ショートショート13
2011年03月15日 14:57 せっちゃん ショートショート・猫の奥方1
猫の奥方
天下無双の豪傑、あべの金時は、猫を一匹飼っていた、その名はにゃーお。お館さまものすごーわる・もすによーるは、人を殺す、女はうばう、したい放題、そやつをあっさり退治した。
金時は指名手配、美しい奥方さまのよーろぴは、とっつかまえて、火責め水責めの拷問だってさ。せっかく豪傑を、人はだれも知らん顔、美しい奥方のほうが、恐ろしかった。
「村を出るよりないか。」
にゃーおの猫とのっそり歩く、そっちは剣呑、どーよ館の塀きわ。にゃーおは塀を乗り越えた、
「そうゆーわけかい。」
のっしりみっしり、美しい奥方の寝室。
「死ぬかいそれとも無罪放免。」
よーろぴは目を覚ます、刀を抜いて、あべの金時。
「さすがじゃな押し入るとは。」
美しい奥方は猫を招く、あんれなつかぬはずのにゃーおが、ごろごろ。
「曲者じゃ出会え。」
奥方は消えて猫が一匹。四方八方取り囲まれて、死に物狂いのあべの金時。どーにか抜けて山の中、人の通わぬけもの道、にゃーおの取った魚を食って、武者修行の旅へ。
きよいの村に花嫁行列が出る、三年にいっぺん、うら若い乙女が、鬼に嫁ぐ。そーしないと鬼が大暴れ、
「よしわしが代ってやろう。」
あべの金時は、花嫁姿。
「なんだあれは。」
人はにゃーおを指す、
「鬼のえさにするんだろーか。」
花嫁の輿は置き去り。鬼火がふわーり燃える、
「おっほう花嫁。」
鬼が云った、
「二人いるぞこっちがいい。」
猫のにゃーおをさらって行った、あとをつけてあべの金時、鬼のかたわらに、美しいよーろぴがいる。
「どーゆーこった。」
豪傑は切りつけた、鬼は平然、その目ん玉を、猫がひっかいた。
「ぐわーお。」
あべの金時鬼退治、その夜、美しい乙女がしのんで来た。
「命を救われたわたしは、あなたさまのもの。」
2011年03月16日 10:51 せっちゃん ショートショート・猫の奥方2
「下がりおろう。」
猫が云った。
「はあ。」
乙女はかしこまる。
「あなたさまのような、美しい奥方さまがおらえるとは。」
「猫きりいない。」
あべの金時がわめいたら、ほんに猫しかいなかった。
でもって旅をして行った。野越え山越え川がある、舟に乗ったら、わたし守が云った。
「この河にはうわばみが棲む。」
「そいつはどんな悪さする。」
「たいしたことはせんが、牛や馬をべろーり、たまには人も食う。」
「そいつはどんな代物だ。」
「たいていこんな代物だ。」
わたし守は、舟ごとうわばみになる。
「猫なんてのも好物でな。」
猫のにゃーおを飲み込んだ、かま首斬りゃ尻尾がどーん、すんでに死にそうになってあべの金時、
「水から出にゃだめだ。」
とつぜん川は真っ赤に染まる、
「おーほっほ。」
笑い声、うわばみの腹かっさいて、美しいよーろぴの手に剣、と思ったら猫のにゃーおがくわえていた。
「いするぎ神社のつるぎだ。」
村人が云った。
「きおいのよろずなる者が、二百年前に取って行った、よこしまにふるうと、けだものになる、ようまあ取り戻して下された。」
「女が振ると。」
声がした、
「美しいお方はさらに美しく。」
ふーんやっぱり猫きり、
「たたられている。」
「命を救ってやったのに。」
にゃーおの欠伸がそー聞こえ。
だんだん山の鼻つらに、盗人のとりでがあった。あっちを襲いこっちを襲い、人を殺して、火を放つ。
2011年03月17日 11:00 せっちゃん ショートショート・猫の奥方3
「退治しよう。」
「お一人ではとっても。」
村人が云う、加勢するかというと誰もいない。
「おれが行こう。」
大人よりたくましい子供が云った。その名を天童丸という、天童丸とあべの金時と、にゃーおの猫は、鼻つらの、盗人のとりでに向った。煙突の穴がある、猫のにゃーおが偵察に行く。
