ショートショート7
2010年10月01日 08:12 せっちゃん ショートショート・白神
秋になったら旅に出よう、津軽へ行って北海道へわたって、鱒も釣ろう、きのこも取ってと云うと、そんなひまはないと小林のほかには矢島、
【歌】いずくにか食す国おはせ白神の追良瀬の瀬の風の清やけさ
十和田湖からは奥入瀬川と白神山中からは追良瀬川と、どちらもおいらせ。ぽんこつをフェリーに乗せて、秋田の矢島と土崎港で待ち合わせ。ごーがらん一晩中エンジン音と雑魚寝。
【歌】ぶっこはれタイムマシーンに乗りて来て思ひ起こせば波の辺なる
矢島は四日しか付き合えんという、北海道は小林と二人きりか、弁当を買って飲み物を買って、まずは出発。
彼は磯っぱたで足を切った、貝を踏んづけたそうの、抜糸がまだだ、
「昨日だったんだぜ、医者が忘れてどっか遊び行った。」
八郎潟で鯉釣りのほうがいいという、べったり座ってさ。これは八郎潟の残骸といおうか、田んぼの真ん中に大沼、米余りがわかっていて干拓した、ゼネコン日本の草分けかな。
【歌】八郎のいにしへ知るや雀らや早稲の田浦は刈らむとすらむ
能代市の風の松原は、美保の松原と天橋立と日本三大松原だという、いうだけのことはある。どっしり見事な松が何千、いや何万本。トイレに水道のある公園でもって、朝飯食って用足して、
「こういうところは夕方おねえちゃんとさ。」
「能代美人な。」
「美人から先に東京へ出る。」
「かもしか出るってよ。」
目が青いんだぜ、日本人とちがう、秋田犬のDNAがヨーロッパ種だって、つまりロシア人かな、キリストの墓ってのもどっかあったぜ。
【歌】みちのくは風さへ白き松原のへにも廻らへ妹が袖振る
川へ入った、まだ紅葉には早い山の林。何匹釣り逃がし、よくみたら針がかけていた。おしょろこまのような、黄色いいわなを釣る。まだネイティブがいるんだ、川ごとに違うんだリリース。このあたりはもう白神山中か、
【歌】白神の社の旗代吹きなびき別れし妹を思ほゆるかも
白神十二湖の絶景、三百年前の火山の噴火でできたそうの、原生林の中に大小三十あまりの池、三つ四つは見たか。いとうを養殖する池がある。なんせ観光開発。青池はほんに青く、たしかに魚がいたんだと小林が云った。森の遊歩道を歩く。
【歌】白神の十二の玉と聞こえしは津軽乙女が命を碧き
【歌】津軽なる青き水底に住まへりし伝へはぶなの空洞にも聞け
2010年10月02日 07:49 せっちゃん ショートショート・白神2
【歌】白神の夕の下代吹き荒れて二十一世紀を我は知らずも
【歌】白神の夕の下代吹き荒れて湯船にひたる蛸の八足
追良瀬川は十三湖へ出る長い流域を、ベテランのカヤック、カヌーというのかようも知らん、冒険家が挑戦して、助けてくれえと泣きわめいたとか。けわしい上流と激しい水。釣り人の夢は、釣り荒れてやまめが一匹。さけますの禁漁区があった。車が何台もいた、ずんと歩くらしい。
【歌】白神は追良瀬の瀬と夢に見え今うつせみの滝のしぶきぞ
殿様が難儀をしたという大間越えから、車力村へ入る。昼食は貝味噌定食と、よっぽどのご馳走かと思ったら、帆立てのでっかい貝殻の辺に、卵御飯と煮干しが一本。ひえーと思ったら、そいつがなんぼでも食えるから不思議、
【歌】潮騒を荷ふて越ゆる平らには車力村なむ貝味噌の味
十三港の十三湖は、中世に大地震があって、一夜にして滅んだという、日本のアトランティス、推定安藤氏館あとと看板があって、発掘跡がわずかに残る。
しじみが取れる、でっかいしじみ。
「ちがうったら、ジパングのさあ黄金王国があって、世界中と取り引きして、逆転海流でもってこっちが中心、表日本だあ、ムー帝国と通じて、サブマリンがあってUFOがあって、美しいお姫さまが。」
力説したって二人聞かず、
【歌】しじみ貝夢に見えむうたかたなほ黄金のよしやあし草
小泊村竜泊温泉、日本海の夕陽の見るという、残念ながら雨。島が見える、大小二つ、道路マップにはない。
「あいつら夜中に襲って来るぞ。」
そいつはこわいといって、働きもんのかあちゃんに聞いたら、
「あれが大島と小島、天気よけりゃ青苗地区さ見える、こないだ津波あった、そう、ここらへんテレビも北海道。」
と云った。
「そうよ、雇われマダム。」
珍味食べて一杯飲んで、トイレ行ったら、となりへ来たおっさん、
「定めし名のあるお坊さんでしょう。」
と云った、
うわ、いわな釣りだども。
翌る朝かあちゃんうっすら紅さして。
【歌】草枕旅路のはてを大島の流れ寄せぬか夕陽が沈む
2010年10月03日 08:00 せっちゃん ショートショート・白神3
雨は上がったが霧と風と、木や草っぱがぶっとんで、道は竜飛岬の展望台へ、ふわっと晴れてどえらい絶景、真下には北海道、
何百という蛾が落ちていた。
逃げもしない烏。
【歌】岬にはいにしへ竜の天飛ぶや人も草木もうちなびき見ゆ
【歌】見よやこれ凡百の蛾の散らへるは竜飛岬に生けるしるしぞ
岬には青函トンネルの記念館や、自衛隊に測候所に民間ホテルに、どやつも取っ払ったらすてきな岬。日本三大潮流という、渦潮はなんとも豪勢な見ものだった。
なでしこに似てそうではない、われもこうのような白いのや、エーデルワイスみたいのや、まつむしそうでもなくってと、固有種かも知れないお花畑。
引っこ抜こうというばあさ、
「そんなん植えたってさ、つかねえから。」
よしなよって、日本人へんだしな。
【歌】珍しみ咲ける花草いくへありし渦潮巻ける竜飛岬に
【歌】身のたけは丈の白髪になんなんに魚釣り暮らせ竜飛岬を
味噌垂れのおでんを売っている、そいつをみんなで食いながら三厩町へ
【歌】味噌垂れのおでんを食らひ三厩の西部劇とぞうそぶき歩く
津軽半島からのフェリーはだれも乗らんで廃止になったってさ。
矢島はあと一日の、
「いいよおれ五能線で帰る。」
「どっか行きたいとこあっか。」
「酸ケ湯まだ行ったことねえ。」
じゃ行こうとて、今別町から鉄道沿いに入る。雨が降って山深くなって、濁り水ではフライは効かない、矢島がみみずと竿と買ったが、どうやら使い道なし。
でっかいとんび、いやあれはわしだなぞいってしばらくは晴れる、蟹田というところへ。
歌 若しやして岬にあらむ大鷲の舞ひ立つ方に霧らひ晴れ行く
【歌】昼下がり雨は降りつつ大平の蟹の田んぼと横這ひ行かな
左折して海へ出て、瀬辺地郷沢橋内真部と下って、いや上って行くのか。
池田せいさんは青森の人、先年つれあいをなくした、
「みやこぞやよひのくもむらさきに。」
と歌ったら、主人の好きな歌だったといって、涙流す。
【歌】潮寄せ陸奥の国なむ一つ松池田せいさの家はもいずこ
では人並みに観光しようといって、八甲田山のロープウェイに乗る、一五〇〇円日本一さ、値段も高いんとちがうか、紅葉と青森ひばとふーわり霧が。てっぺんは八甲田の七つ池。
【歌】みちのくは飛天になりて鳴りとよみ見れども飽かぬ月を廻らへ
【歌】八郎の月を呑まむと今宵かも廻らひ行かむ笹あひ深み
