ショートショート8
2010年11月03日 08:28 せっちゃん ショートショート・きちがい
破家散宅
「支店長さん、皆さん、お久しぶりです。久延寺接心から帰ってきました。 陰の極みから生還しました。どうやら逝きました。和尚さんは遊んでいます(奥様TEL談)。皆さんで検証してみてください。一刻も早く確認したいので。
接心の垢を落としてうつろなるわがみのかろさそのかろさこそあか
さあ、早く問うてみてください。私が、敢無く敗退するかも。それもまた楽しみ。御用とお急ぎのない方(笑)。笑うという。なにが、どこが、わらうんでしょう。はら。はらが笑う。このやろう、というかんじですかね。ただおかしく、泣けるんですよ。うれしいとなくのです。ただうれしいとただ泣くのですよ。なにもそこにないのです.ただうれしいとなくのです。20時にはログアウトします.
それまでに問うてください。問わなくても別にかまいませんが(笑) 」
moch
「それダメだな~。」
「なんででしょうか? それ、ってなに。ダメってなに?」
「なんでって、認める自分があるから。」
「いえね、腹があるだけなんです。腹がヒクヒク動いて笑うんですよ.絶対的なんです。考えてないんです。だから、結局、自分なんてないんです。だから、おかしいんです。笑うんです。自分でなく、腹がね。本当です。」
「それはそれでいいけど、そういう事じゃないです。」
「もう、20時過ぎてますが眠たくありませんので、いきましょう。それはそれ、そういう事。「それ」とは、結局なんでしょうか? では何を? ということです。」
「なんにもないのに、貴方はあります。明日になるとまた全然ちがいます。」
「あるようなないような、というところなんです。明日は、ありません。」
「だから間違っています。」
「間違える。間違う。とおっしゃっている。むなしくないですか?」
「もと空しいに決まっています。」
「いや、まことにまことに、もとむなしい。むなしいことを知れば、むなしくない。なんともおかしく ありませんか? だから頭でなく、腹がよし、俺の出番だと
笑い倒しにくるのです。これ、絶対の笑い。空虚。いま私は、この空虚という言葉にさえ、大笑い指定し増します。くるったかな.ああおもしろいl というところなのです。」
「莫妄想。」
「妄想でないものとは何?まく妄想ではなく、皆妄想ではないのですか? と、逆に問うてみました。」
「坐って落として下さい。それでは使い物になりません。」
「使いませんよ。使うとか使えないとかそういうことではないんです。ああ、次の方どうぞ。」
「はいはいご勝手に。うふ。」
「ありがとう。 いひひ。」
こういうことがあったりします、気を付けて下さい。なんにもない無事禅よりゃましですが、気が狂うこともままあります。
2010年11月04日 08:28 せっちゃん ショートショート・寒い
暁天坐雷が鳴って轟然たる、そうさな北国日和定めなきの十一月うら寒い雨が降ってさ。見れば築山は紅葉、こりゃなかなかのもんだきぱっと来る。
はーてさて落葉掻きが大騒ぎ、天竜和尚がブロワーを一台寄付してくれたってのに、やっぱてっちゃんの云う通り、若しやそんなんじゃまったくどーもならんか、秋は干し柿も出来ないほど雨ばっかり。濡れ落葉ってのはわしのこったか。
美緒ちゃんはお里に帰って市田柿を剥くってさ、十二月にはご馳走になれるか。
あかねさし月は今宵もわたらへど百代もがもな秋山の道
代々をしも隠れ住まへる秋山の紅葉下照る云はむかたなし
平家の落人部落秋山郷は、紅葉の下に宝が隠されていると云う、食うや食わずどころではない物凄い暮らしが大正時代まで続く、人の本を盗み読みしたら、人間はこんな思いまでして生きにゃならんかって、なんだかうんざりする。熊と岩魚と栃の実を拾ってと、ほか何を食っていたんだか。
アイルランドのほうが厳しいってだれか云った、岩だらけを耕してじゃがいものだけの、ケネディ大統領を生んだ不屈の魂は、生き残り第一の上にカソリックで生めよ増やせよ、わっはっはうんざりするほどはびこるわな。
わしゃもう人のことなんかどーでもいーか、能無しのただもうはた迷惑してあの世行き。
山門をさわたるものは月にしや紅葉散らへば時雨るばかり
しぐれつつ雲井さわたる月にしや七十我れはさ寝もい寝やれ
中国だロシアだ世の中剣呑だな、外交のない国か。
無惨やな兜の下のきりぎりす
サムライの志持ったやつの一人二人、はてなあ昭和天皇に殉死しちまったか。
困難な時代にさ、なにか残せるものはないか。
必死になって伝え残して。
美緒ちゃんと寒山拾得やって、人の物笑いになってさたとい生き残ること。
身障者手帳付き添い一名ただの展覧会見て、にったり涎たらしてしまいミイラに。
やんまらが襲へるなしや秋津島山茶花椿いたずらに咲く
ふーん寒いな。
2010年11月05日 08:24 せっちゃん ショートショート・しもふりぼーず
てっちゃんが草刈ったあとにへーんなきのこが二本、すぎのわかえがまっしろになって出ているんだけど、なぜか毒きのこに変化、右食用代表みたいして千年来たってのにさ。美人きのことって食ったらトイレに行く、三回も行く、黙っていたら家中しかり、由来きのこ博士返上、取ってきてもだれも食やがらん。
枯れたくるみの大木がどっさん倒れて、材木屋が伐った、お墓直撃も被害なし、寄付金さぼって払わねーお墓にどっかん、悪運強いやつだぜ。枯れ木じゃきのこ植えても駄目だな。
今年の夏はどえらい暑かった。
横尾忠則全ポスター展に招待されて、暑いなんてもんじゃない七月十二日、大阪中ノ島国立国際美術館、内覧会開会式レセプションだってさ。
坊主の面出すところじゃねーんだけど、忠則先生は一宿一飯の恩義を忘れず。このポスターときたら評論家どものど肝を抜く作品。わっはっはほんに面白いぜ。
なんで流行ったかって、わしなんぞには預り知らぬ所以。
酒がだめで病気の巣みたいな人で、ゼニカネしっかりしてる関西人が、人を逸らさぬ大親切、まあさいい人なんだな。
それがさ招待をさぼって四回めに、横尾美美展、えーとなんて云ったかな、東京のこじんまりした美術館に、もうぜったい行かなきゃならん、はーてなどろちゃんと美緒ちゃんに代役頼んだ。
美緒ちゃんは緊張しきって、後遺症が残ったぐらい、例によって派手派手きもの着て立派に代役を果たす。さすが寒山拾得だとどろちゃんが感心する。
横尾美美どのは娘さんだった。チャーミングな絵を描く、一枚売れたってさ。
忠則どのから礼状が来た。
ウフィツェ入りした自画像の絵葉書だ、よく見るとけっこう半分は悟っているんかな。
わしが唯一有名人とのお付き合いも終わりか。
山門の四天王を塗り替えのとき、うっかり忘れていたんだ、1300万もかかってなんとも駄作、横尾どのにお願いしたらってさ、残念だったな。
しもふりぼーずってきのこが出る、それとって今年はおしまい。