「猫でいいんでしょうか。」
「七三でまーな。」
帰って来た、
「強そうなのが三人、中くらいのが十二人、どーでもいーのが三十人。」
猫のにゃーおが云った。
「三十人を走らせる、強い三人を倒したら、あとは成り行きまかせ。」
「火を点ければいーのよ。」
「これは奥方さま。」
「ちがうお化けだ。」
「いい子だねえ気に入った。」
でもって猫のにゃーお。
「寝ている十二人に火矢を打ち込む。」
「はい奥方さま。」
「うるさいお化けめ。」
火矢を打ち込んで、あふれ出た十二人をなぎ倒す。天童丸とあべの金時の太刀風に、三十人は泣き喚いて逃げ出す、強い三人と立ち会った。あべの金時は二人の首をはね、天童丸は一人を倒す。
奪われた財と女たちを連れて、村に凱旋。
「どーよ村へ帰ろう。」
あべの金時は云った。
「骨折り損のくたびれもうけ。」
「そんなことはありません。」
「世のため人のため。」
天童丸が云った。
「強きをくじき弱きを助け、正義の旅にお供します。」
「おっほっほ、帰って行ったら拷問が待ってます。」
にゃーおが欠伸。
「天人のような奥方です。」
2011年03月18日 11:17 せっちゃん ショートショート・猫の奥方4
阿部の金時と天童丸とにゃーおは旅を続けた、強きをくじき弱きを助け、あっちやこっち、しんや城に高札が立つ。
「お姫さまにとっついた、化け物を退治したら、婿君にする。」
一行は乗り込んだ、
「豪傑あべの金時。」
「天童丸。」
「猫のにゃーお。」
猫が口を聞いたぞ、女の声のようであったが、化け物ではないか、とにかく夜を待った。
恐ろしい叫びが上がった。しんや城はふるえわななき、天井が張り裂けて、お姫さまの衣をまとった、九尾の狐が現れた。
太刀を引き抜いて、あべの金時は金縛り、にゃーおは総毛立つ、かろうじて天童丸が一太刀。
おさむらいは阿呆になり、女どもは狂う、化け物はさまよい歩く、そーして朝になった。
血が滴って行く。
天童丸とあべの金時と、猫のにゃーおはあとをつけた。北西に十里、やぶにぽっかり穴が開く。
「九尾の狐はこの中にいる。」
深くってなんにも見えぬ。
「飛び出すのを待とう。」
弓矢をつがえて待つ、夕方うわんと燃えて、真っ青なものが飛び出す。
二人の矢は二つともそけ。
「追い矢はだめだ。」
明け方迎え矢もそけ。
まっしろいひげの年寄りが来て云った。
「九尾の狐は千年を生きる、千年たった矢がいる。」
「そんなものがあるか。」
「もしや。」
天童丸が云った。
2011年03月19日 10:14 せっちゃん ショートショート・猫の奥方完
天道さまのはなくそと云って、三日歩いてそのあたり捜して、石の鏃を拾って来た、あべの金時と天道丸は、そいつを矢にとっつけて、明日を待つ。
一の矢はそけ、二の矢は足をかすめ、三の矢がお化け狐の、真っ赤な目に吸い込まれ。
「おひょーかんかん。」
雷鳴って化け物狐は倒れ、大地は九つに張り裂けた。
しいや城に帰ると、美しいお姫さまが目覚めて、にっこり天道丸を見てうなずく。
「婿君は天道丸。」
「ふんそーゆーことかよ。」
あべの金時。
「めでたし。」
でもってお城を挙げての、盛大な結婚式。
にゃーおの猫とあべの金時は、飲んだり食ったり。
「兵隊を貸してくれ。」
花婿どのに、あべの金時は云った。
「どーよ館に押し渡る。」
「うっふーあたしは手紙を、歓迎の準備。」
にゃーおの猫が云った。
「はいなんなりとも、美しい奥方さま。」
兵隊とあべの金時は、どうよ村に凱旋。あんれ奥方のよーろぴが出迎えた。
「うーむ化け物。」
「ここに手紙があります。」
奥方が読み上げる。
「しいやの兵は、お館殺しあべの金時を逮捕しろ。」
多勢に無勢、どーしよーばがんじがらめにとっつかまって、あべの金時は拷問台。