有名な酸ケ湯へ入った、真ん中にあっち女湯こっち男湯と記すきりの、これはでっかい木造風呂、かあちゃん若い娘けっこう入ってるぞ、ひーうわ絶景の、強烈おしり向こう向いてちらっとあの、
「オリンピックよりよっぽどいいや。」
もと本来の清々。
【歌】はねかずら今する妹が奥の井の酸ヶ湯にあらむ染め出でにけれ
【歌】はねかずら今する妹が奥の井の酸ヶ湯にあらむ萌え出でにけれ
酸ケ湯を出たら、指一本立ててヒッチハイクの子、
「きったねえ車だけどいいか。」
「ソーユーコトカマイマセン。」
シニエちゃんというドイツ娘だった。
「酸ケ湯入って来たか。」
「ハイッテナイ。」
十和田湖畔へ送って行った、そこでビバークするんだという、でっかいザック背負って、北海道の山を七つも上った、八甲田も登った、しまいは富士山へという、元気いっぱいの二十四歳、
「富士山で飛行機ヒッチハイクすっか。」
「ソレデキマセン。」
【歌】金髪のメーツヘンとふうら悲し十和田を廻りなんぞ雨降る
【歌】舞茸のメールヘンとふ物語りぶなに乾杯あひ別れなむ
2010年10月04日 08:21 せっちゃん ショートショート・白神完
シニエちゃんはお寺へ寄って行く、帰ったと思ったらいっときして、玄関にお菓子がある、お礼に買って来たらしい、歩いて行ったんか、
「そんなかたいことして、嫁に行けんぞ。」
といって、しばらくはメル友していた。
その晩矢島は、抜糸の糸を引っこ抜く、
「あっちー。」
パン一になって奮闘。
流行らないユースホステルに泊まった。
「ようしおれ田沢湖案内する、岩手もさ、じきだぞ。」
という、彼は秋田へ来て二年。
翌日は晴れて、爽やかな風が吹いて、あっちこっちりんごのなる道を、大館鹿角のストーンサークル見学。
相当大規模な同じようなのが二つあって、小屋が四つ五つ建って、
「UFOが出るとこへ作ったんだぞ。」
なんてさ、がせねた。
【歌】鹿角にはストーンヘンジを荘厳のりんごは赤く秋風のとき
【歌】UFOのいにしへ今に恋わたり二十一世紀は縄文の世ぞ
田沢湖を一周、矢島がその伝説を話す、
「うんでもって、水飲んで竜になってお姫さま争ってさ、なんとかって坊主がやきもちやいて、あれおれ買った本忘れて来た。」
ヌードの像どっか立ってるんだがなって、
「松があって、そんで。」
通り過ぎたか。
そこらへん松林できのこ取り、小林は名人だった、
「あいつきのこの親類だで。」
と云って、少しは取った。
矢島は買った竿とみみずで釣り出す、玉川の酸性水が入って魚はいない。
【歌】坊主してなんの伝へぞたつこ姫松の影だに言問ひ忘れ
角館の武家屋敷を見る、粋な黒塀見越しの松って、お古い歌いやさお富、現実は映画のセットよりもくすんでたけ低く、でもどっかシックな感じ。
【歌】嫁ぎ行く小さ刀をしずやしずむかしを今につらつら椿
もうわしらも帰ろう、村上の黒岩んとこでいっぱいやろうか、きのこも取ったし、じゃわしも行こう、帰り四時間、間に合うといって矢島、スーパーでねぎと牛肉買って。
「すきやきだあ。」
土崎港へついたら、抜糸に脱いだずぼんをユースホステルに置き忘れ、車のキイもアパートの鍵もない、
「しょうがねえ。」
「うん。」
管理人呼んでアパートを開けてもらい、ここでお別れ、
ずぼん盗むやついねーからって。
【歌】萩に咲く月は今宵も出羽の国三人をのみぞ別れ来にけり
四時間をぶっ飛ばした、国道七号線、むかしのように一〇〇キロてわけにはいかんが、なんせ仲秋の名月だ、スーパーのスナックとコーヒーでもってさ、ようやく三面川はすすきさんさん。
【歌】名月やすすきなびかふいはふねのたが住まへるか同行二人
2010年10月05日 08:28 せっちゃん ショートショート・本寺
板橋興宗禅師をお迎えして、てっちゃんの晋山式が来年の十一月四日、五日に決まった。総持寺安居のときの禅師さまで、目をかけてくれたそーの。新到にはありがた迷惑だったってさ。禅師はわしの大先輩で、海兵で終戦を向かえ、東北大に入りなおしてのちの出家、筋金入りの戦前派かな、
「ねこは悩まない。」
というカレンダーを出して大流行する、いやそいつが面白い、並みの人間ではないな。テレビのも出ていたな。
でもって本寺に挨拶に行く、本寺さまお大切。同末から電話があって、本寺はオーム真理教に入っていた、今でもおかしいという、
「ふーんそりゃあかん、止めちゃえゼニ助かる。」
といったら、
「同末か知らんが名前も云わん、聞かなかったことにする。」
とてっちゃんは云って、世話人連れて今日本寺に行く。
若いのがオーム真理教に入れあげた、麻薬と同じ宗教体験、イメージングの世界だな空じ切らん。
皮かむりの包茎みたいのって云えば、今時アートだの詩歌文芸もご同様で、外気に触れない、空間を知らない。
良寛さんのように一人では生きられない。大勢よったくっていいからいいんだの世界、集団自閉症は恐ろしい。ポアだのサリン事件だの。オリバークロムウエルだのバーソロミューの大虐殺だの、宗教はそういうものさ。共産党もポルポト派も右へ倣え。
カソリックは老獪で平和と博愛もわっはっは、エイズやエボラ出血熱を発明する、いいものはいいんだ選良だけが生き残る。
そりゃ一神教は必ずそーなる、恨みつらみ包茎と皮むいたのと絶え間なしの喧嘩。
オームが宗門を食い荒らす可能性はある、法式猿芝居のほかにない、皮かむりの皮ばっかり、そりゃたまったもんじゃない。
がきっぽいオームの宗教性、麻薬に持っていかれる、てっちゃんは心配ねーわな、身心脱落なんてねーんな、立派なお寺の子ってわけの。
なんかあほくさ。
2010年10月06日 08:12 せっちゃん ショートショート・冬虫夏草
雲の峰幾つ崩れて月の山
月山は美しい一目で惚れこんだ、めったには拝めない、神々しい山容で月が出たらそりゃもうって、なんせ曇ったり吹雪になったり。
雪消えぶなの新芽吹く、わしがミイラになる所ってわけで。
月山和紙を買うんだと云って、冬行ったら猛吹雪でホワイトアウト、この秋行くと和紙工房とものみな展示館といっしょだった。冬虫夏草の陳列があった。気味が悪いってのが感想だ、中国に400種日本には150種ほどある、蝉から根っこが生え出したり、蜂から芽がぬうっと出たり、かぶとむしもあったな、一つわしも捜してやろうっていう気にはならん、奇怪至極。
月山でミイラになって冬虫夏草になって、死んで花実を咲かせようか。
あっはっは。
上村松園をテレビでやっていた。
ありゃほんとに生まれついての化け物なんかなあって、がきんころの絵が大人顔負け、すんなりデビューして垢抜けして行って、冬虫夏草のようにさ、まるっきり人間離れ。
炎という絵。呆れかえって涙溢れ、絵の上にもう一枚。
序の舞は皇室お買い上げ。
皇室所蔵は日本歴史の証拠品だ、若しや千年後にも新しく。
もう一つテレビで見た、ポアンカレ予想という数学の難問だ、これも化け物みたい天才が次々挑戦しては人生を狂わされ、ついに答えを出したら、人生そのもを破壊され。
