだ、世界中からむしられて哀れな日本人、わしはわしだけよけりゃいーってやつでな。
雪降れば何をし見なむかもめ鳥海なも荒れてどんでんの山
金北山がくっきり見えた。

2011年02月23日 15:43 せっちゃん ショートショート・釜茹で
 かーちゃんがテレビ体操やってるへーいちったあ元気になったか、いい天気だでお日様に当たって来いったら、のこのこ出て行ってお地蔵さまの前で転んだ、雪溶け水が凍っていたんだ、手を突いて次第に痛む、医者につれてけってーから、手数のかかるお人だなってんで、つれて行ったら骨にひびが入った、全治二週間だとさ。
 罰が当たったってさ、わしに当たるのが回りに当たるんだそーだで、いっひっひ。年寄りは転ぶとおおごとになる、わしも脛打ってかさぶたんなって半年、だにが巣食ってるんだぞ、薬つけても治らねー不潔の証拠だって、そーいえば万年床してさっぱり掃除もせん、ほこり高き男、くそお床の中の男ってんだ、よって医者に行くの大嫌い。
 按配悪くなったら死ぬ覚悟ミイラになって月山行きってんで、雪ん中歩いてみたりドライブしたり、世の中おねーちゃんどもあんまり魅力ねーか、ふーんむかし美人はどーした、梅は咲いたか桜はまだかいなやってる。今日も医者へ送って行く。
湯田中は父の浸かれる信濃路の年へて我れも妹とし問ふれ
 湯田中はゆだなかって読むんだとさ、外人に人気があってけっこう流行っている、下っぱ役人だった親父が、時には上げられて豚箱入ってみたり、温泉遊びなんてあのころお役人か、成金だったな、うっふーずいぶん宿があって、行き当たりばったり泊めてくれじろじろまーいーよとか、ビジネスホテルにして食いに行ったほうがまし、でもさ温泉はのんびり。脛の傷治らないか、きんかんつけたら荒れ広がる、ちっともよくならねー。
きさらぎの雪かきわけて湯の煙松の山なむ春遠みかも
 松之山は十日町になって、泊まったらどかっと大雪が降る、そこらじゅうからブルが湧き出して、整然と掻いて行く、見事なものだった、西会津や鳥取に助けに行ってやれ、あれしきの雪じゃびくともしねーがって、松之山は熱湯、もともと烏の行水が10分あて二度入っておしまい。
 骨にひびが入ったかーちゃんと、脛に傷持つわしに効く温泉はと、ばーかめあの世へ行ったほうが早いとさ、地獄の釜茹で。

2011年02月24日 19:44 せっちゃん ショートショート・パパゲーノ
初秋はパパゲーノの松の風阿修羅の夏はいずこへ行きし
 この歌の意味わかるかってさ、へーい魔笛の鳥刺しアリア、エーリッヒクンツが絶品だった、申し遅れました、モーツアルトのオペラ魔笛です、エーリッヒクンツはカラヤン初演の魔笛に出ていてー、わしの話はかくのごとくのひとりよがり、てめーさえよけりゃいいって宗教はさっぱり流行らねーや。
 カラヤン初演はミーハーんとこがよくって、二度めはお墓に入ったゾンビーみたいの、カラヤン初期のモーツアルトは、聞くに聞けない自我流で、ヨーロッパてのはなんでこーなんだって、でもさ1十八歳のころカラヤン魔笛にしびれて、学校丸さぼり親から勘当されて、ゼニなしなんにもならずは出家して坊主暮らし。
 坊主だけはお経さえ読めりゃ食える、でもってはた迷惑は同じ。にっくきモーツアルトめ、シェークスピアもあるでよ、ドストエフスキーは地下室の手記っての読んで、罪と罰からカラマーゾフまで四回あて読んで、うわっはっはあいつも相当にっくき。法華経は良寛提唱がはじめて、平家納経を安芸の宮島で見て、なんとなく読めるんで感激した、すんばらしい字だ、ちなみにわし短冊を千枚、毎日書き直してどーやら国宝級だっても、かーちゃんはそっぽ向く、弟子まで蹴っ飛ばして歩くなぜだ。
 うふー小蘭ていう足んない女の子の書く、般若心経えーな。すんでは師と仰ぐか。
 あさぎまだらの初秋、この蝶はおんぼろになって海をわたる、信州の高原は羽化したばっかりの、ことさらに美しい、がきのころ手がふるえて取り逃がし、ネットのふちに叩くと、空を高ーく舞い上がる。あさぎまだらに魔笛を思い出すなぜかな、わしのかってだろ。
華厳なる滝に投ぜし青春のパパゲーノはむくろもなしや
 わしはたといまじに勉強したって出家の他なく、どっぱずれは前生の因縁、そーゆーろくでもねーのいねーかな、しゅーしんとこの接心あとに、君が代歌った若いのいたな、あの馬鹿さ加減が若しやいけるかな。
 坐っていてなんになるって、ついになんにもならねーのを知る、きれいさっぱりなくなって、虚空が虚空を坐るのさ、楽ちんの百万倍楽。
 よってかくの如くの阿呆を云って、わっはっはなんいもならねー。