「夫を殺した罪は、えーとあたしと結婚したら許す。」
そやつがとんでもない拷問で、
「わ、わかった。」
めでたやどうよ館挙げての結婚式。
猫を飼ったが一生の不覚。
「なにか云いました。」
「いえなんにも。」
2011年03月20日 14:47 せっちゃん ショートショート・おろおろ
巨大地震と津波とまた原発と、古今未曾有の大事件は、まさに日本沈没この世の終わりと、右往左往大騒ぎは、それみたことかと云うのと、日本再生だと必死になるのと、なにしろてめーにできることするっきゃねえ。わしみてーじっさはなけなしはたくしかねーか、イチローみてーに一億円てわけにゃいかん。
ひでりの夏はおろおろ歩きって、あとは指くわえて見てるだけ。
同じに朝夕坐ること、たとい地球破裂してもお釈迦さまの大法はある、たったこれきり。
現実にさからわずていい、ますます長長出ならしめ、だれかれに付与す、他にはなんにもなく。
共産中国の唯一の取り柄は、ダライラマを世に押し出したことだ、観音さまの生まれ変わりだろーが、なにしろ真実の教えを示す。
人ものみなのありようこれ。
振りかえりみるのに、日本の坊主どもは、仏教を足蹴にし達磨さんに毒を盛りして、はては宗門を滅ぼす。世は仏教を忘れ坊主をうさんくさく、当然だが真はここにしかない。
巨大地震直指人身見性成仏と、あまりにも悲惨大事件、復興するにどれほどかかるか、はたして復興できるのか、全世界が日本を指し示す、坊主のはしっくれは肝に銘ずること、もしや爪から先の責任も取れねば、そりゃ思い知るこったな。
一人半分心の復活を試みる、なんとかなりそーにも見えて、まるっきり不確かだ。
雪の辺にまんさくが咲く。
おおたかが庭に飛んできた、とんびに似ているが、そばへ来ると悠然大きいし、猛禽の風格だ。
そんなものいないっていうのを、中学の女先生がいると云った、ほんとうにいた、彼女はさんしょううおや春蝉や生物にくわしい。
おおたかが舞い行く、地震なんかどこ吹く風。
生き甲斐が舞い行く。
わっはっはホームレスだって生きて行くのさ。
2011年03月21日 11:33 せっちゃん ショートショート・お彼岸
今日は彼岸の中日、お彼岸法要とうちでは護持会年次総会がある、能無し坊主はせがれに代譲り、たいてーのこた耳聞こえないなんまんだぶ任せたってやつ、うらさむい雨が降る、暑さ寒さも彼岸までっていうが、こっちの彼岸は、猛吹雪でだれもこなかったり、たいていぽっかり上天気なんてない、お墓は雪の綿帽子被っていたり、今年はまずはお墓参りもできる。
観自在菩薩、行深般若波羅蜜多時、照見五蘊皆空、度一切苦厄。
般若波羅蜜多ぱーらみーたー彼岸にわたるということ、彼岸とはもと仏、それをよこしまに我という、わがままこっちの岸此岸、生まれついては彼岸のが、物心つくにしたがい我田引水、妄想めったら我欲、世界宇宙はおれが中心だって、百人百様に主張したらどーなる=世の中だ、もとのありよう彼岸に返す心の教え、心経すなわち仏教。
気が付いたら世界宇宙の中心であった、さあてどこがどうちがうか、これが問題だ。
彼岸の菩提をとむらう、生きたのも死んだのも成仏だ、どこがどう違う、ちらともありゃよこしま、不幸の原因、生きているとはよこしまということか、断じてそうではないと気が付く、お経を上げたってなんにもならん、菩提をとむらうとは、照見五蘊皆空、度一切苦厄、もと救われてある自分を知る。
法要法の要とは。
本日参拝の善男善女人、当寺総旦那各家先祖累代精霊、及び東北関東大震災殉難者の霊について菩提を弔うこと、坊主にできるたったそれだけ、なまぐさ坊主てめえのことしか考えない、自閉症のてめえ格好付けだけ、お経を読みだみ声張り上げたってだれも浮かばれない、お布施というどぶに捨て。