白昼夢みたいな、こやつも冬虫夏草ってさ。
ど迫力で面白い。
数学ったら足し算引き算も間違える、トポロジーも微分幾何もなーんもさっ。
なぜだ、わしの予想にぴったり。
理論物理のデブチンスキー博士に聞いてみよう、聞いたってちんぷんかんぷん。
わかるんなら始めっからわかってるはず、という答えが出たら狂うかな、なんの答えにもならんでさ、数学の満足ってうっふーいやさご立派。
上村松園は美しい、ポアンカレ予想の失敗も想像を絶して美しいのか、どっ気味悪い冬虫夏草だろうが、門外にはわからん、門内にはわかるんかな。
解決したらはーて立派な化石人間。
人生ってまあさおんもしれーやな、わしの知ったこっちゃないが。
月山のミイラよりお寺でミイラなって、お参り増やすか、年金ねこばばのほうが先か。
ちーんなんまんだぶつ。
2010年10月07日 08:29 せっちゃん ショートショート・ミデアムレア
暑い夏が過ぎてようやく歌を書こうって気になった、短冊高いから和紙を買って形に切って、うすっぺらいの書き古しに貼りつける、三分の一のなるかなゼニ。
昭和12年噂を聞いて、念のためと役人が入って行ったら、異様な風体の男が飛び出して、
「源氏は滅んだか。」
と云ったそうだ。地震で全国版になった山古志のむこう、竹の高地という所だ。紙漉き工房がある。雪消えに行ってみた。じっさとばっさ二人きりでやっていた、まずは手ごろな。
五月の接心終わって、こけちゃんが本の儲けといってなにがしかくれた、よーし行こうって、そこらどろちゃんにもっほちゃんに葬儀屋見習いの若いの乗せて、八石山ステーキを食いに行った。
ボトルワインをとって、ステーキは牧場直結の番号がついているなかなか、山菜のつけあわせがある。
「葬儀屋かあ、ぼろ儲けしてるのに給料安いぞ。」
「いえうちへ帰って店出すんです、一年で見習い終えるから。」
ふーん大学出も仕事ねえんでたいへんだ。
乾杯どろちゃんこの若いの誘惑しろ、わし飲むでもっほちゃん運転だ。ミディアムレアがおいしいって、ほんにおいしい、ステーキのあと飯にぶっかけるの最高、あらほんと、お行儀悪いけどって、ナイフとフォークなと殺人道具使いやがって、フランス野郎は野蛮。
ごきげんになって、
「源氏は滅んだかってまゆつば。」
「うそじゃねーったら。」
って、竹の高地へ和紙を買いに行った。
山越え行ったら雪で通れない、連休過ぎても残る、杉が倒れこんだり、わあきゃあ雪いじりして引き返す。
はーてさて十枚ばかし歌書いて、本堂で坐っていたら、がらっと戸開いてじっさとばっさのお参りだ、がっちゃん賽銭を投げ入れる、はいどうぞってなもんで退散。
禅堂なしの、なんとか一億円ばかし溜めりゃ建つか、宝くじは買わんと当たらん。買っても当たらんとさ。
じっさばっさ檀家しか来ない、近頃お布施も半減して食って行けねーか。
わしはなにしろがらんと一人坐るだけだ、てっちゃんとおっかさんとあとのことはまあよろしく。
ぐうたら遊び呆けることしかねーから、自業自得だな。
今年の夏の暑さには参った、あれじゃホームレスもできん。
いやさ八石山ステーキはどうしたか、山ん中にあって、冷房ったら天井に扇風機が廻っているだけだ。
行ってみたら潰れていたなんて。
はてな一人じゃ飲めねーしだれか来ねーか。
2010年10月08日 08:28 せっちゃん ショートショート・どくが
中学のころだった、なみどくがという黄色い小さな蛾で、触れると火ぶくれのようなかぶれを起こす、だれかれさんざんにやられて、二三年して収まった。その後聞かないが、寝取られ男が、かーちゃんと野郎のベットに毒蛾を放つという小説があったな、思い切ってまあ残酷シーン。幼虫に毒があって、さなぎが破裂してりんぷんにつく。成虫にはないのだ。
学生のころだった、一日山歩きして電車に乗ったらなんかおかしい、そこらかゆいし熱もある。さしむかいきれいなおねーちゃんが乗っている、きんたまのあたり猛烈むずい、弱ったうーわ死ぬかって、たしかに毒蛾だはてどーしたってー覚えがない。
ノーベル賞だってんで日本中湧いている、おめでたいこったさな。ノーベル賞がなんだと云った小林秀雄はあの世行き、ノーベル文学賞ってあんまり面白くない、宮沢賢治も西行もそうさな徒然草も、どだいノーベル賞なんて貰えそうもない、わっはっはへーんなの。
科学者は五十年も前から待ち望んで、芦の隋から天井を覗く式、フィールド賞って数学だが、賞貰えないと人生はないって、なーんていうんだろ、ポアンカレ予報解決しおっちゃんは破滅する、破滅もしないんじゃ問題にならんかな、自殺しない哲学者と同じにそりゃ信ずるに値しねーわな。
面被つけた馬車馬は必死こいて走らんけりゃゴールは至難、大発明したのが一日違いで人にさらわれたどうしよう、じゃ次したらって坊主の思惑通りにはいかん、若い断然たるいっときのこったとさ、なーるほど。
親不孝のわしは留年してふーらり、ねぎという渾名の喫茶店に入びたり、フランスのおっさんがいいですかって隣に座った、英語もフランス語もできる、日本語まじり話す、なに云ったか覚えていない、ユーアーシアリアスボーイとそやつが云う、べつにそんなつもりはねーけんど云々、とつぜん腕を腕にこすりつける、ふるえている、ひやこいつはおかまだ、なんとか逃げた。
そのころは一つきゃないトイレ開けたら、おねーちゃんのおしりがどっかり、さまざま微妙な色合いする、日曜画家ゴーギャンの写生みたいな、
「いけません。」
と声があった、きれいな顔がおしりの上にあった、そーゆーこった逃げ出した。
えれえ面していたぞと連れが云った、きっとそーゆーこったな。
あれまこれがわししのノーベル賞か、待てよ毒蛾の話だったんだ、どくか。
2010年10月09日 07:58 せっちゃん ショートショート・へのこ
水もしたたるいい男、いい男はなんで水がしたたるんだ、丘に上がったアマゾンの半魚人だからから、ふーんそーなん、地上じゃ金も力もないって、えっと一枚も二枚も鱗が剥げ落ちる、はーてなやっぱり落語にゃならん。
アメリカに大物主がいた、人間さまじゃ到底無理だ、牛や羊でもってもーうめえって、いやどうしても思いを遂げたい、日本にすまたという技があると聞いて、今では飛行機で一っ飛び吉原に上がった、でどうなったって、大物主は莞爾と笑って、さすがに富士やま芸者の国です、奥に畳みが敷いてありましたってさ。
せっかく一つ覚えを披露しても、それなによ奥に畳みってぽかん、どーもいけねえ。
狂い天気もどーやらおさまって秋だ、ぽっかり晴れて山へ行った。松くい虫で松が全滅、復活したかと思うとまた枯れる。
あみたけが洪水のように出ていた、いいきのこなんだけど取らない。
きのこ食うのはわしだけ。
ししたけが三年出てばったりになった、ししたけは大はばけつほどもあって、半径五メートルほの円を描いて出る、大盤振舞いだ、シェフが来てチャーハンを作ってくれた、そりゃおいしかった、また出ないかと思って見に行く。
たぬきの溜め糞があった、はつたけが二三本。