2010年11月06日 08:27 せっちゃん ショートショート・金雲
日に舞へや月に踊れや山門の阿吽の獅子は鳴る萱にして
タイに行ったら獅子だかシーサーだか狛犬さんだか阿吽じゃなく、二つとも口開いてる、きゅうえんじの山門のもそーだった、日本だけが阿吽なんか、シーサーは一匹なんか、だれか物知り教えておくれ。
遊びに行きてーけどかーちゃんは仮病のストライキ、てっちゃんはお経に飯の支度にってさ、こないだふらついてきたばっかりだし、雨ざんざか紅葉激変お寺もすんばらしーやふわーい欠伸。
禅家流、仏性の義を知らんと欲せば、当に時節因縁を観ずべし。之を教外別伝、単伝心印、直指人心、見性成仏と謂う。釈迦老師、四十九年の住世、三百六十会に、頓漸権実を開談す。之を一代時経と謂う。這の僧ねんじ来たり問うて云く、
「如何なるか是れ一代時経。」
と。雲門彼のために紛々と解説せずして、却って他に向って箇の、
「対一説。」
と道う。
ふーんなんで倒一説じゃいけねーんだ、関じゃだめか。
雲門は尋常一句の中に、須からく三句を具す。之を函蓋乾坤の句、隋波逐浪の句、載断衆流の句と謂う。放去収来、自然に奇特、釘を斬り鉄を切るが如く、人をして他底を義解し卜度し得ざらしむ。
雲門の法だといって何物かふりかざす、出してみろどあほ。
そんなもんあるわけねーじゃねーか。
逆立ちしてけつ舐めろ。
門こんに足を押折せらる、レールのついた重い扉だったんだろうな、
「如何なるか是れ仏。」
三たびめはどかーん問うめえが向こうへ行く、転ずるんだなあ、まったく容易なこっちゃないさ。
一代時経っきりになったら、てめえの一代時経にしろって、たとい紆余曲折もまったく見えず、うわっと気が付くか。
僧雲門に問いう、
「是れ目前の機にあらず、亦目前の事に非ざる時如何。」
門云く、
「倒一説。」
倒一説どはきれいさっぱり。
ぽっかり金色の雲うわーい雲門だってさ、わっはっはあやついねーで命拾いしたな。
2010年11月07日 08:18 せっちゃん ショートショート・まーがりん
マーガリンとは油ぎっとぎと代用バターと思ったら、濃い牛乳を振って作る、そいつが美味しい。美ヶ原の見晴らし屋台で買った、牧場やってるんてさ。ごそっとしたいいパンが欲しいな。カサミンゴというドイツ風レストランがある、長野市郊外だ、ハムとソーセージとお菓子がすばらしい、野沢温泉にはかしぐるみが売っている、つでに野沢菜も買って。
遠いしなあそーは行ってらんねーや。古墳見ツアーこさえて、この国難の時におねーちゃん寄せてぱーっとやっか。
岩の原ワインのさしむかいに古墳があった。
岩の原ワインてむちゃくちゃ苦労の末にはーてな、そーゆーのは勝手にさらせレーズン買って、径五メートルほどがおっぱい型古墳に登る。パンツ見えたって夜中むくつけき豪族が出たりさ。女の古墳てのもあったんかな。
10キロ行くとぶなの林に六十基の古墳群がある。春はかたくりの花にいちめん。
三つもそういうのあって18号線を信州へ、松代の大室古墳群は五百何十もある、千曲川の辺り、谷ぜんたいが古墳だ、三途の川を渡ってつまり墓場だな、一家に一基前の押しのけて納めたりってさ。
ぜんぶ廻るのはしんどい、家混み小路を通って、山っぺたに立派な施設がある。ボランティアに学芸員にって、さっぱり流行らねーやな。
近くには前方後円墳のでっかい模型がある、いや現物を復活したんな、送迎バスが出ていて、小学校の遠足がねり歩く。
古墳てのは教育的効果しかねーんかな、エジプトの発掘みたい豪勢な金ぴかってわけにはいかん、石だの土器だの鏃に石斧にぼろ錆びた刀って、ふーん恐竜の化石のほうがよっぽどゼニ儲け。
ナサ発明の無重力船にはーてそんなものあっかな、優雅な衣笠さして、とっときの美女乗せて王侯貴族、しょうしちりきにピーヒャラやらかして古墳廻り、うんいけねーどっか不具合で一000年ずれこんだ、こりゃほんとの古墳時代、さーてどーなるって戦争だあ、中国漁船にぶちかますこともできねえ大和民族の末は大敗。
待てよするてーとあの古墳もしやわしの。
ちえ冴えねーな。
2010年11月08日 08:00 せっちゃん ショートショート・どんこ
どんこって知ってるかって天竜和尚が聞く、うんかじかの子分だろうって云ったら、しいたけだってさ。真ん丸く肥った開かないのを四日も煮込む。
料亭三好の女将がどんこ弁当を作ってくれた、京王百貨店に出すという、
「あっちへ取られこっちへ取られ儲けは百円しかないのよ。」
「ふーん百貨店悪商売な。」
どんこ弁当もってさしらびそ高原へ行く。南アルプスが真正面に見える、きっともう初冠雪。
あいにく雨になった。熊と書いてくんまと読む、おばあちゃんの道の駅があって、そこからつつれ折を登る。かめちゃん車に美緒ちゃん、でぶちんすきー博士はかっこいいミニに乗って、がーやんはジープ、わしともっほちゃんとで車四台はた迷惑の行進。
がーやんがおやきを食って、おやき嫌いなもっほちゃんに押しつける、
「あんこだよ。」
「わーやだ。」
五平餅がおいしかった、お土産買ったりなんだかんだ、天竜川を行き支流を遡り、次第に紅葉まっさかり。どうやらはぐれず一時過ぎにはついた。わしがどんこ弁当三つ落として水溜り、
「うわ。」
汚染なしだってばさ。どんこ六つも入っていた、そりゃうまかった。弁当っていうか鮨だ。ばんざーいってんで食ってお別れ。
霧と雨で視界ゼロ、しらびその紅葉を行く。でぶちんすきー博士は東京へ、ノーベル賞取ったら賞金三分の一よこせって、わしが生きてるわけがねーやな。がーやんは茨城へ、介護士してる、九十でもおったつじっさがいるってさ。
わしらは美緒ちゃんをお里に届ける。市田市だ、いちだがきを剥くのを手伝いに来たってさ。
おいしい干し柿だ、まったく品種改良なしで来たんだってさ。
元善光寺へよった。善光という人の創建で、牛に引かれて善光寺参りの本家だそーな。人形のうらに願い事書いてお祀りするっていうの、かあちゃんの仮病平癒に買った。胎内廻りは真っ暗がり、手すりにつかまって歩く。けーたいの明かりはそりゃ野暮だ。
あくる日どーやら晴れて北アルプスの初冠雪を見た、感動だった。
遊び呆けて帰って来てしーん。
2010年11月09日 08:12 せっちゃん ショートショート・余禄
善光寺は中学校に行くのに毎日通った、鳩をパチンコで狙ってみたり、城山を上ってりんごをぱくったり、ぽかんと突っ立っていて大道香具師になけなし持って行かれたり、終戦からまもなくの時代、パン助の青かんもいたな。
何十年ぶりかで行ってみたら、むかし変わらずの大盛況、中国オリンピックをボイコットして人気が上がったぜな。マッカーサー指令で病気うつる触るなっておびんずるさまも健在、でっかい草鞋のある仁王門は修理中だった。
市内は激変さっぱりわからん、くじびきで受かった付属中学は引っ越した、隣に刑務所があって笠かぶった行列もみたな。