なにしろ法要は十時から。
檀家総会に緊急動議、てっちゃん晋山式に禅師を省いて、仏教のぶの字もない両本山御撰使を止めにして、そのお金をお寺として大震災の寄付にあてよう。
2011年03月22日 08:44 せっちゃん ショートショート・世界一周1
ゆーばん世界一周
うちなん村は真昼間、ゆーばんぷーわり鼻提灯、蝿がたかって世界一周、ぱっちん割れて目が覚めた。
ふーらり起きて旅支度、どこへ行くととなりの姉さ、世界一周すたこらさ、さんごのかんざし買って来て。
はいないうてもっけ川、どっかり舟に乗り込んだ、あしたは返せと魚捕り、あさって返すとゆーばん。
袖山過ぎて衣山、枕崎には花が咲く、おうかん鳥がきーろり鳴いて、夢のようだと竿差す。
ざりがに船にはさみを上げて、あわんとどもが押し寄せた、空の上から神様が来た、神様でねえゆーばんだ、
いいから歌えとあわんとども、舟べりたたいてゆーばん歌う、ぷーわりぱっか鼻提灯、寝てばっかりのふんどしくさる。
神様でねえ嫁なしだ、あわんとどもははさみにはさんで、もっけの川の大渦へ、ゆーばんくーらり吸い込まれ。
せんぐらとはぽっかり浮かぶ、あっぷらかいて海の真ん中、しいらん魚が飲み込んだ、なんでも食らうしいらん魚の。
腹ん中には雲が浮かんで、むしろを敷いてだれか住む、世界一周のゆーばんだ、大声上げたら相手は云った。
釣ろうとしたらわっはっは、食われちまった漁師のざっき、二人仲良く腹の中、かすみを食って雲を飲み。
百年たったらざっきが云った、しいらん魚は竜宮へ行く、待ってはいられんそれもそーだ、骨を抜いて槍をこさえ。
二人は浮き袋をぐっさり、しいらん魚はぶっふう沈み、そこなんとうの天井岩に、しいらん頭をぶっつけた。
ぷーと二人は吐き出され、こいつを引いて村へ帰ろう、お別れだざっきは云った、そこなんとうの扉を叩く。
世界一周のゆーばんだ、とびらが開いて門番が云う、なにかごちそうが作れるか、芋ん汁ならなゆーばん。
2011年03月23日 08:51 せっちゃん ショートショート・世界一周2
そこなんとの美しい、みやこはんのきろしただ姫さま、ごちそうが大好き、うんまくなかったら殺す。
まさかり取って大臣が立つ、汗みずくして芋ん汁、うんまいみやこはんのきろ、三杯食べてお姫さま。
あんれはんのきろ、ぷーいぷっかりでっかいおなら、そーじゃった芋ん汁は禁物、大まさかりが追っかける。
おならつかんでゆーばん、ぷーいぷっかり浮き上がる、九夜十日海の辺、ぶっちがいどくろの海賊船。
世界一周のゆーばんだ、いいから乗れと漕ぎ手にされた、そーれ獲物じゃまっしぐら、ゆーばん一人逆さに漕いだ。
しょーがねえなあマストに上れ、マストの上で見張り役、ぷっかりゆーばん鼻提灯、ぱっちん割れて虹が立つ。
一万両にきれいな姉さま、そーれ行けと漕ぎ寄せた、獅子鼻には虹が立つ、どーんざっぱん乗り上げた。
いわなんとが押し寄せる、海賊船は一網打尽、おまえはなんじゃ阿呆面、世界一周のゆーばんだ。
そんではこれに乗って行け、けおるぐ鳥を引いて来た、山を二つ一跨ぎ、食われんようにといわなんと。
けおるぐ鳥に手綱かけて、ゆーばんゆっさり大空を飛ぶ、海をわたって野っぱらへ、お城の塔がぴっかり光る。
きれいな娘が輪になって踊る、大砲曳いて軍勢が行く、河の向こうは杉の森、雲にふーわり眠くなる。
万年けやきにでっかい巣、きーけおるひなは三羽、くわー食われるすんでにゆーばん、四羽めになる。
ひなは巣立って雪が降る、こうしちゃおらんスカイダイビング、ゆーばんぴえーと滑って行った、三角屋敷の窓へ突っ込む。
世界一周のゆーばんだ、青い目をした女の子、お父さんとお母さんがダンスに行って、三日も家に帰らない。
2011年03月24日 08:27 せっちゃん ショートショート・世界一周3