やぶっぱらかきわけてあかんぼうがある。
さくらしめじという、ほんのり桜色したしっかりしたきのこで、茹でて大根おろしと醤油と、ほろ苦い酒の肴にぞっこん、四、五十も取ったぞ。
これが出りゃ山は復活だ。
だいこくしめじもまつたけもじき。
大根もねーやなふん。
在原の業平がお庭をそぞろ歩きに、用足しと思ったらお女中が来る、塀に節穴があったんでとっさに突っ込んだ。そーしたやんごとなきお方が表を行く、
「あれはなんじゃ。」
とお付きに聞いた、
「はい、あれはへのこでございます。」
ってのは、女子大の先生から聞いた、
先生さまっての、へたな下げ話がお好きだ。
なんで大根役者って云う、大根は中ることがない。きのこ汁に茄子を入れる、毒なしの洒落だって。もっほちゃんにおじんギャグがうつって、女部屋追い出されるってさ。美緒ちゃんのおはこは、天気予報とかけて親父のふんどしと解く、その心は、たまにあたるというやつ。
続編考えたけど、うまいのが思い当たらん、目下募集中。
狸の溜め糞とかけて、はつたけと解く、その心は、においがよろしいよーではてなあかんか。
みちのくのしのぶもじずりだれゆえにみだてそめにしわれならなくに
信夫の里へ行ってみた、でっかい苔むした石がどかんとある、なんだ洒落にもならねーやって、虎女伝説やら、
早苗取る手もとやむかししのぶ摺り
芭蕉の句碑やらあった。宝物館に板橋興宗禅師の扁額がかかる、へーえって、あのこれはおじんギャグではなくって。
2010年10月10日 08:11 せっちゃん ショートショート・すけかん
二年後輩だった、すげえ秀才が入って来て、そのころは慶応の経済は医学部より上で、理科一類はいっち難関を、両方とも受かってやってきた、そいつにすけかんと渾名くっつけて可愛がっちまった。いいとこ行けずに土木へ行く、土木に鉱山に独文てのが最低点で、わしは独文、わだくそってのが鉱山へ行った、いいやつだったなあいつも。
すけかんには顔向けならぬ、うっふうだれかれあいすまんこっちゃが、六十過ぎてとつぜん電話がかかって来た、
「田中正彦です、ずいぶんさがしました、お名前も変わってお坊さんになっておられたとは、おなつかしいです。」
田中正彦ってそんなはいからなん知らねーぞ、
「はいほんとになつかしいです、よろしく。」
電話を切ったら、何日かしてまたかかってきて、
「あの恥ずかしいながらすけかんです。」
すわこそパニック。
それが、ちょうどゼネコン真っ盛りで土木が大流行り、大林組に入ったという、タイにいる期間が長かった。わしの薫陶よろしくって、嘘とはったり手前味噌でのし歩くはーてな、タイの王族相手に裁判して勝った、ゼニは戻らんがなという、あの暑い国で汗を拭ったことがない、なにがしのものはなにがしかの人を雇うべきで、タイの言葉も使う、でないと問題にならぬ、よく行方不明なる日本人いる、てめえ風吹かせるからだ。
「ホテルでおねーちゃん註文したら、毛が生えてねーんだぜ、なんだこりゃって云ったら、病気の心配がねえって。」
「ふーんそんでやったんか。」
「まさか。」
どーだかな。
大林組のOBが坐禅に来て、
「田中っての知ってるか。」
と聞いたら、
「田中なんてのいっぱいいる。」
「田中正彦ってんだ。」
田中正彦かあいつは切れる、そりゃ優秀な男だったと。彼はオームで名を売った上九一式村の出身で、親父が酒を飲まず、そのせがれでもって土建屋のくせに一滴も飲まぬ。
わしんとこで坐禅するんだといって、二三年頑張ったが、ぐうたらの朝倉と二人で山登りするうち癌になった、半年で死んでしまった。
風呂へ入ったら若々しい体をしている、田舎坊主は格好が悪い。車乗るからさって。レストランなどで話すとでかい声で、若いのがふるえ上がったり、政治家とわたりをつけておいて、やくざが来るとだれさん知っているかというと、引っ込むんだ、走っていると、この道はたいしてゼニかかってねーなとか、わっはっはやらせ道路だとか。会社に残るはずのを引いた、後ろに手が回りそーだったんでなと笑っていた。
会社辞めて、医者にぼったくられて三百万の健康診断をした、まっさらなんにもなしが三年後だった、じじいの癌じゃなくって若い癌だったんだ、きしょーめ朝倉が代わりに行けといったら、どっかで聞こえたかな、年賀状来なくなった。
いいやつから死んでしまう、憎まれっ子世にはばかる。
吉川さんという一年先輩も死んだ、ほんにすばらしい人だった、わだくそも死んだ。
田中は、信玄煮貝というものを送ってくれた、桐の箱に入ったあわび二個。
2010年10月11日 08:28 せっちゃん ショートショート・ばん
車で出たとたん、田んぼから山鳥が飛んで来て、ぶっかって交通事故、一思いにって黒岩がスタンピングしたら、警官が突っ立つ。曲がり角でスピード違反見張ってたんだ、なんにも云わない、拾ってさっさと出発。あいつらマニュアルねーとなんにもできねーんだと羽賀が云った、空手馬鹿だ。山鳥スタンプってマニュアルはねーらしい。
お初の山鳥料理指切ったが、そいつがうまかった、山鳥は殿様の食うもの、鴨は庶民の食うものってさ、品がよくって絶品、冬じゃなきゃ食えた代物じゃねえ、なんでも取って食う空手馬鹿が云った、春先だった。
信濃河で鯉を釣っていたら、対岸からばんが飛び立つ、もぐったり飛んだりして来る、分水の上の広いところだ、八百メートルはあるか、竿を見ていたら目の前に来る、岸に上着いてふんのびた。
「なんだこりゃ。」
珍現象かな、とっ捕まえて魚は釣れん持って帰った。
体こげ茶っていうか真っ黒で、足がピンク赤いとさかと青い羽先、えらくきれいな鳥だ。
酉年のばーさんの鳥小屋に入れて飼おうって、餌も食わず水も飲まず。
野生の鳥は餌付け不可能って聞いたっけか、とんがらしの水飲ませて、
「ふえー。」
殺人じゃなく殺鳥しちまった。
きれいだ可哀想だ。
剥製の好きな内科医にやった。
あんときはふくろうの子も落っこちてたんだっけか、大将大喜びで剥製屋を呼ぶ、電話があって、
「あれどこで手に入れたですか。」
「二羽庭に落ちて死んでたです。」
そうですなって、先生は警察医だった。
禁鳥剥製にしちゃまずい。
なんとかしたと見えて、診療室に行ったら、二羽とも立派な剥製になっていた。
やぶ医者で、写真や絵を描くのが好きで選挙が大好きで、選挙違反で挙げられた。
どうしたらいいおろおろ、そんなもん証拠がないうんと云うな、ばーさんが云ってその通りして出て来た。
ばーさんは親父のまあさ役所ぐるみを無罪にした、裁判官や検事相手取ってやりあう、
「悪いこともしないのに、なんで高いところからおまえ呼ばわりされるんだ。」
って、たんか切ったらしい。
わっはっは、わしにはそーゆーの遺伝してない。
2010年10月12日 08:15 せっちゃん ショートショート・鳥