マッカーサーも鬼籍に入らん信仰のおびんずるさま空ろ面寄せ
台風が来たっけな、貸し本屋に本を返して、手塚治虫立ち読みして帰って来たらどーっと来た、風速三十メートルは向っているのに、一歩も行かぬ、がんと当たって雹だった、顔面血だらけにして風がばったり止む、台風の目に入ったんだ、りんご畑が真っ赤になって落ちていた、すぐりの生垣があってつまんで食って家に帰った。
大家のせがれが同級生で、キャッチャーやっていたがてんかん持ち、丸いもの見るとひっくりかえって泡吹く、よくやってたな。つねちゃんという一級上のわるがきが隣にいて、喧嘩も強く、かっぱらうことを余禄といった。たいていなんでも余得した。うらにははかたという同級生がいて、喧嘩して仲治りして、はかたは文字や文章がほれぼれするほど上手で、はかたのほうはわしの描く絵をやっかむほど羨んでいた。
嵐のあとくるみを余禄に行って、大ざるに山分け。
三人で万引きしたらわしがとっ捕まって、警察と思ったら信大教育学部のアルバイトで、もうするなと云って許してくれた。二年間だったな。
一別以来会ってない、はかたは東北大へ行ったと聞いた、つねちゃんも大家のせがれもわからない。
弟を入れて四人だった。
弟はアルツハイマーになってから、それも相当進んでぜがひにわしを連れて、むかし住んでいたあたりに行く。弟の嫁もいっしょだった、わしは逃げ出した。嫁と二人車が大破して助かったという。
しばらくして死んだ。
門前の鳩を狙はむがきんたれ半世紀を過ぎて夢に見るかや
2010年11月10日 08:26 せっちゃん ショートショート・数珠
また四人で旅に行こうっと云ってドタキャン、ゆきちゃん一人になった、駅で迎えて車に乗っけて出発、
「あらあたし一人なの。」
「なぜだかそーゆーことに。」
「困るわ。」
はいよーってるんるん、どっかすし屋へ寄ったら阪神戦やっている、応援団してるゆきちゃんわーおがお、関西弁だ、関西人ってどこ行ってもそーだな。計画通り走って、夜明け青森に着いて一眠り、ふーわ男と女しようったら、弟子のべえと婚約したんだと。
「じゃしょーがねえ弟子呼ぼう。」
野辺地ですし屋の弁当食って、海に足突っ込んで、おもちゃみたいなひとでいた、わらべ歌して散歩、
「北限椿ってのあるんだぜ、八百比丘尼が植えた。」
「人魚食べたっていう人。」
それから恐山へ行った。
風車が廻って地獄のここは出張所、ベンツのバイクだって自慢そうに乗って来た兄ちゃんがいた。青い格好いいやつ。はーてなあっちこっちにお賽銭、やだよーマリリンモンローの東北弁、すんなのご利益ねーやとか云って出さず。 奥薬研温泉は混浴だって聞いた、行ったら道間違えた。
恐山の祟りだ。
カーナビがおかしくなる、湖をわたっている、未舗装になって森の中を行けども行けども、北限の猿がいた。
やっと出てきて腹へった、レストランねーかってご立派な介護施設がある。 あたしが運転するって、ゆきちゃんのこわーい運転、スナックに入って、
「ランチタイム過ぎましたんでカレーだけです。」
「カレーでいいくれ。」
平らげてコーヒー頼むと出てこない、
「いえお客さんが来てから、豆から轢きますんで。」
という、それがうまかった。
「はい、北限でがんばってます。」
うっふっふ。
弟子のべいが来たおもろくねえ。わざと外しといたのにさ。
ゆきちゃんはピアノ弾きで、温泉旅館で酔っ払い相手に弾く。知らない歌でも伴奏つける、学校に就職なんぞの比じゃなかった、プロになるはずが大先生が自殺しちまった。
わしらはメル友だった、関西弁メールがとんでも面白かった。
お寺で結婚式をやった。
明美ちゃんがそっくり写真ごと載せて、ブログナンバーワンになった。
式師は数珠を授ける、まぶしいばかりの花嫁に、その数珠は父親のせいで死んだ娘の物だった。
せめてものっていうと、二倍幸せになるからって。
アルツハイマーの弟に今わの際に会いに行った。
でたらめ法界の兄の生贄になったんだ。
2010年11月11日 08:18 せっちゃん ショートショート・ぼけ
紅葉の真っ盛りだな、時雨降って雷鳴って、風もだいぶ吹いて葉っぱが吹っ飛ぶ、なんでこんなに美しいんだろ、わしのやることがさつでみっともないっていうのにさ。
今我ら宿善の助くるに依りて、すでに受け難き人身を受けたるのみに非ず、遭い難き仏法に値い奉れり、生死の中の善生、最勝の生なるべし、最勝の善身をして露命を無常の風に任すること勿れ。
ふーん何をしていたんかな、わしの一生はた迷惑に無駄遣いばっかり、
これなんに嗚呼玉杯に花受けて初たけのこを防府に食らひ
先輩は五十で旭化成の企画室長になった、一人きりの部屋にぽつん、まあさお払い箱になったんだ、理科頭の優秀も人を扱える懐がない、いやまあささわしにはわからん。防府のたけのこはごん太くってうまかった。同寮会して七人ほど寄ったくる、頭がいいってまんまぼけた連中な、絞られ粕か。
古墳つき蜜柑畑を受け継ひで先輩なれはやもめに暮らす
生まれて始めての西国巡礼。
秋の宮島は花の散りきわ、選抜で優勝した広島の高校がお礼参りをさ、すんでに間に合わず。昼飯食わずに駆けつけたあなご弁当はまずい、観光ばっさどもにむしられ鹿に囲まれ、うっふう潮干狩りでもすりゃよかった。
朱けにして阿鼻叫喚の波枕吹き入る花をうたかたの宮
源平は浮世の花とうつろへどこは納経の真面目ぞ
長年坊主をやっていたら、平家納経のあのすんばらしい字が読める、感動。
萩に行って、そりゃもういいとこだった、萩も笠島椿もさ。
松陰神社にお参りした。
獄門の露に消えたる松陰の今しこの世を何変はらずや
いにしへゆ朝日射しこも松や松涙ゆすれて過ぎがてにせむ
松陰のへたくそな字がわしにそっくり。
2010年11月12日 08:04 せっちゃん ショートショート・鬼門
出雲大社の壮大さにぼっ魂消って、大昔はもっとでかかったんだ、バスでやって来た観光ガイドのあとついて行って、三三七拍子じゃなくって、えーと拍手打ってーあんりゃ忘れちまった、やっぱゼニ払わねーとご利益ねーか。
本殿のきざはしに神主の人形が七つある、と思ったら本物だった、かしずいたまんま何時間を、はーてさ本物かなあ。
万代に伝へまつらむ日の本の大社なる松のまかり路
松の参道だけでど肝を抜かれ。
「ここでならあたしもう一回結婚してもいいわ。」
恵美子ちゃんが云った。
やっじーと結婚して子どもだけこさえて、式省略した、ふーん飲めねえ。
三界の花のあしたをいやひこの浮世わたらひ今しもうでぬ
御神籤引いたら北北東は鬼門と出た、鬼門たって日出岬へ行こう、そこから松江にってのして行ったら迷った、浜から山からたらい回しの末に、気がついたら出雲大社の左裏手。
「きえーやっぱり出雲大社。」
遅れ取り戻そうとて、できたての高速道路に乗った、
「なぬ。」
真正面にどーんと富士山、いったいいつタイムマシーンに乗ったんだって鳥取大山だ、八百万の神さまたしかにこりゃ伯き(老に日)富士。