それは困ったゆーばん、二人でもって捜しに行った、波止場はからすがよったくる、塩のホールは酔っ払い。
キータラの白いお化けが、さらって行ったあーんと泣いて、みやこはんのきろしただ姫、みやこはんのきろ女の子。
ぷーいぷっかり芋ん汁、あーれはんのきろ大笑い、氷の浜辺に夫婦は踊る、沈まない日がくーらり。
もう三日目よと女の子、そーかどうりでお腹が空いた、親子三人帰って行った、ゆーばん一人ダンスを踊る。
影と二人手を取り合って、お日様にとげが刺さった、ごおっと吹いて竜巻だ、世界一周呑み込まれ。
にしんとたらの竜巻だ、にしんとたらとゆーばんは、デルタヨッホの港に着いた、千キロ向こうの南国だ。
にしんとたらで大儲け、竜巻印の缶詰じゃ、お屋敷に住んできれいな嫁さん、ひげをしごいて演説。
オペラに行って大欠伸、蝿がたかって鼻提灯、にしんのげっぷはもういやだ、きれいな嫁さんは駆落ち。
そうだゆーばん世界一周、成金屋敷を売り払う、四頭立ての馬車を買い、一鞭くれたら突っ走る。
野越え山越え街を越え、馬なんてーのは始めてだった、ぐるぐるひーん入ったら出られぬ、しんだーるの砂漠。
砂にはまって空回り、ゆーばんも四頭立てもひっからび、らくだびーとが鞭をひゅーるり、死体を巻いて引いて行く。
どんごろどんごろお呪い、たっぷり水を吸ったらよみがえる、死んでよみがえった命は、らくだびーとの財産だ。
金山堀りにつっこまれ、明けても暮れても重労働、ゆーばんふーらり皮ばかり、生きても死んでも同じだ。
お月さまぽっかり山の上、お月さま金の糸と云ったら、ぴえーと下がる金の糸、はしっこつかんで浮き上がる。
2011年03月25日 08:29 せっちゃん ショートショート・世界一周完
血も涙も出ねったらに、巨大蜘蛛の八つの目ん玉、食えんとゆーばんうっちゃられ、明日の朝まで吹っ飛んだ。
たんだろ村の巨人族、たんだねーるの耳ん中、世界一周のゆーばんだ、けしっつぶが何を云う。
けしっつぶだって役に立つ、では美しいたんだふろーりあを口説け、あざみのイアリングに、ゆーばんを隠してプレゼント。
たんだふろーりあは彼氏に云った、エーデルワイスにしておくれ、エーデルワイスにして彼氏は、あざみの花は自分の耳に。
天の声だ恋しい人よ、日も夜もなしにゆーばん口説く、彼氏はたんだねーるを追っかける、止めてくれえシュミはない。
美しいたんだふろーりあは、怒ってかんかん、あっさり彼氏を乗り換えた、役に立ったろうがとゆーばん。
たいしたもんだといって、たんだふろ-りあと三人乾杯、グラスをがっちゃん、ワインは溢れて川になる。
うわあゆーばん流れて行った、弓矢がどんざん降って来る、世界一周にゅうふぁん酔っ払い、アラント軍とフルント軍の戦いだ。
うるさいんだったらゆーばん、そこらにあった旗を取る、わんさとふるって押し立てた、どーんと大砲が鳴る。
百年戦争はおしまいだ、アラント軍の大将が云った、ごるたの丘に旗が立つ、フルント軍の大将が云った。
おうわおーと大歓声、百万人が手を取り合った、旗を立てた者を銅像にしよう、永遠の平和のしるし。
よってたかって塗りこめた、世界一周のゆーばんだ、ぐるっと回れば世界一周、回ろうたってぴくともしない。
ごるたの丘の平和像、鳩がぴーっと糞をひる、となりの姉にさんごのかんざし、月の光にほーろり涙。
泣いて涙は流れ出す、ほーろりたまって貝のから、ゆーばんぶーらり帆立貝、うちなん村は海のはて。
波にゆーらり歌っていたら、うちなん村は海のはて、ゆーばんぶーらり鼻提灯、波はうねってやっぱり歌う。
となりの姉さばっさになって、二人孫が遊んでいたら、赤いさんごのかんざしと、まっしろいひげのじいさま来た。
世界一周のゆーばんだ、氷の浜辺にダンスを踊り、お月さまはぺっかり金の糸、みなまで話さずあの世へ行った。