明治の遺物庫裏を改築して、庭に面して二重張りのガラス窓になった、せっかくのお庭を見せなくっちゃと大工どんの心意気、そりゃよかったんだがさ、萩が咲くと紅白満開の萩、紅葉もけっこういいし、はーてな池のかわせみがぶっ飛んで来る、猛スピードだガンお陀仏。どーしよ-もねーなカーテンしよ、きれいな羽だひすい、翡翠と字同じなんだ三羽もやっちまった。
性懲りもなく巣食うでいいかったら、あかひょうびんが落っこちた。
「ぐわこりゃたまらねー。」
とんびのぴ-とろろみたいに鳴いて、つがいの片方が本堂に入っちまって呼び合う、出してやろうって二時間もかかった、そののち二三度来たっきり、どうしたかと思っていたらこれだ。
情けねえ。
わたりは月日星ほしほしの三光鳥も見た。
鳥って超能力あるのかな、知れわたったと見えて、ぶっからなくなったいい按配だ。
超能力あるんだったらさ、烏においってやると、車ん中だ聞こえるはずもねーのに、きょとっと見る、はぐれ烏がびくっと、群れは無反応かな、電線の七羽ほどに、わしの仲間だ挨拶ったら、車の辺にべとっと糞ひった。
仲間はやめた。
つがいが巣作りしている、ほんにむつまじく嬉しそうで、交差点の信号機の上だ、あんれと思ったら帰りにはなかった。
烏害ひどいからたいへんだとさ、ふーんいい感じだったんに。
空の雲に空の色。
死んでもいいって、死んで見ているんさな。
さえずると小鳥も応ずる、人情なしに鳴けばいい。
風や水のように。
花のようにさ。
せきれいに鳴いたら、ふわーっと襲うほどに。
巣があった、うぶ毛の三羽ほったらかす。箱を工夫して容れておいたら、死にもせずひっからびもせず、何日かして巣立って行った。
知らぬまに親が面倒見ていたんだ。
うぐいすと鳴き合わせは、相手も必死こいて鳴く、雌の取り合いだ、わしにかなうはずもなく退散て、そこまでやったらいかん。
小鳥と庭を歩く、二メートル先をついばんだりうかがったり。
あほかおまえら。
2010年10月12日 20:07 せっちゃん ショートショート・馬鹿
がきのころおふくろに連れられてどっかへ行った、線路脇歩いていた、鉄橋があってとっとこ先へ行ったら電車が来た、間に合はん、見るとレールの下が開いて、ケーブルがあり河の中洲に電柱が立つ、伝い下りてやり過ごした、おふくろは覚悟を決めたみたいな、のっこり現れた。
とんだ馬鹿だつくずく。
つい最近だ、運転していて眠ったくなった、でかい声で歌ったりして、ふわっと気がつくと、反対車線のガードレールだ、ブレーキを踏んでタイヤ一本パンクして停まった。振り返るとセダンとワゴン車とでかいトラックが停まっている、ワゴンからだれか飛び出してきて、
「脇見運転かあ。」
と聞く、
「ちがう、居眠り運転だあ。」
そうかと云って、事故もなかったし三台とも行ってしまった。
三人名人運転で命助かった。
国道8号線だ、そこから中越沖地震が来たんだ。三日後だった。
まさかわしの命と引き換えにって、ふう。
わしの命はそりゃもうわしのもんではない、
「たとい世のため人の為。」
と決心したって、はーて糠に釘、どーしよーもないそりゃもう馬鹿だ。
わしより馬鹿が金正日だし、中国共産党ってえ馬鹿に輪かけたのもあらーな。
えーいくそ八つ当たり。
はた迷惑のまあさひとりよがり、マンガだってのをてめえだけ気がつかない。
なーんなんださ。
ベトナムだイラクだ戦争ぶっかけちゃ惨敗っていう、世界中の笑いものアメリカ。
見ても聞いてもいられん馬鹿。
曼珠沙華が咲いている、世にあんな美しい花はない。
毒が有るから日本人は尊重しない。そーかなあ。
坊主なんてものは、馬鹿丸出しってだけの可愛いもんだ。
うそと人形芝居に現を抜かす。
道元禅師に後足で泥をかけ、達磨さんに毒を盛る連中。
仏の芽を踏みにじって。
仏飯を食らって罰当たりめが、そーさなあ最悪。
2010年10月15日 09:35 せっちゃん ショートショート・自画像
ウフィツエ美術館自画像展を見た、横尾忠則もあった。マリーアントワネットの肖像画家ル・ブランのあどけない、いたずらっぽい少女と、レンブラントの自画像がよかった。
自分という世間噂のどうひっくりかえしたって嘘八百、てめえのふりをする以外にない。
すっきりしない疲れる絵かな。
百枚も描いたというレンブラントは、自画像の虚偽を見抜く寸前まで行く。
横尾忠則どのは云うことだけはなーるほどって、デスマスクならぬそれ、眠っているときも客気を免れぬ。寂を示す本来自画像にはほど遠い。
自画像右代表は上村松園だ。
自分を描く必要のないことまさにこれ、残念ながら「炎」は見られず、「序の舞」の大画面を仰山人だかりに見た。すべてモーツアルトに匹敵する、人間なんてものもういないのさ。心というこれ、世間噂を抜きん出る。
もう一つ上の自画像は雪舟だ、天橋立であり山水長巻だ。
自分という上っつらが消える。
我と有情と同時成道=これが自画像だ、ほかはすべて嘘だ。
西欧には解らない、ちらとも知れば世界平和への道。
店長と支店長では店長の方が格が上、マリーナちゃんのお店は幡ヶ谷にあって流行っている、他愛ない女の子だと思ったらマダムの貫禄。支店長は給料の上がったの二年間黙っていて、かーちゃんに大目玉。
三行半貰ったら真剣に口説くからってまりーなちゃんに云う。
横尾忠則に頼んで、店長支店長の喝采の図ってのを描いてもらうか。あみちゃんにデブチンスキー博士と理論物理のがちゃがちゃ作って貰うか、わっはっは400億円の夢。
シーシェパードが太地町で旗揚げしたとさ、野卑でいいことしいのぐはあなんてえ自画像、キリスト教の犯罪だって法王が謝ったって、キリスト教そのものが邪まだってえのに、そりゃもういつまでたってもシーシェパードだわな。
金正日や中国共産党といっしょに自画像額縁入り。
2010年10月16日 08:37 せっちゃん ショートショート・送り人
送り人だの究極のセレモニーのと、むかしは金は唸るほど有るのしつけるで娘を貰ってくれと葬儀屋稼業、なんでかそれがいっときあぶくゼニが入って、どっと押し寄せてついには閑古鳥が鳴く、人間てどうしようもないってのの見本かな。
坊主が嘘とはったり大威張りなら、嘘とらしくとてめえ酔っ払い、どっちも化けの皮はがれて、死人とはぜに儲けっていう身も蓋もなし。
死んだら浮かばれねー。
猫さえ大往生なら、象の方が百万倍もすばらしいな。
ネアンデルタールが死者を埋葬して、人間らしくとはよろず厄介事、宗教を卒業したら、ちったあ人間も大人になれる。
地球を平和にする、簡単だ人類抹殺すりゃいい。
五百年もすりゃ大繁栄の地球さ、ピラミッドやスフィンクスがしまいまで残るってさ。
世界が平和でありますようにってのが、宗教家のモットーで、宗教家は葬式が生業だ、ペンタゴンに頼んでエボラ出血熱にエイズに、その千倍ものウイルス兵器かな、先進国は水爆と同じに大競争、中国ロシアは細菌兵器かな、必死の殺人兵器総動員すりゃ、二三年で人類絶滅。
いやさ平和。
核の冬たって百万年もありゃ地球は甦る。
嘘とおためごかしの葬式しなくってすむさ。
花を飾って音楽葬だってさ、死の荘厳をおひゃらかしゃがって。