今生はつひに尽きなんはぐれ雲伯きの富士を目交に見む
雪舟庭園を見ようと思って昼飯時だ、イタリアレストランの看板があって、廻りめぐって本日定休日。
雪舟より腹減ったって見ずじまい。石見銀山もあって、柿本人麻呂のゆかりも、
「なによかきのもとって。」
浜辺にレストランがあった、大阪で修行したんだっていう、薀蓄傾けるだけあって美味しかった。
2010年11月13日 08:14 せっちゃん ショートショート・天橋立
とにかく泊らにゃならん、日は暮れるようもわからん走って行って、温泉津温泉ていうのがあった、
「なんじゃあこりゃ。」
「ゆのうずって読むんだってさ。」
へえそりゃ老舗だあな、なんしろ泊めてくれりゃあって、泊めてくれた。
宿の前に角が生えている像がある。
角のあるのはわたしの心
合掌させるは仏さま
鬼が仏に抱かれて
心柔き角も折れ
火の車の因作っても
みな消されて其の上に
歓喜心にみちみちる
嬉恥し今ここに
蓮の台が待っている
浅原才一妙好人、ここで下駄屋してたってさ。
なーるほどたいへんなこった、ここまでするにはわっはっはご苦労さん。
宿のばっさがふるっていた、北門屋敷の仲居は弓の名人だって、おっかなかったけど、こりゃだいぶ格が上だ。
恋煩ひひいっひっひいとて温泉津の角に生ひたる婆さま椿
喉がおかしくってひいっひひいと笑う、妙好人才一の弟子だな。
鍵かけて入れる風呂あったのに、恵美子ちゃんにパスされた、ふられたあってゆきちゃんに云うと、和尚さまかわいそーにだってさ、きしょーめ。
あくる日発心寺に寄ろうと思ったら、新道がどーんとできて、
「どこで曲がるんだ。」
「もう過ぎたみてえ。」
雪渓大老師せっかく素通りして、天橋立に泊まった、遅くなってレストランで食事、最後の晩餐だってんでもって酔っ払う。
ほととぎす酔ふてもわたれ能無しや今宵満月天橋立
股覗きの展望台に行く、なーるほどこうして見るとすっきり。土田舎団体がわけのわかんねことしゃべくる、礼儀はねーしいったいなんだと思ったら中国人だった、げそ。
今をかも花の盛りにこれあらむつばくろ舞ふか四天王門
帰って来たら花の真っ盛りだった、咲いて散ってまた咲いて。
2010年11月14日 08:22 せっちゃん ショートショート。豪雪
入広瀬を通って田子倉ダムを越えると只見町だ、このダム爆破したらそりゃ柳津まで水浸し、もっともちょっとやそっとじゃぶっこれねえってはーてほんとかな。すてきな阿賀野川取り戻すにはダムいらん。
あれは口内炎激痛をなんとか治して、黒岩と釣りに行った。口内炎は歯医者の薬しか効かない、貼り付けるのは卓効だが一人じゃむり。伊南川という絶好の川があった。フライを振って黒岩は上へ、わしは下をさぐって行ったら、こーんなこまいの一尾見えて、いねーやってんで上を見ると、黒岩がおっさんと話している、なんしただべ行ってみると、釣れねえ川だってのにさ、遊魚券買えって、そこへ顔出したわしも取られ。
「なんで来たんだ。」
「ふんなもんまったく。」
車に入って紅茶飲んだら、日差しでかんかん、くーわ口内炎ぶり返す、けったくそわりい。
ずくなしのくたちに山を深みかも道は会津へ伊南の川風
口内炎はもう飽きたっていうと治る、いい治療法だろほんとだよ。
がーやんが伊南川の辺へ引っ越すという、そりゃどえらいこっちゃ。夏はいいけど冬は地獄、馴れないやつには住めんな、三年我慢してはーてどーだべ。
お寺は豪雪地帯のほんのはしくれだった。毎日時雨降って真っ暗がり、ふうっと晴れたと思ったらどんがらぴっしゃ雷鳴って雪。半年は雪の中。かんじきで踏んで道をつけ、あとは屋根の雪下ろし、三回めには雪上げだ。七年格闘したらどうにか馴れた。スノーダンプになった、速いけどやけくたびれ。
雪の少ない10年甦る思いが、今年は大雪だとさ。
雪下ろしも忘れた。
只見町は天童よしみゆかりのさ、そーは降らんだろうか、どーだなんだろうか心配だ、降らないたって凍みることは天下一品。
がーやんミイラ堀り起こしに行くか、梅干しばっさじゃねえアイスウーマン。
しましくに降り止みぬれば大面村松のしのだへ物音もせで
2010年11月15日 08:14 せっちゃん ショートショート・いい湯
笹川の流れは新潟県一の景勝地で、でもしか教師やってたころ一クラス全員つれて行った、石英砂の鳴き浜だった、百もの花をつけた山百合の行列、もうまったく夢のような風景だった。がき二つできてかあちゃんと尋ねて行った、たしかにここらへんだはーてなあ、人に聞いたら笹川の流れですという、呆然つったった。薄汚れた海岸に車が通る、岩あり松が生い茂ってそーさなどこにもある浜だ。
車が通ればこーゆーこったか、野積みの磯も同じごみだらけ。むかしは潮騒洗う清楚な道をったって、そりゃまはじまらんわな。
笹川の流れと云はむうねり寄せ春粟島の荒れ残りたる
景勝には変わりなく、人の行かぬ春先には、荒波の道をドライブして一時間勝木に着く、じきに山形県だ。釣りは庄内ナンバーの車ばかり、そりゃ山でも庄内ナンバーだな、なぜかってそーゆーこったかな。
勝木にはやっじーとかあちゃんと赤ん坊がいて、まむしとすずめばちと猿が来る。やまびるは朝日村の黒岩ん寺か。たんげんさんとこはどーしよーもない世話人がいる、ありゃさいてーだ。
義経伝説のある鼠ヶ関は温海町で、あつみ温泉万国屋は、フランスであった万国博覧会の因みに名をつけた。田中角栄御用達で越後人にはおなじみ、
花の咲く春は千歳を若返りあつみ川なむ海へさし入れ
花見がてらかーちゃん孝行は、温海温泉までずうーっと花のトンネルだった、そりゃ堪能した。一泊したら満員で追ん出され湯田川温泉に行く、延喜式の大むかしからという、温泉の質は最良、まあさわしはからすの行水だで知らん。
いにしへのもののふどもが足駄がけ花の山路の行方知らずも
藤沢周平の執筆したっていう宿へ泊まった。
海へ行くと由良の浜には、八乙女温泉というできたてがあって、すんでに波の洗う磯っぱた。
空しくは塩の花なむかもめ鳥由良の浜みのきぬぎぬをかも
浜伝い水母の館がある、加茂の水族館といって有名になった。
二人して水母の海に吸ひ込まれ広大宇宙か檻の中なる
はーてさてゼニがありゃいーとこだよ、一度はおいでどっこいしょ。
2010年11月16日 08:11 せっちゃん ショートショート・笑うが如く
鳥海山の五合目までは車で行ける、いつだったか青森へ行く途中あんまりいい月夜だったから上ったら霧、なーに晴れるからって濃霧になって五メートル先も五里霧中、それでも伸して行って秋田側へ行く、ぶーぶー文句云われたいひひ。
晴れたら真昼間早稲の田んぼにまっしろい波打ち際。
鳥海を廻らひ行ける久しきに遊佐の松浦に出羽の風吹く
まつたけ売ってたけどはーてな鳥海石ってのは取れる。ついこないだ熊が出て一人死に一人大怪我したってさ。