2011年02月26日 08:55 せっちゃん ショートショート・脱する
五百生野狐身を脱し蓮す花思んみれば夕映えすらむ
 自分という生死の形骸を脱する、だれあってできるはずがなんで難しい、棺桶に足を突っ込んで、おんぼろしわくちゃにしがみつく、わっはっはそれが面白いってのが人間だってさ、でなきゃ儲からねえってよ、保険屋みてー悪たれやって、次の世はがさごそごきぶり、その次はへっぴりむし、その次はっウイルスになって癌細胞になって、繰り返してまたもや人の形になる、即ち人間野狐身強欲の末にだってさ。
 ヨーロッパは際限もなく、カダフィ―大佐も一00年前の一000年前のって何十人もいらーな、同じことの繰り返しを、いくらうんざりしても脱すること不可能、なんてー哀れなどめくら。
 わんさかどももまったく同じ、脱するって考えがない、お為ごかしと殺し文句の、宗教だ共産主義だよれよれ、どっかでごっそり儲かる仕組みだ、宝くじ買っても当たらねーわけだ。
 買わなきゃ当たらねーって、うっさい。
 明慧上人が小寺の副住職になるって、年賀状出したら、副住職なんて云った覚えはない、寝袋と衣だけでやって来い雲水だという、坊主なんぞ相手にすりゃろくなことはない、小寺を私して貧相な亡者めが、沢木弘道門下で世の為人の為という、らちあかん止めとけったら、えー止めましたってさばさばしてらあ、どーすんだ、なになんとかなります。
 この教区にも跡継ぎねーのが二ヶ寺ある、兼務でがき追い出した寺が一つ、どーにもらちあかん、沢木弘道は見せるための坐禅という、おかしな坐禅してお布施になったのいた、宗門の犠牲だな、
「正法眼蔵のどこにも悟れとは書いてない。」
 と云って、らごら世界して仏教を擲った。みんな仲良くてんぷら坊主、越後坊主のありがたやも始末にわりーけど、なんとかしよう。
人は去り人は来たりて四天王門うっそりかんと青鷺の舞ふ

2011年02月26日 20:24 せっちゃん ショートショート・ぼんくら
 森を伐り尽くして滅んだイースター島とか、アンデスのだっけ12世紀の文明とか、なるほどごもっともの廃墟を見て、歴史に学べという、人間は恐竜と違って、歴史に学ぶことが出来るんだって、未来予報のなんとかダイアモンド博士が云った、まじな面して日本学者がうなずく、人間て歴史に学ぶことってあったんかな。
 歴史にお茶を濁して、ぜーんぜん同じことの繰り返し、ださくするっきゃねえって気するけんど、維新の志士が出る、勝海舟の、
「人は時代が要求する。」
 と云う、はーてなだからどーだってんじゃなくって、民主主義というんなら、民主主義を覚えたらいーぜ、議論だ意見だ反対だ、目下の急を知らん振りのさ、若しや歴史なし、まっさらだったらこんなどあほだれもしねーがな。
 ダイアモンド博士の、
「51%ホープさん。」
 だけなぜか感心する、でもやっぱり巨大惑星衝突のほうが、人類にとって救いかな、人間滅びたって地球は滅びない、いいことしいのヨーロッパは、いいことしいの絶望しか生み出さない、なぜなんだべさってとこ反省猿しれって、思いのほかの不思議をさ。
 なつかしの小学校唱歌していた、もーひとつはっきりしない、音大の生徒でも呼ばって来いったら、来ているってさ、プロだわしとは違うって、さっぱり満足しない、面白くもなんともねーかな。あんれホール一杯の客はじっさばっさば、若いのは一人もいねーや。
 伊藤京子が最後だったって、そんけーすべきかーちゃんが云った、グルベローバがぞっこん歌った、百年に一人だって、フランスの児童合唱団がさくらさくらから日本の歌歌って涙が流れる。
 追憶以外に日本から歌が消えた。
 文明の復活って、森を伐り尽くす以外に何かあるんだって、もう滅んでしまってたり。
 坊主が駄目なら仏教はおしまい、心が失せれば人間はおしまい。
 でもさ空も雲も花も月もある、別れを告げる鮮麗さ。