生きてるやつになにが云える。
どあほう。
東京は歩きにくい疲れる、地球の癌もクライマックスシリーズかな、コクーンだのスカイタワーだの、迷路駅だの、一日半日いたら足首が激痛。
そーだケータイ殺人考えて、いっぺんにあの世行き。
生き残ったのはわしとばーさんかあ、そりゃどーもならん、魚になったほうがましか。
二十三の娘が死んだんだった、海外旅行も何も二00%ハッピーってのに狭心症でばったり。
愛と恵って戒名に入れてくれってさ、はいよう心愛淨恵信女。
まったくにもうないんだって早く思い知れ。
他に生きるすべはない。
仏。
2010年10月17日 08:13 せっちゃん ショートショート・竜巻
山古志村は地震でがっぽり入って、道は縦横無尽に新しくなる、どこへどう行こうがあっちこっちで呆れ返る、地震のまんま観光地にすりゃいーのさ、なけなしのゼニやたら注ぎ込んで何がどーなる。医者にかかって薬漬けのかーちゃんさな、賦活の力失せてべったり太って、病こうもうってのはまったくそーゆーわけだ。
共産主義だの紅衛兵の、恐ろしいったら脳味噌破壊されて中国だぜ、経済発展と軍事力のロボットは世界支配しかないのさ。戦略的互恵関係だとうそをつけ、毒きのこ販売みてえ生ぬるいんじゃねーのさ。狂っている、国民の信頼がないんじゃしょうがない。
竜巻だな。
幼稚園のころつむじ風に会ったな、くるくるっと来たと思ったら巻き込まれて、石垣に頭がっちん、血流れてたんこぶできて帰って来た。
十一月釣りに行ったら、直江津の海に上と下から黒雲が巻く、そやつがつながったら竜巻だ。七本のうち三本がつながった、二本はじき上下に離れて一本だこっちへ来る。
若しやしてって、高速道路を走りっぱなし、あわや上下が別れて、見上げる頭上を巻いて行き過ぎる。
帰ったらテレビ見ようってさ、テレビにもラジオにも出ず、被害はなかったんだ。胎内の写真もあんなふうだった、海から十キロほどが危ない、電車さえも巻き上げる竜巻。
天災も中国も同じだ。
地下シェルターでも作らんきゃだめか。
縄文人がよかったか、家つぶれりゃ建てる、洪水ならよける、きのこも間違えねーよーだし、土器に勾玉にって、三十過ぎりゃお迎えだ、老害にゃ無縁の。
はーてな一00万年前はどーだ。
神さまだったんかな。
今様人類生まれ代わってもう一回ったら、みんなごめん被るわな、ダライラマでさえとんでもない人生だ、クレオパトラは自殺楊貴妃も首切られ、小野小町は賢すぎて婿ができない。
風来坊主八十年のお釈迦さまが理想か。
一日働かざれば一日食うべからずの百丈か。
ロボトミイの中国とはえらい違いだ。
わっはっは能書き垂れてねーで、しょーたれ坊主かーちゃんストライキの、てっちゃん稼がせて、はーていっぱい飲むか。
2010年10月18日 08:31 せっちゃん ショートショート・柿
柿の皮をむいて干す、秋は雨ばっかりの越後では無理だ、焼酎にさらしたおけさ柿かな。むいた皮まで干して食ったな、けっこうまかった、白い粉を吹く前の、半熟盗って食って怒鳴られたっけ。
がきは食うのが商売だった。
今は柿など取る人はいない、どこへ行ってもなりっぱなし、葉っぱが落ちてさんさん柿もみじ、むかしは一つだけ残して鳥にやったが。
やったというより捧げ物。
年が明けて雪が降る。
鳥がむらがる、めじろやすずめやむくどりやからすやおなが、三日で空っぽにしたな。
朝柿を取り焼死人
これは坊主の句だったな、柿は折れやすい。梅はしなやかだがな。
いちだ柿というのがある、天竜川の辺り、天竜の霧でもって名物の干し柿が仕上がる。小ぶりのそりゃもう絶品の味。二つ美緒ちゃんに貰った。
おばあちゃんが飯田にいて名人だ。
接心が終わったら、みんなで柿の皮むきに行こうってさ。なんせ美緒ちゃんただ飯食らう、いちだ柿で払えいーよだってさ。
浜松接心には本場のうなぎが食える、こっちでは食えない代物。
信濃河にだってうなぎはいる、黒岩がどを作って仕掛けた、パイプを切って蓋をつけて、てっぽうみみずをぶちこんで沈めた。明日行ってみるとテトラポットの上に載っている、水位が二メートルも変わる、JRの不法取水だ、あいつらばれるまで何年やってやがったか。
黒岩は四万十川の出身で、そりゃもう気のいい男で、がきのいたずらならたいてい知っている、センスはあるし一風変っている。あるとき不細工な面した男が来て、東大出の司法研修生だ、心の修行というのがあってお寺周りをしている、山門を見ていて、気がついたら電車の時間だ、慌てて吹っ飛んで財布も学生証も忘れた、戻ったらない。
いくらか貸してくれという。
家は四万十川の中村だという、黒岩の家はその上流だ、そりゃもうまったく同情して飛行機代五万円貸した。
じきとっつかまって警察が来た。
心の修行なんてあほらしい、そのまあ不細工な面にひっかかった、
わしのせいなんだが、五万円出したのは黒岩だ。
2010年10月19日 08:32 せっちゃん ショートショート・スフィンクス
秋田に弟子がいて、エチオピア料理を食わせて貰った、サフラン入りのカレーとナンにメインディッシュは鰐のステーキ、ぞっこんいけたのは女将、すこぶるつきの美人が、皇室に限りなく近いエチオピア女で、シバの女王の直系かな、わっはっは恐ろしいスフィンクスの微笑み。
日本には滅びたすなおさ。
市会議員が嫁に貰ったんだってさ、じきに離婚した、
「そうさわしに出合ったんだ、無理もない。」
またもとの鞘に納まった、
「わし行かなかったで。」
病こうもう。
秋田美人は、いいのから先に東京へ行くという、中学のころは何人かほろっとするようなのクラスにいて、目が青ずむのを不思議に思った。秋田犬のDNAはヨーロッパ種だという、シベリアをわたってやって来たんだ人間も。
秋田か岩手にはキリストの墓があるって、ユダヤっての何人かな。
高校受験だ、親父と二人呼ばれて、そんなんB級高校でいいったらえらく怒られた。
生まれて始めて勉強した。二ヶ月めにはトップとおっつかっつ。なんだこんなもん。勉強できて背が高くってかけっこ速い、ふーんそーゆーのはもてて、わしみたいちびでまっくろけは爪弾き。
受験は八科目もあって、選択問題三つ解いて、なんで家庭科なんてって、とにかく受かった。大学受験も数学全問解いて、2たす5みたい単純計算万遍なく間違って、青くなったら受かってた。
世の中上っ調子でわたってきた、鍋底抜いて冷や飯食い、あばずれ呆けて頭剃った。栴檀は双葉から香ばし。そーいえば駒澤の校歌
「おう栴檀林。」
とかいうのだったな。てっちゃんの国学院はものすごい校歌で、とってもついていけねえ。
山へ行ったらせんぼんしめじ四株もあって籠にいっぱい、こうたけのおまけ付き。
しばらくぶりだ、これがまあついの坊主がスフィンクス。
美人てわけにゃわっはっは。
江戸の玩具館ていうのがあって、のーんと笑う真っ赤な姫達磨。
あれがわしのアイドルだーな。
2010年10月20日 08:11 せっちゃん しょーとしょーと・熊