鳥海山のあたりににしん御殿の本家がある、一介の漁師から身を起こして巨万の富を築く、大勢こき使っていやたいしたもんだ、わっはっは冬の荒海にぬうと突っ立っている写真がある。
にしん御殿はえーと小樽にあって、
「本間様には及びもないが、せめてなりたや殿さまに。」
の本間様より、立派なの建ててくれって娘にせがまれたそーの。
はーいまったく。
娘には本間さまより豪華なるにしん御殿の秋明菊も
秋田まではけっこう長い、青森も長い、東北はだだっぴろい。
「象潟は笑うが如く、松島は恨むが如く。」
と芭蕉の云う、
象潟や雨に西施が合歓の花
道の駅象潟には、市が立って食い物からなんでも売る、夜は寝る部屋もある。川が一本流れ込んでいて、もぐってあわびとったとさまやんが云っていた、さまやんは毎年鳥海山に登る、やっじーや宮部もつられて行った。こぶし大の石が風で吹っ飛ぶんだという、荒れたらそりゃ物凄い。しょっちゅう荒れるとさ。
奥の細道のあと象潟は隆起して、せっかくの松島も田んぼの中、
「へえ、笑うが如くってこれか。」
そりゃ違うってばさ、わっはっはほんに様にならんわ。
酒田には舞妓がいる、本間屋敷はでーんと構えているし、おしんの山居倉庫もある。土門拳の写真館もなかなか。
すしは名物だけど江戸前じゃないよ。
2010年11月17日 08:16 せっちゃん ショートショート・鱈祭り
角館の武家屋敷は粋な黒塀見越しの松の、いやさ桜の咲くころが見ごろかな。たしかに残ってはいるんだけど、映画のセットならもっと立派で、今の背丈に合わせてゆったり、こじんまり日本人の踏み石伝いわっはっは大女が歩く、わしより10センチは上背あるな、挨拶して食み出すのはこっち。
嫁ぎ行く小さ刀をしずやしずむかしを今につらつら椿
昼飯は村松君がいなにわうどん、わしと美緒ちゃんがひないどり丼とって、1500円高いけどうんまかった、うまくねえって村松君がぼやく。あんちょこかび生えたそーめんの方がうめーや。
じょーえとわしと村松君と美緒ちゃん四人で道南に釣りに行った。秘密の場所があって入れ食いで釣れる。
それがどーにも三0センチを越えない、リリース止めて間引きしてでっかく肥らそうぜって、
「ようし百匹釣って燻製だ。」
てなもんの。
いわなやおしょろこまの燻製はうまい、丸ごとむしゃむしゃ。明美ちゃんが燻製博士だそーで、釣ったのみんな宅急便で送ってと云う。
わしが五0、じょーえがドイツにいたから一0、美緒ちゃんが踏ん張って二、村松君は大学院ロシア文学で見事0。
「なんて小さいの。」
明美ちゃん、
「小さいのが美味しいんだっって。」
それが冷燻にする。こりゃ食えん。温燻ならうまいのに。
秘密の川は禁漁区になった。
しゃもが入ってどこも荒し廻る、一匹もいない川ばっかり。
もう行けねーやな。
秋田では、大鵬のかーちゃんがやっている旅館に泊まったな、どっちともいなかったけどさ。鶴岡では柏戸の弟のすし屋に入った、弟はいなかったけど。たらの白子の付け出しキャーうんまかった。
鶴岡には鱈祭りがある、二月の接心終わったら行こうぜ。
2010年11月18日 07:54 せっちゃん ショートショート・すぎのわかえ
黒岩がなんか買って来るって酒屋に入ったら出てこない、狭い道をトラックが来る、ぱーっと鳴らしたらすっ飛んできて、美人だという、
「もう坊主止めて婿になる。」
「かーちゃんだべ。」
「ちがう娘だ。」
そのかーちゃん、いや娘が、この道は不備だで止めとけってのを行った。谷川で釣ったらさっぱりだ、うわって黒岩が飛んできた、
「どーした美人かーちゃん出たか。」
「くそひりに行ったらくそ引っ込んだ。」
見ろってまあ杉の切り株が六つ、シャンデリアのような花びらになってすぎのわかえが出る。まっしろなきのこだ。
みんなでうはうは取った。
すぎのわかえはとつぜん毒きのこになる、なぜか知らん人は千年も取って食っていたのに。
野生の梨があった、こぶりだけどまったく梨の味。
峠をこえた水系はいわなで有名だった。
もうまったくいなかった。
川内川という夢のように美しい川があった、やまめがいた。
その上流を、会津藩士が入植して不毛の地を切り開く、どんなに貧窮しても子弟の教育は忘れずと。
もののふはここに永らへみちのくの清き川内と笹鳴りすらむ
陸奥湾には自衛隊の艦船が並ぶ、レーダーサイトがある。大きな基地だ、中国だったら立ち入り禁止だな。
このあたりには稲が稔る。
国民の鎮守にあらむ露霜の忘れて思へや陸奥の稲むら
大間からカーフェリーに乗ったらばーさまがいて話す。
薬研には鎌倉武士が移り住んで、美人がいてつい最近まで門外不出だった、会津藩士は土地を貰って移り住んだ、今はいい生活をしている。わしかい、わしの先祖は能登から来た、漁師でさ、帆立やってたけどもう止めた、せがれが県警に入った、次男は函館で先生やっている、孫に会いに行くところさ。
下北は遠くにありと思へれど秋風しのひ野辺地を過ぎぬ
2010年11月19日 08:26 せっちゃん ショートショート・黄金
行けども行けども高速道路の眠くなってふわあ大あくび、すんでにあの世へ行きかけてなにしろ遠野へ着いた。民俗学者の官員さまに取り上げられて、河童が住むという河童橋はお寺の中にあって、なんというんだろむかしの小川にむかしのまんまの橋がかかる。観光地でもってわんさか人がたかる。
でもなんだかよかったな、では河童になるか。
そこら熊が出たって騒いでいた、玄関に入っていたんだってさ。遠野から宮古へ行く。
国道だってえのにすんげー道で、村が一つあったっきりすんでに途切れたりして、
遠野から宮古へ行けるこの道の冬を迎へむいくつ村字
浄土が浜は美しい、ふだらくやの浄土が浜がどっか薄汚れて、
山川のはるけくも来たりふだらくや浄土が浜にかもめ舞ひ行く
きのこがもう出ていた、取ったってしょうがないのに取って。
ビジネスホテルに泊まる、どっかうんめーとこねーかって聞いたら、なんとかっていうすし屋教えた。えらい待たされてた客で満杯、さんまの刺身とほやが絶品。
そりゃもう初さんま一番。
あくる日は北へ向った、峠のあたり標が立って何年の津波はここまで来たと書いてある。
たーまげたあな、日本沈没だ。
鍾乳洞の一つに入った。
岩にごっつん頭ぶっつけて久しぶりにたんこぶ。迫力あるんだけどぶるう寒くなって逃げ出した。
この洞の百メートルの水底には恐竜さへもなほ新しき
山ん中に牧場があった。
奥の正法寺は大心和尚ゆかりの地、行こうとして盛岡市を過ぎってどういうわけか秋田へ抜ける。
宮沢賢治の花巻にも寄らず。
走ってばかりはお話にならん。
田沢湖の辺に泊まる、乳頭温泉の近くだ。
妻子らや黄金の湯に浸らむは秋田駒なむ吹き下ろす風
いいお湯なんだなあこりゃ、秋田駒は登れるほどに見えて、まったくそーは行かん。
2010年11月20日 07:59 せっちゃん ショートショート・歴史