2011年02月27日 16:40 せっちゃん ショートショート・わかさぎ
 氷筍というのをたったいっぺん見たことがある、秋田にいたころだ、どっか穴蔵ににょきにょき生えていた、珍しいもんだとがきにも思えた、これを人工的に作ってスケートリンクに貼るんだという、氷の質がいーんだとさ、二メートルにも発達して数千本も生える穴蔵をテレビでやっていた、北海道零下二十度の道南だってさ、なーるほどな。
 ダイヤモンドダストと光柱というのをいっぺん見てみたい、オーロラもさ、冥土の土産にはさみーかな、なんせさみーのはかなわん、年だな、昨夜寒くって寝れなかった、二十年使っていた電気毛布がパアになったんだ、新しいの買ってきてもらった、替えようとしたらソケットが抜けてた、目盛りランプは点いているのに、二十年ものは健在だった、ありがたやーのなんまんだぶつ、これじゃホームレスはとっても駄目だな。
 新品は敷き毛布だった、今度の冬は上下二枚使ってー
猫魔なる冬の宿りを摩訶不思議月押し照りてぶなの林を
 猫魔ホテルというのが裏磐梯にあって、名前がおかしいから泊まった、猫魔という山があるらしい、有料道路があって春から秋まで、ひばの森あり浄土ヶ原という火山地帯あり、千五百円とお高いけんどさ。雪が二メートルも積もってぶなの林、月が出てなーんか猫魔ってふうの、鹿児島から高校生がスキーに来ていた、わんさかして楽しい男女共学の修学旅行。
この湖にわかさぎ釣らむ人をかも道は閉ざして雪降りしきる
 桧原湖は色とりどりのテントでわかさぎを釣り、雪が降って道を閉ざす、それだけで詩になる。辺りの山に、侍軍団が自決したという跡を辿って行ったら、標の杭が一本、紅葉のころだったな、すべって転んで泥だらけした。
 会津は、新潟県は小学校の修学旅行だな、刀の玩具や赤べこやお父さんお母さんて書いた茶碗のお土産なんぞ。
 悲惨な戦争の鶴賀城には、荒城の月の歌碑がある、若しやここだったんか、庭園に茶室があった。
荒城の月とは聞こえうら悲したれか命の茶を喫し去る

2011年02月28日 20:05 せっちゃん しょーとしょーと・白鳥
京大同志社と早稲田だっけか、あーゆーのなんてーんだろケータイカンニングってのあっさり出来るんかな、皮切りしたらもーうっふう広がるばかり、いい按配だ、受験てのもーちっと考えろってんだ、がり勉して記憶して判断力まで人任せ、お役人と能無し参謀しか作らねー、借金大国八百長相撲のさ、白州次郎じゃねーがオックスフォードじゃ零点、誰一人真似のできねー答案てのどーだ、学校ごっこの先公どももしゅんとするぜ、ちったあましなことしれや、政治家もマスコミもへたな議論してらんなくなる、めでたし。
 海外支配者はてめー溜め込んでいざとなったらトンズラ、利己主義どものお決まりだな、徹底抗戦のカダフィのほうがまだ潔いや、天皇陛下はマッカーサーに自分はどーなってもいい、民を救えと恐れ多くもさ、さむらいだけじゃなくって日本人の切腹は、今生の責任を一身に背負う、ヨーロッパのだれもそんなんいねーや、邪教のせーさなつまらねー。山下大将にさんざんのめにあって、復讐だあってんで、颯爽とやって来たマッカーサーに、陛下は猫背のちんちくりん=真実とは何か。
 利己主義なんぞいらん、お受験人間でない、大学教育じゃどーにもならん、たくましい一筋縄じゃいかん、有能な人間育てろ、下士官教育と自閉症お役人、大衆におもねるほかねー政治家ども、マスコミというどーにもごったく、ふわーいうんざりだ、ヒットラーが出るぞほんきにさ。
 日本滅びねーには、難民をどんすか受け入れるっきゃねーか、宗教のごった煮も我慢してさ、ひとまず元気溌剌をわんさか、がきが死んでる日本じゃねーのをさ。
 おたまじゃくしもいもりの卵も、とつぜんなつかしーいったら鮮烈。
 包茎くされきんたま割礼、いやさマホメッドさまって狂人なんだろ、イエスさまってのはとんだ騙りだったな、今に見ていろぼくだってなんつー怨みつらみ宗教いらん、もとっこ王子様さ、人はもとっこ王様さ、でないと平和なんてありえないんだ。
 なんでまあはりつけ人間なんだ。
 白鳥を見に行って来た、田んぼの現れたところに群れる、落ち穂拾って食ってるんだな、
「おいどあほ。」
 って云うと、長い首回して、
「なんだどあほ。」
 ってさ。
 うっふー烏のほうが賢いかな、それともでっかい白鳥は別の能力があるんかな。


2019年06月02日