ドライブがてらきのこ取ろうと思ったら熊が出る、やめとけ。熊の胆は金と同じ値だと秋山郷の男が云った、熊の胆飲みつけると他の薬が効かなくなるとさ。彼はスキーを駅に預けておいて、冬は行き帰りスキーだった、ノルディックの選手になって、三十過ぎで運転免許規定内に取って表彰された、運動神経がいいんだ。
若死にした。
結婚式忘れてすっぽかしちまった、ほんにあいすまん。
平家らが落ち人となむ剃髪せりし汝がみまかりし夏
しましくは会えずもなりてみまかりし汝れに手向けの槿花一輪
熊の牧場やれったら考えてたっけな、つまらねえ坊主よりゃいい。
巻機山の登山宿で、味噌漬けの熊の肉食わせられた、やわらかいくせに噛み切れぬ。中学生の甥っ子つれて行った、ほったらかしにされて、
「なんだこりゃ。」
「いえあの娘が病気でして。」
という、また来て、
「坊さんは縁起がいいんだそうで。」
といって茶出す。ばーたれめ娘つれてこいったら、わっはっは挨拶に来た。 甥っ子は慶応の山岳部に入って、とつぜんテレビに出た。
学生二人雪山で遭難。姉に電話すると、なに大丈夫よあの臆病者がまさかってさ。
巻機山は沢登りがきつく、甥っ子はこわいこっちへ行くって行き止まり、どでかい一枚岩の下が道だ、カメラに撮って記念だあってやってたが、雪渓がとけていて一間跳んで向こうへ、若しや姉になんと云おうって、とにかく帰ってきた。
まさかの山岳部へ行った。せっかく記念写真は宿におき忘れ。
後輩を鍛えるのがうまかった、臆病転じてこわーい先輩。
風にあおられてビバークしていたのを、連れのおふくろが通報しちまったという。OBが集結している所へ下りて来た、そりゃまあたいへんだったよーで、うっふ熊とは関係ないか。
熊みたいにのっさりお寺へ来てぐーすか寝ていた、猫のなむを入れるとぎゃあといって出てきた。
姉は猫好きで、甥っ子と義兄には恐怖の猫。
2010年10月21日 08:19 せっちゃん ショートショート・虹
イタリアへ行こうウフィツェ美術館、スペインだお姫さまが首切られたお城がいいって、なにしろ魚を釣りにオーストラリアへ行った。ハメリンプールという地球に酸素を提供した地衣類が生きているという、そいつを見てから世界三大釣り場だシャークベイに行く。空手馬鹿の冒険家羽賀が案内して、きしょーめえらーいお方だそうでゼニはこっち持ち。わっはっは頭へ来て喧嘩しちまった。
ハメリンプールへ行ったらきれいな若いおねーちゃんが、日本人は二人めねってさ、泳いでいいかとしゅーしんが聞いた、いいですけど触らないでね、泳ぎ大好き人間のしゅーしんと二人もぐった、大小の岩がにょっきり、地衣類が砂を取り込んで成長するストロマトライト、小魚がいっぱいいた、つっつくと酸素の泡がぶくぶく。
「うほーい何億年前だあ。」
「赤い大陸オーストラリアのさ。」
そーだなあって出て来た。
タイヤの空気を抜いて砂漠を行くこと六時間、ゆっくりゆっくり砂がむきだしになると石英がにょっきり、バーストしたらスペア一個だ引き返すよりない。
じゅごんで有名な海だった。
知らなかったなあ、若しや見えたんかも。
何グループか釣っていた。
まぐろ狙うのもいた、風船をくっつけて沖に飛ばす、大仕掛けはかからず仕舞い。浅瀬にはへらやがらやぶだいやなにやらごっちゃり、岩場にひっかけておしまい。鮫がごってりいた。アオウミガメが泳ぐ、浦島太郎になって背中に乗ろうっていう。
貝殻と魚の骨の浜。
シャコガイの殻があった、だれか食ったんだ。
入れ食いでかっぽれが釣れる、十メートルもある断崖だ、ようやく一匹引き揚げた、一メートル二十センチあった、刺身にした。
刺身というものはお座敷で食うもんだ、きれいどころがお酌してさ、砂漠じゃどーもならん。
常駐のレインジャーがいて薪を持ってきた、日本人を尊敬するって云ったな、スマトラで世話になったとか、中国人がヘリでやって来てそりゃぶっさいくのえれーめに会ったなと。
塩田があったな、90%日本に輸出するってさ。
一滴の雨も降らないのに虹がかかる、砂嵐のせいだな。
2010年10月22日 07:06 せっちゃん ショートショート・蝿
漁師の船に乗って沖へ出た、しょっちゅう風が吹いていて波が荒い、まぐろにかつおを釣ろうという、七人いた釣り人のルアーを巧みに調整して、船長は船を走らせる、何しろ待った、向こうにかつおの群れが行く、すわてんで釣れず。次は底釣りですってんでにキャビンに入った、矢島が吐き戻しそー、見ているこっちがおかしくなる、矢島は治って、わしは釣り場についたとたん戻す、二度戻し三度して、でっかい灰色の赤いの釣り上げて、うわ釣りどころじゃねーや、
「体調悪いとわしらだって苦しいことある、帰りましょう。」
といって船を戻す。
丘へ着いて三歩ほんにけろりと治る、小笠原へ行っさまやんは、船では酔わず丘酔半日やっていた、それも困るな。
あっちの刃物使って魚を三枚に下ろす、オーストラリアの漁師も見事なもんだ。
頭やわたを若い釣り人が貰って行く、はーいグッドラック。
手製の舟だぜあれ。
オーストラリア米は腰がなくって、鮨に握ると他愛がない、それでも料理こさえて、キャンプしていたおねーちゃん三人呼んだ。
十七だっていうスイス乙女二人、ほっぺたにピアスして可愛いいったら、
「シューベルト知ってるか。」
「知らない。」
名前も知らない、シューベルト好きのしゅーしんがぶったまげ、
年増がいて空手馬鹿の羽賀を口説く、
「あしたはもう行っちまうです。」
シューベルトを歌い荒城の月を歌い、音痴のわしも歌い、楽しい宴か迷惑三昧か。
羽賀は一人テントに這いこんだかな。
ストロマトライトのかけらと、蝶を何頭か帽子でしゃくって持ち帰る。
税関で重量オーバーだという、
「はい。」
荷物詰め直すとおーけー。
羽賀に云われた通りにさ、はーてどこへやったかな、そんなもん持ってくるなって羽賀がさ。
オーストラリアのハエには参った、牧草の受粉に輸入した小型のハエだ、ガイドのおねーちゃんの顔に真っ黒にたかる、あいつはやってらんねーや。
2010年10月23日 16:19 せっちゃん ショートショート・もちもろこし
かぼちゃって云うとそっぽ向くのは、終戦後芋とかぼちゃばっかり食わされたからだ、今のように上等なものはめったになく、ぐじゃぐじゃなんかよーもわからん代物、芋も沖縄百号なんてでっかいだけでまじーのがあった。
ナプキンかけてかぼちゃのスープにワインを飲んで、メインディッシュがけちいステーキわはは戦後みたいだ。
鮭をとる信濃河波清やけくになんにおのれが突っ立ち呆け
分水に鮭が上る、堰下の流れをあっちこっち漁師が網をかまえる、
「おーいそっちだ。」
たって聞こえやしない、何人かわしみたいのいて、そこ行ったあ後ろだあなんてやっている、阿呆だ。
洪水のあと行ってみると、なんか盛り上がる、逃げ遅れた鮒がたまる、ばけつみたいの拾ってきてつかみ取り。
なんしろハングリー世代だ。
人のものはおれのもの。