司馬遼太郎の正体見たり白髪鬼、がきのころ白髪鬼っていうこわーい映画見たて夜も眠れなかった、がきがこわーいのは牡丹灯篭のからんころんていう下駄の音でも、ゆーらり影が揺らめいた、そこにだれかがいたってんでもさ。りん物というりっしんべんに在と書く、わっはっは心にあるんだな。
司馬遷はきんたま抜かれて半分は幽霊かな、枯れすすき大丈夫は歴史の創始者になる。司馬遼太郎より文章がいい、漢文のせいか迫力がある。
歴史の文章はそーさな高校の世界史でもどっかおかしい、うそばっかりてめえがかかわっていない、坊主のお経のように嘘とはったりと空威張り。
平家物語の嘘八百もどーしよーもないんだがこれが歴史だ。
目ん玉潰して琵琶法師にして日本中のし歩く。歴史とは日本人の故郷、涙し大笑いする心と行いとなんせもうそれっきりってやつ。
ホメーロスの血湧き肉躍るは死んだ歴史ではない、教科書の空ろではない真実、すべての民族が持っている、心のひだである物語。
正確だの真実というかす食っていると、頭真っ白になるのさ。
鬼として語り継がれ。
ボージョレ飲みたいと思ったら、教え子が持って来た、見附にいるってたのは知ってたが一別以来だな、ろくでもない先公だでわっはっは二、三のほかよっつかねーや。
みんな六十を過ぎた、孫のあるのもいる、わしは孫いねーや。
たんねーけどほんにいー子だったな。停年だ孫できて、こーいう連中にとってって、たいていの人にとって、歴史は必要知識というただ話題か、死んでも生きてもろくすっぽ見返りのない。鬼にもならん。
自分史という、もったいぶってお茶を濁したって、なんにもならねーの知りゃちったあましか。
五W一Hの問題、ナポレオンがワーテルローで信長が桶狭間でって、わっはっははーいはい。
新聞記者しか育たねー。歴史に学んで同じことを繰り返し。大河ドラマという一億総白痴。はくちっていう言葉が出てこねーんだから呆れた。
そんじゃ仏教の歴史はって、なんにもないのは歴史もないのさ。
形あるものは必ず滅す、故にお釈迦さまを拝する。
2010年11月21日 08:33 せっちゃん ショートショート・野次馬
火事だってすっ飛んで行くと、いつも同じ顔がある、
「好きだなあおまえも。」
「放火魔と間違えられるぞ。」
「そうしたらおまえがやったって云うから。」
「だな。」
最近の火事は死人が出る、野次馬もさうっかり煙吸ったらお陀仏。
地震雷火事親父、筆頭の地震にはどえらいめにあった。新潟地震は新潟にいて、がたっと来た、なーにしたんだって見ると、窓の外電柱が一間を行ったり来たり、下を見るとどーっと水が吹き出す、なんとか現象だ、この世の終わりと思ったら、青くなっていたって生徒どもが云った。さよう教師やっていた。教室行ったらもうだれもいない。教師失格だと思っていたら、何十年ぶりかで教え子が来て、そのときパンや飲み物買い集めて渡したんだとさ。だれかの間違いだろ、わしがそんな気の聞いたことするわけがねえ。
幼稚園から小中高の作文や詩集めて、地割れの歌っての作った。文芸部の顧問してたんだな、生徒こき使って名が売れてさ、一冊県立図書館に入っている。売り上げ寄付するんだと云って、生徒と飲んで食ってぱあになった。やくざ教師だな。
中越地震は同じ震度五強が四回もあった、いやもう冗談じゃなかった、震源地だってえのになんでテレビに出ねえって云ったら、震源地の川口は路のアスファルトがそっくり裏返って、一村三軒残して全滅、倒壊した家から出るのに半日かかった、大根がきれいに畑に並んでいる、なんか見事だったってさまったく。
お寺被害の算段もつかぬまに野次馬で飛んで行った。
あんときは弟子どもが出資した。
有難かったな。
川口へ行ったら、家建ったまんま崩壊、川っぱたに青テント張って寝泊りしている、震源地もどこへも行かれず、気がついたら前後パトカーに挟まっていた。国道も崩落している、家ごとすとんと落っこちてたり。
山古志行ったら、どなたさんですか、何御用ですかと云われて、坊主で野次馬ですとは云えず引き返す。
中越沖地震のときは、ぺっちゃんこの家も沢山出て、お寺も一つ倒壊した。
地震男なんかな。
出家するっていったら青天の霹靂、いやさめでたく大学受かって留年だし。
なんと云ふぞ帰り来たりて思ひがて夏の憂き夜を半月かかる
わしが命拾いしたところから中越沖地震はやって来た。
大欠伸の居眠り運転な、どーもこーも。
2010年11月22日 08:17 せっちゃん ショートショート・白鳥鍋
佐渡の尖閣湾に夜釣りに行った、大昔君の名はで有名になったところだ、賽の河原のある林を抜けて岩場がある、だれかれの仕掛けこさえて、ようやくてめえの竿出したらもう逃がしてやがる、大物だ糸がぶっきれ。
夜中蚊にさされっぱなしで、ちぬやぐれやめばるだの釣って明け方帰る、寺泊赤泊間二時間。今は高速船になって車は駄目だ。あいつ燕が十一も巣かけていたな、あっちへ行ったりこっちへ来たりし子育てしてさ。油断するとびちゃっと糞。
三度行って大漁で、四度めに磯焼けして海草が消えた、魚も消えた、でもってそれっきり。また大物が来て逃がしてってのが心残り。
人を案内して地獄の金山にも行き、朱鷺センターにも行き、一周するのにはお寺のある南蒲原郡のほどか。
金山掘りの人形があってとつぜん振り返る、おねーちゃんがぎゃっと云った、わっっはっはよく出来てらーな。片手入る穴が開いて金塊を持ち上げる、持ち上がんないわーきゃーって、なにくそやったら持ち上がった。そりゃ持っちゃ来れねさ。
朱鷺がわしらあたりにも飛んできて、じっさども高級カメラぶらさげて右往左往する。朱鷺ってえのうんまそーだ、みんなであいつ食っちゃったんだと云ったら、なんせ田んぼの邪魔で困ったそーだ。そー云えば人が白鳥が畔つっつきこわしてたいへんだったと云っていた、なりはでかいしそりゃたいへんだ。
「食っちまおうぜ、こしひかりの落ち穂食ってるんだうまいぞ、一羽で十人前の鍋できる。」
「えっへっへ。」
オームでもなけりゃ白鳥は殺さねーとさ。
倭は国のまほろば、たたなずく倭し美はし
日本武尊の魂が白鳥になって飛んで行く。
白い鳥は食わなかったんだ。
朱鷺は白くねーからな。
白鳥は食ってもいいほど増えたけど、いったん絶えた朱鷺を野生に返すのはたいへんだ。
2010年11月23日 08:14 せっちゃん ショートショート・豪雪
名月や北国日和定めなき
雨が降って雲が流れて月がぽっかり、あんまり風情じゃなくって真っ暗けの毎日雨の降り続け、どーにかなっちまいそーなのがふうっと晴れる、地面が乾く、雷どんがらぴっしゃ雪が降って来る。
冬に積乱雲がもっく盛り上がって、降ったらもうそーさ来年の四月までどーんと冬。
発心寺では節分まで寒行托鉢だ、ほーと声張り上げて雪踏みしめて歩く。越後はなんせ雪下ろしだ、雪がこんなに重いとは知らなかった、一メートル以上積もると、うんさー背丈より高いところを掬う、屋根の上に象何頭分だ、なんしろ下ろす。
雪でぺっちゃんこはみっともない、恥だなあ柱も梁もめったくさ。
何百年来雪の家造りをしてこなかった、なぜだ、つい最近だな、らしいふうな工夫は。お寺は二階と中すそと寄せ合って、そりゃもうどえらいめかく。
不細工な滑り台をこさえてわっしょどっさん、思い出したくもねーか、二回下ろして三回めには雪上げだ、屋根より高くなる。
七年ぐらいしたら馴れた、月夜に夜んがら下ろすのも乙なものだった、いううちスノーダンプになった、速いけどやけくたびれ。振り回されて人のほうが落っこち、くたっどーしたと思うと腹へって動かぬ。
地球温暖化で終わったと思ったら、今年は大雪だとさ、道具もなんもどっかへやっちまったぜ。
本堂大屋根は、茅葺のころは大勢して一列に並んで下ろす、そりゃもうたいへんだったって話。
先住が瓦屋根にした。かっこいーんだけど豪雪には保たぬ、家鳴り震動なでついて、瓦五十枚もいっぺんに落ちる、もうこだめだってんで、一悶着二悶着大騒ぎして銅版に葺き替えた。
すっかりよくなったと思ったら、それっきり雪降らねーや。
2010年11月24日 08:11 せっちゃん しょーとしょーと・シャンデリア
洒落た江戸切子のグラスを法事の引き物に貰って大事に使っていたら、一つかき二つかき弟子どもが割っちまう、しまいのわしが割った。大きなグラスがいーんだってソムリエが云ったからでっかいの買ってきて、二日目にてっちゃんが割った。しょーがねえコップで飲んでいて、エミールガレ展示館でまがいもの作っている、いいのあったから買ったら、実は気泡が入っていて半額になってます、これでよかったらっていう、大いにけっこう、買って来てまだ使っている、ペアの片方は完全だ。
会津に世界のガラス館というのがある、野口英世記念館のはす向いだ、安物も売っているんだが高級品コーナーがある、ドイツ切子の花瓶があって、三万八千円、ぐんと高いのも並んでいてこれがいい、たまたまゼニがあった。清水の舞台だ、これ買うたけーんで負けろって云ったら、はいおまけです五万一千円、なぬ38がなんで51なんだ、いえ正札58で、なことねえって正札見せたら、あれー昨日棚替えして間違ったです、だってもわし見て買ったんだごねたら、店員協議していーですじゃ正札通りという。
いい感じのでさ、あんまり素敵で挿す花がねーとかいって、未だもってお蔵入り。
もう一つシャンデリアがあった、雪の降るような感じの、こりゃけた違うし見るだけでって、次に行ったら売れていた。
お倉に電気引いて、雪のようなあのシャンデリアさげて、ホームバー兼漫画喫茶しようと思った、漫画もSFも推理もそーさなあ1000冊もあったか、おねーちゃん二人連れてきて二階がある、そこに蒲団をしいて、そーゆーこと云うから人がよっつかねーんだ、はーいはい。
お倉地震で全壊した、建っていることは建っている、火事には強いがぶあつい土壁の柱が細い、地震には弱い。
中変わらないし、裸電球でつげ義春風喫茶やろーか、おーやろーぜもう一回地震が来るまでさ。
お倉の鉤開けると異次元世界、クレオパトラに小野小町に、信長だのあんましものすげーのは止めて、一休も止めてっと、だれだおまえは生臭いぞ、わしかあ竹やぶの主だった巨大やまかがしよ、そーか紋柄消えてうわばみー
2010年11月25日 07:49 せっちゃん ショートショート・なんじゃもんじゃ
土田舎ホテルがあって駐車場のじっさまで大威張り、命令口調でなんのかの。ワイン頼んだら岩原ワインどんと置く。趣味に合わんで半分残したら、なんで飲まないのってさうっふ。岩原ワインはさんざ苦労の末、ワインとは別物作ったんかな。日本人のシャンソンがフランスとは似て非なる、苦味とウイットが足りないってより欠如している。外交のない国の本場は神様で、のようなものでおしまい。落語にあったな、鍋焼きうどんて声張り上げると、へーいって出て来る酔っ払いがある、わしの名前は久兵衛で、人はきゅーどんて呼んでるんだってのから始まって、一品になんとかのようなものって云ったら、そのよーなものってのくれとさ。和食に合うワインか、ようなものもちったあ定着したか。
プリンスホテル一万なんぼで泊まって、ワイン頼んだら一覧表出た、1300円手ごろだおーいってもう一回見ると103000円だ、さざえさんの漫画じゃねーが二桁間違えるのは珍しい、うんあの生ビールげそ。
小林秀雄が何人かでフランスへ行ったとき、一人じゃ淋しいって越路吹雪がしのんで来て非常に困ったとか、越路吹雪はズカガール、ブルースの女王淡谷のり子とさ、二人日本人離れしている。小林秀雄も白州次郎の親分格かな、頑として馴れ合わぬ第一人者だ。わしは学校さぼって小林秀雄が先生だった、モーツアルトもドストエフスキーも近代絵画も徒然草も西行も小林秀雄に習った、芭蕉と人麻呂は山本健吉に習った。大学先生はろくでもなかったな、やっつけると原語を持ち出すきりの、成績なんかしたらあほになる。日本中しびれちまったのは、漱石以来の学者ごっこのせいだ。世界の大学順位で東大26位っていうのはうなずける。
ジャンギャバンのだみ声でシャンソンかな、向こうももう滅びちまった。
日本にも日本人はいねーか、これから先復活するか滅びるか。
ひでーめ見るぜな。
滅びの歌でもよーなものやるか。
悲しいってこと知っているか。
田の末にかつてはありし茂み井のなんじゃもんじゃの雪降りしきる
2010年11月26日 08:16 せっちゃん ショートショート・k614
弦楽五重奏の最後k614は、モーツアルトを音楽に食い殺された男だと小林秀雄が云った、これは食い殺されたあとの音楽だ、k598は雪の荒野の絶唱だ、行き倒れになる断末魔の、限りなく美しい、k614もまたはてもなく美しい。自然そのもののようでほんのわずかに速い、走り行く悲しみと小林秀雄の云う。40に満たぬ生涯は、音楽に分かれを告げる異様に辛いレクイエムと、もしモーツアルトが10年あるいは何年か生きたらという、すでに完結している人生に蛇足したってつまらぬ。
ハイドンセットで始まったモーツアルトの生涯は、ぼんくらのわしでさえ百万回聞いて新しく、19番の不協和音は人類史上の傑作だ、匹敵するものを10挙げろと云われて困惑する。インカの雨の神に、オリンピックに優勝した桂冠を被る青年に、うわあほらしいやめた。
ハイドンセットはかつてブタペスト弦楽四重奏団のほかには聞けない、19番はだれの演奏でも聞ける、ようも知らんが完璧な作品か、k614もご同様さまだ。ブタペストの弦楽五重奏はなぜかよくない、プロシアセットはウイーンコンチェルトハウスが絶品だ、ほかはまったく聞けない。
モーツアルトという、人とその人生が終わった。もう二度と戻らない。
モーツアルトを聞いていてとつぜん聞こえなくなる、地獄に落ちるんならまだしも、人をたぶらかすための悪魔の発明なら、十二分にひどいめにあった、そうではない原子崩壊する。