最大は六0センチを越す、へら釣りには堪えられんな。心字池に入れた。
池浚いして子供に掴み取りさせたら大喜び。
池浚いは十年にいっぺんやらんと駄目だな。
ばーさんが畑を作っていた、なんたって戦中派だ、うりやなすの取れたはうまかった、とうもろこしを作って二年目には、明日とろうっていう晩にたぬきがさらって行く。
よく知っていらーな仕方がない止めた。
そーさなあ忘られんのはもちもろこしだ、小ぶりの青と白のだんだら。
北海道へ行ったら屋台を出して売っていた。
もちもろこしと洋ナシだ、洋ナシは家畜のえさだってさまずい。
もちもろこしは涙の出るほどに。
次に行ったらもうどこにもない。
こけちゃんがホテルのはげ親父に聞いた。
目を輝かして、
「もちもろこしですか、さがしてみましょう。」
という、農協やら電話したがからっきしない。
「もちもろこしあったかあ。」
こけちゃんごしに聞いたら、はげ親父憮然、同じハングリー世代さな、おねーちゃんでなくってさ。
こけちゃんは人妻だ。
2010年10月24日 06:34 せっちゃん ショートショート・おろおろ
千日廻峰行も心の始末を知らんけりゃ無駄骨折だってさ。
喉元過ぎれば熱さを忘れ。
たいしたもんだえれえことをやり遂げたっていうんなら、仏じゃない犬畜生さな。
千日廻峰行ののち、
「空しいわしはなんだったんだ。」
と思うからに修行だな、はじめて仏の救いがある。
臨済の碧眼終わった免許皆伝も右に同じ、首枷になったお悟り外すのは、わっはっはそりゃ今生は諦めがほうがいい。
臨済も曹洞宗という猿芝居もほんにさ、百害あって一利なし、なんだろーなこりゃ。
死んで死んで死にきって思いのままにするわざぞよき
捨てても捨てても捨て切れぬとは、捨てている自分があるからさって、なんにもなくなってちらともありゃどっかん新しく。
毎日さ、生まれて始めて悟ったと云って、なんたらおれはと云って、お釈迦さまや道元禅師が仏であって、世の中他になく、てめえっかすひっかかるかも、はあてまったく知らん。
朝に夕に坐って、飢えた虎に食われ終わって、虚空が虚空を坐禅する。
お釈迦さまなく道元禅師なく、いぎたなく飯を食うてめえかって、光陰という影かって、雲の大激震、花の咲く痛恨、人と相対していると涙、お経を読むと涙、そりゃまあなんとも困るわな。
坊主にだけは会いたくない、先生さまにもさ。
今生のことなんか知らん。
なんの責任も取らんのさ。
菩提心を発すといふは、己れ未だ度らざる前に一切衆生を度さんと発願し営むなり、設ひ在家にもあれ出家にもあれ、或は天上にもあれ、或は人間にもあれ、苦にありといふとも楽にありといふとも、早く自未得度先度他の心を発すべし。
能無しのおろおろわしはてめえこっきり、ミイラになろうってさあてどうかな。
設ひ仏に成るべき功徳熟して円満すべしといふとも、尚ほ廻らして衆生の成仏得道に回向するなり、或は無量劫行ひて衆生を先に度して自らは終に仏に成らず。
2010年10月25日 07:05 せっちゃん ショートショート・凶
弥彦神社の菊祭りは十一月三日から、一本の茎に800だの花つけたのやら、木みたいに育てたり管巻きあつもの、世の中には酔狂が多いんだな、美容師の卵と行ったら、おみくじ引いて大吉と出て跳び上がって喜んでいた、働き者でよく気が聞く、じじどもたむろしてるとこへ行って、
「なんでこんなふうに花咲くんだ。」
わしが聞くとそっぽ向いて、大吉おねーちゃんにはほくほく大返答。わっはっはいいことありゃいーな。
てっちゃんのご学友利恵ちゃんとあかみちゃんは、出雲大社で巫女さんした、すげえ高いバイト料だって。白い衣に赤い袴履いてそりゃ格好いーや。中社と大社じゃ箔が違うか、出雲大社の松の参道だけでびっくらこく。
弥彦さまの十一月はわしはおでんを食う、一櫛百円おいしい。
浅草で人力車に乗って、おみくじ引いたら利恵ちゃんが大吉で、これも大喜びした。わしも引いたら凶と出た。
御神籤は凶と出でなん坊守が花は上野か鐘は浅草
そろっとお寺も紅葉する。
山門から見るといい、中だと築山しか見えない。
やまざくらのでっかいのがある、世に出そうという檀家の物好きが、まずもって変わり桜四本を植えた、花咲いて春は風景になるか。
人の田んぼだった山門内が返って来た、ありがたや駐車場にして半分蓮池にした、ざりがにが芽を食う、よしやがまを刈ってわっはっはゼニかかる。
蓮池にお堂をこさえて、わしがミイラになって入ろうったら、だれも賛成しない。法律上無理だとか、年金にする人いて外聞が悪いだとか、うるしに弱いから源のなんとかみたいにうるしのお化けになる。
地震でもって六地蔵が半壊した、新調すると今様地蔵さっぱりだし、ようやく修理の目鼻がついた。
でっかいお地蔵さんがあって、子供を三人抱いて、いいお顔の越後のお地蔵さん、排気ガスでまっくろになる。商売が薬で落とせるといった、
「ちっとでも削るなよ。」
「はいわかってます。」
四十万もかけてのっぺり面のへーんなお地蔵さん。
悲しい。
わしのやることはたいてい凶だな。
2010年10月26日 07:08 せっちゃん ショートショート・たこげそ
たこげその揚げたのはうまいけど、いかげそまずいからないって、あんまり教養のねーおっさんが云った、世の中そうなんかな、世の中のことは日増しにさっぱりわからん。
良寛さんの五合庵はなーんにもなしだったのに、なんせ観光地になった。吊り橋があって駐車場が二つもできて、大賑わいの売店でもってたこげそを買った。
あったかくってうまい、むしゃむしゃ食って人を案内する。乙子神社から五合庵へ、大正時代に復元したそのものも場所も変わっていない。
だいぶ前外人どもを数人案内した、国上寺の放生池に松があって、一人二人そこへかき登る、佐渡までも行こうって元気のいい連中、釣竿買ってのして行きゃよかった。
日本人のわし担いでアメリカに僧堂建てようっていう、お寺もってまもなくだそんなひまなかった、糸の切れた凧やりゃよかったな、今頃ニューヨークでホームレスかそれとも~
住職が出て怒鳴る、
「へい申し訳ねえこいつら常識ねーから。」
「そうか修行に来たんか、じゃお宝見せてやる。」
といって、酒天童子縁起絵巻なるものを見せた。
わっはっは酒天童子は近くの洞穴にいたんだ、でっかくってざんばらで酔っ払いのような赤い面していた、ふーん流れついたロシア人か、でもって源の頼光坂田の金時酒天童子退治の物語。
本物は博物館でレプリカだとさ。
あいつらどーしているかな、しょーたれ坊主がはーてそれっきりになった。
焚くほどは風がもてくる落葉かな
五合庵があって碑があって、巧みな設計でもって、登って行くと吊り橋になる、じきに売店のある広場だ。
吊り橋から西山連峰の電波塔が見える、南北朝時代の砦あとが巨木の森になる、蓮華寺という瀟洒な道がある。
おねーちゃん案内して、
「次はあっちへ行こう。」
「あらあそこへ。」
って、うっふひっかかること間違いなし。
わしは良寛さんと同じだでそんなことはしない。