目はつぶれ耳ふたぎ。
ケロイドに焼けただれて転がる。
回復はない。
モーツアルトをふたたび、生きるとはこれだけだった。
漆喰に産み付けられたぷより虫の卵、黄緑色してモーツアルトだという。どーにもならんな。
映画赤ひげに音楽が甦る。かすかになにごとか。
一音全世界わがモーツアルトが甦るとき。
不思議なことにk614がなをも聞こえていた。
無心ということ、無心とは心の無いこと、ないものは決して壊れない。この故にモーツアルトは復活し、小林秀雄を救い、ドストエフスキーを救い、ゴッホを救う、大恩教主釈迦牟尼仏に敬礼。
2010年11月27日 07:51 せっちゃん ショートショート・柳かげ
窓枠はモンドリアンの柳影内なる我れと外なる風と
新宿の風月堂はコーヒー一杯50円お菓子も50円、人にたかろうと思って前に座るやつがいる、こっちもねーから知らん顔、ギリシャって渾名つけたウェートレスとローマってつけたのとこの二人が親分だったな、若いのが何人かいて女優とか歌手とかの卵だった。風月堂に出入りしている間は売れないといわれて、非定期に売れない絵の展示会があった。
柳があって大ガラスがあって、売春禁止法は成立したけど、まだ町角に突っ立っていたな。なつかしいたって何がなつかしいんだか。昨日のようにも百万年前のようにも。
樽酒を酌み交はしつつ天に舞へ三日も物は食はずてあらな
文無しになって寝ていたら、枕にする分厚い本がある、そうだこれ売ってと思って古本屋に売ってラーメン食ってやっぱり風月堂。だれかれやっつけたら取り巻きのほかいなくなる。医者のどら息子で浪人生でいいやつだったなあ、毎日角瓶一本空ける、新入りのウエイトレスのおっぱいおしりぶるうぞっこんの、あいつとやっちゃってさあと話す、うっふう憮然。
酔いどれやアルゴー船の櫂を取り手足を鍛えのピカソと云ふぞ
腐れ腐乱死体のひっからび死海の水をモジリアーニは
極彩の時は長らへハーデスの衣を脱ぐはいつかセザンヌ
尻尾が生え墓を暴ひてシャガールのなほなつかしき愛の形を
腐れてはなほはらわたを憎憎し金蝿たかるルオーの大空
声聞は原子崩壊のモネならむ終ひに残んの青と紅
LPの保有量が日本一といわれ、NHKが借りに来たそうの、十年後かな、サロンの役割は終えたといって閉店した、文芸春秋が風月堂の特集を組んだ。
吾妹子は日の神にしてなきがらの炎にあらむ偽ルノアール
対戦の破滅を知るやクレーなほ女性的なるそのボルの雲
ゴッホなる神は示して極彩のキャンバスまでをはりつけにせむ
バイブルはマルドーローの歌であった、なぜそんなんがって今もようわからん。いえたった一年半のことだった。
ニイチェ泥ベートーベンなむとっつけて人は何処へ大和大路を
托鉢姿で立ち寄ったことがある、バーテンダーが覚えていた。
2010年11月29日 09:50 せっちゃん ショートショート・富士山
深大寺で美緒ちゃん善行でどろちゃんを拾って、満艦飾に着替えのプラスアルファを背負って担いで美緒ちゃんは、
「バスで40分ぐらい、こーゆーかっこしてると助けてくれる人いて。」
高速道のバス停で待ち合わせ、一期一会で二度と同じ格好はできないって、センスあるよほんにさ。どろちゃんは親父さんが挨拶に出る、ぐわえらいこっちゃ、スタンガンでばしっとやられる前に、慎重に猫かぶってご挨拶と、さすが商船大学出の紳士どの、はーいなんともあのよろしく。
出来たての首都高は、トンネルジエットコースターのど迫力な、行きは渋滞、帰りは多摩川で渋滞、首都高のほうは走れて強烈体験。
晋山式は前の晩の祝宴、酒飲めないから前晩方式が流行るんだとさ、わしは乾杯の音頭取っただけで、ほんの出番だけの出演、らくちんというより移動時間だけのやけくたびれ。
晋山に首坐法戦式という、首坐が天丼センセーでてっちゃんが書記であと全員弟子で、あっはっは
「花のように知らない人になって下さい、これを云うや万福多幸。」
はーい楽ちん方式、記念撮影したらさっさと引き揚げる。
鵠沼にハワイ料理店てのあって昼飯、ハワイ料理なんて始めてだ、ボキってのはまぐろの角煮で、モクってのは丼で洒落てておいしい、満員の御殿場高原ホテルのでディナーなに食ったんかわからん、まじー。
朝起きたらどーんと富士山、その雪を朝日が桃色染め出す、これは大ご馳走。
坊主組合は二次会だってコンパニオンを呼ぶ、どこでもそーですって東京勤めの穴井が云う、てめえんとこじゃまじーから、本山研修だのあるとコンパニオン抱え込んで温泉行く、相手高校生だったんでとっつかまったのいる、そいつ焼香師で来てたぜ。
坊主地に落ちたどころじゃねーな、腐れ床抜け落ちた、車と女のほかかなーんにもねえおん坊稼業。
どーしよーもねー。
一休に良寛、道元禅師にお釈迦さま、
その他はないのさ。
晋山式終わったら接心だってさ。
うんやっておくれ。
2010年11月30日 08:16 せっちゃん ショートショート・えちご
新潟を出るにはどこをどう行ったって山越えになる、めんどいけどスノーを履くかってやっぱりスノーにした。雪が3センチ積もってもノーマルじゃ死ぬ、清水トンネルに入る前に関所をもうけて、スノーなしはチェーンをつけさせられる、渋滞になる、すんなり通過したはいーが、小出のあたり路肩に雪が積もる、先に行くワゴンが突っ込んだ、ふわーっと嵐が舞い上がる、横向きになって後部座席の男が窓を突きやぶって空を飛ぶ、運転者が血だらけで出てケータイしていた。
どーすべーって救急車くるんだべ、巻き込まれたら2時間はストップだあ、無事通過。死人は出なかった模様。
100キロで雪に突っ込むとどえらいこった、なにしろシートベルトして走った。
行き帰り都心の渋滞にあったが、晴れていて雪はなくと思ったら、トンネル付近霧雨湯沢は土砂降りだった。。
えらい寒い、雷が鳴っている。
湘南のどろちゃんちとは月とすっぽん、わしだって鵠沼育ちなんにさ、あっちが晴れりゃこっちは雨、冬はもうまるっきり雪なあ。
御殿場のようにどっきりじゃねーけど、どこからも富士山が見えたしな。
北国に我れも住まへれ初時雨見裂ける月に追はれてぞ来し
雨降りながらの夕焼け、戦に負けて流れついた貴人かさむらいか、上杉は移封されて貧乏引越しするし、河合継之助は戊申の役で八十里越え、まあさいろいろあらーな越後の国だ、わしは信濃川の河童川流れじゃなくって、くう何の因果だ。
北国に我れも住まへれ初時雨軒の小草に夕かぎろへる
冬にもっこり積乱雲どんがらぴっしゃ雷、雪起こしって云うんだな。時雨が晴れて地が乾くと、毎日降り続けってのはーてさ何メートル。
暮れから正月にかけて降って、重たい雪の竹葉全滅折れひしぐ。樫の大枝がぼっきり折れた。春先が大騒ぎ。
次はこっちの晋山式だ、早く隠居して、待てよいまでも疎外されてっから、隠居じゃねえ湘南ホームレスか。
ふーっ不況であんましよくねーとさ。